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日本茶インストラクターをご存知ですか?  〜受験体験記〜


「それって、ちょっと勉強して、簡単に受かってなれるやつでしょ?」

……………

私は悲しかったのであります

日本茶インストラクターの試験は、しっかり勉強しなければ、受からないからです

私はこの試験に数年前(コロナ禍直前)に合格しましたが、それは数少ない成功体験の1つとなっています

簡単ではないとわかってもらえたら嬉しいです

それに、皆様にもっとお茶を飲んでもらいたいです

そんな願いをこめまして、どんな試験かも含めて体験記を書くことにしました

日本茶インストラクター認定試験 受験体験記🍵


静岡の煎茶


1、日本茶インストラクター認定試験とは


日本茶インストラクター認定試験は、日本茶に関する専門的な知識や技術を持ち、中級レベルの知識と技能を有する「日本茶インストラクター」を認定する試験です。

NPO法人 日本茶インストラクター協会 HPより

2、合格率35%の試験の背景


(1)試験を受けるまでの費用


まず試験を受けるには日本茶インストラクター通信講座(毎年4月開講)に入ることになる。これは推奨とはいえ、試験対策の講座であるため、受講することが唯一の方法だった。
講座の受講料は71,280円(現在は79,750円)、試験の受験料は21,600円(現在は22,000円)。
受験までにこれだけの費用が発生した。 

(2)合格が仕事に影響する人が多い


合格者の中には、「会社から受けるよう指示された」「合格したら昇進しやすくなる」「資格をとってお教室を開く予定」と、日本茶業界で働いている方など仕事がらみの方が多くみられた。

(3)チャンスは年1回


毎年11月に1次試験(筆記試験)、合格すれば翌年の2月に2次試験(実技試験)、落ちてしまうと来年まで待たねばならず、コストもさらにかかり、モチベーションを維持するのは大変。

(4)まとめ 


受験者は、それぞれの背景を持って、それなりの出費をかけて挑む。つまり本気で勉強し受験すると考えられる。その上での35%という低い合格率となっている。

3、なぜ簡単ではないか


(1)出題範囲が広い


出題範囲は、茶の歴史、栽培、製造法、化学、健康科学、淹れ方、品質審査と鑑定、インストラクション技術、茶業概要、茶の利用と広範囲に渡っている。
試験の合格点は合計70点以上、加えて各分野でもある程度の点数を取ることも必要、という採点基準となっていた。
よって苦手な科目でも諦めることはできない。

(2)落とすための試験?


これは試験が終わった時に心の声がつぶやいた言葉だ。試験は5つ文があって、間違い、もしくは正しいもの選ぶという方式(文章内から正誤を選ぶものもあったかもしれない)。全てもっともらしく読めたり、全て間違いのようにも読めたり、微妙に悩ませる問題が多く見られた。悩んで時間を取られると、試験終了に間に合わないため、確実に覚える必要と、なるべく細かい点も把握しなければならないと感じた。

(3)過去問、問題集が存在しない


これは試験を受けて初めて知ったが、問題用紙は全て回収される。よって世の中に過去問は存在せず、問題集も存在しなかった(現在も同様と思われる)。近いものでは講座で提出するリポート内の問題と10月頃に届く練習問題集のみ。
覚える方法として、アウトプット(問題を解く)を重視している私としては、もっとも大きな問題だった。世の中にはインプット(テキスト読む)だけで覚えられる方もいるようなので、そういう人にはあまり問題ではないかもしれない。

(4)結論


 (だいぶ私見が入ったが)覚える範囲が広く多いため、勉強方法を早めに計画して進めるべき試験だからだ。

4、私は少し有利だった


私は日本茶に関わる仕事はしていなかったが、中国茶の勉強を既にしていた。もちろん、日本茶とは違う部分が多く、範囲も広いので、最初から勉強する必要があったことには変わりなかったが、重なる部分もあるため、理解が早かった点があったと思う。
また、受験経験者から、細かいところまで出題されると聞いていたので、最初から覚える気満々で計画を立てていた。
それらの点は、勉強を進める上で、プラスに働いたと感じる。


和紅茶のファーストフラッシュ

5、講座について


(1)教材


テキストが3冊、それぞれのリポート3冊、小冊子「学習のポイント」3冊、DVD、茶の科学用語辞典、茶関係資料、鑑定器具、鑑定茶

(2)内容


テキスト3冊は順次送付され、学習後、リポート作成・提出すると添削指導され返却される。6ヶ月以内に全てのリポートを提出し合格点に達していれば「修了」となり、翌年には日本茶アドバイザー資格が取得出来る。
さらにそれを4ヶ月以内で、より高い合格点に達すれば「優秀修了」となる。

6、筆記試験(一次試験)に向けて


(1)講座の優秀修了を目指してスケジュール管理


早めに全体像を掴み、試験勉強の時間をとるために、優秀修了を目指して進めた。
テキストを通しで読み、1冊終わるごとにすぐにリポート作成・提出。2冊目のテキストを通しで読んでいる頃に添削が戻ってきたが、テキスト通し読みの1周目とリポート作成を最優先で進めた。
4ヶ月で終えたことで、8、9月から試験勉強に集中できた。

(2)テキスト以外の資料も重要


小冊子「学習のポイント」はテキストを理解するためのポイント集であるから、ここに書かれていることと、リポート内の問題及び添削コメントの内容を中心として覚えていった。
DVDは茶の栽培、製造など馴染みのない分野を理解するのに役立った。

(3)テキスト通し読み2周目でやったこと


前述の通り、アウトプットのための問題集がないことが、大きな問題だった。そこで、「問題集ないなら自分で作る!」と考えた。
テキスト2周目では、問題集を作るために読み、作りながら(手書きで)進めるという方法をとった。問題と言っても短く簡単なもの。何が問題となりうるかを考えながら読み、手で書くことで、より理解も深まり記憶にも刻まれ、後でアウトプットするためのツールを作ることを同時に行ったのだ。必要な内容が一つに集約された問題集ができた。途方もない作業になるかと思ったが、できてしまった。サクサク進めるのがコツだった。
「学習のポイント」やリポートとも照らし合わせながら行ったから、リポート添削が戻ってきたタイミングで始めた。

(4)用意したもの 


自作問題集作成に必要な文房具は3つ

・モレスキン ノート カイエ ジャーナル 横罫https://moleskinecustom.jp/item/cahier_pocket.html
 → 9cm x 14cmとスマホサイズで薄いので持ち歩きやすい。服によってはポケットにも入る。電車を待つ時間など、立っていても勉強が出来る。最終的に4冊ぐらいにまとまった。

・ポストイット 透明スリム見出し
 → 上記ノートの行幅に合った付箋

・フリクションの消せるボールペン
 → 書き直しができるから



自作問題集
汚い字で失礼します🙇🏽‍♀️

(5)ノートの使い方


ノートの各ページを半分におり、縦線を作る。左側に問題、右側に答えを書く。テキストのどの辺りかも分かるようにしておく。後で修正したり、追加できるように、項目ごとに余白を作る。
手で右側を隠して問題を解く。間違えたら付箋を貼る。一通り終わったら、付箋の貼ってある問題だけ解く。繰り返す。付箋がなくなってきたら、最初から全問題を解く。理解しきれてないところはテキストを読み直す。その繰り返し。
1、2分の隙間時間でも出来る。付箋は分野ごとに色を変えると、ノートを開かなくてもどの科目のノートかが分かるので便利だった。

(6)練習問題集


10月頃に送られてきた。模擬試験のつもりで挑戦できる形式だった。試験と同じ時間(全部で100問、時間は2時間30分(75分を2回))で解いたので、時間的感覚を掴むことができた。
但し、実際の試験問題とは出題形式が違った。試験会場で問題用紙を見て初めてそれを知ったので、多少驚いた。

(7)まとめ


前述の通り、試験会場で問題用紙は回収されるので、後で答え合わせをする事はできなかった。
後に合格者と話したところ「学習のポイント」とリポートと練習問題集だけで勉強した、という方がおられた。それらを完璧に覚えたら受かったのかもしれないが、問題文にはそれ以外の部分も出ていたので、自分は広く覚えておいて良かった。
テキスト通し読み3周目もしたかったが時間的に間に合わず、弱点箇所のみ何度も読み直すという方法になったが、結果的にそれで良かったと思っている。


ほうじ茶
二次試験のインストラクションはほうじ茶でした

7、実技試験(二次試験)に向けて


(1)鑑定試験とインストラクション


鑑定試験は荒茶茶期、荒茶品質(内質)、仕上茶外観品質、茶種判定の4種類。
淹れ方のインストラクションはその場で課題茶を(上級煎茶、中級煎茶、玉露、ほうじ茶の中から)指定されて行い、質疑応答もある。(昨年度からインストラクションは無しとなり、鑑定試験と口述試験のみとなった模様)
合格率は80~90%と言われていた。

(2)合格通知を見るまで何もしなかった


一次試験には落ちたと思っていたので、何もしていなかった。合格通知を見た時は、驚きと喜びが半々ぐらいだった。二次試験の準備は一次試験が合格してからで十分間に合った。

(3)まず自力でやってみた


鑑定については、講座の教材で届いた鑑定器具、鑑定茶で指定通りにやってみた。感覚が掴みにくい部分をある程度把握。
インストラクションは各茶についてシナリオを作成して、実演の練習。

(4)事前勉強会の参加なくして合格はなかった


1月に日本茶インストラクター協会により二次試験対策の勉強会(有料)が開催された。鑑定についてはプロによる指導が受けられ、とても有意義なものだった。インストラクションは先輩による実演を見たり、ポイントについての解説を受けた。質疑応答の内容は、一次試験に合格した人であれば答えられる範囲と説明を受けた。
この勉強会への参加は必須だったと思う。

(5)まとめ


勉強会の後も鑑定の練習をしたかったので、練習用の茶葉を早めに追加注文しておいてよかった。
二次試験の合格率は高いが、問題数が少ないので、間違い数の僅かの差で合否が分かれてしまう。特に鑑定は正誤が明確なので、最後まで気を抜くことは出来なかった。
インストラクションは個室に分かれ、面接官2名の前で行う。ここでは頭を切り替え、「これは仕事」と思い、芝居をするような感覚で行ったので、緊張せずシナリオ通りに実演出来た。質疑応答の内容は覚えていない。
鑑定試験については翌日に回答が発表されるので、合否の目安はなんとなくわかった。

8、最後に


この試験はいかに一次試験に合格するかにかかっている。つまり、しっかり覚えることが重要と言える。
一方で、講座のテキストは、内容が広範囲で情報量も多いが、読み物としても面白かった。読んでいて「日本茶すごい」、特に歴史については「日本人偉い」と感心する部分もあった。今読み返しても楽しめるものだ。
よって、お茶に本当に興味がある人にとっては、難しい試験とはならないだろうと思っている。

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以上になります

ここまで目を通してくださって、本当にありがとうございます

もしこの体験記が、日本茶への興味につながったり、これから試験を受けようと思っている方のお役に立てることがあれば、嬉しく思います



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