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【良い小説良い哲学】~「良い小説」と「いい話」を峻別しよう党

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いい話が世の中溢れています。それはとても良いことだと思います。でもいい話と良い小説は違うのです。いい話は勧善懲悪の水戸黄門です。小説とは美を表現するもの。きれいな小説でもない。じ…
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#ショートショート

【ホラー短編】妻の呼び声

僕の妻はとても愛らしい習慣を持っていた。 夜、寝る時には必ず 「寝ますよあなた。こちらへ…

銀河はラズベリーの香りがする。

銀河売りがこんなに流行する前。 宇宙飛行士として地球をみてきた ひとりの学者と栞はつきあっ…

救われましたなどと2度と言わない。

街クジラがこの街にやってきたのは 栞が生まれる前だったらしい。 街クジラはひとりぼっちで…

【ホラー短編】テレポーター

A男には愛する恋人がいた。 美人で謎めいた雰囲気を持ちながら、気は優しく申し分ない女性だ…

夏も涙もそっとおやすみ。

海砂糖を栞はからだの中に飼っている。 いつ頃からなのかわからないけれど。 あれはあの時か…

猫に負けてしまう雨の夜。

恋は猫。 猫は恋。 好きな人が暮らしてほしくないワーストワンは 猫だ。 母親や妹はぜんぜ…

【ショートショート】手紙を届ける本棚

 1人暮らしの新生活を始めてから1ヶ月が過ぎたこの頃、不思議なことが起こった。  SNSに本の感想を投稿しようと思いつつ、急ぎの別件を先に済ますために、メモ書きの感想を本に挟み本棚に戻しておいたところ、翌日メモを見返した際に、私が書いたメモの下部に見覚えのない文字が並んでいたのだ。  明らかに私とは筆跡が違う。  とは言え、1人暮らしである私以外に誰がこれを書いたというのだろう。  室内は全て鍵がかかっていて荒らされた形跡もない。  合鍵を持つ不動産会社が私に無断で入室した

フェアじゃないねと、つぶやきながら。

咳をしても金魚。 あの人が残した短い詩のような 言葉が今も栞の耳の中に棲んでいる。 トオ…

永遠のにぶんのいち、あげる。

栞はその時、読んでいた本の言葉を 思い出していた。 「ひとが、存在していることの根っこに…

哀しい氷がとけてゆくように。

凍った星をグラスに浮かべた。 すっごく不安定な形の細すぎる脚を 持った建築物が入り江に建…

透明な手紙の香りがした。

透明な手紙の香り。 そんなタイトルを君は8月のカレンダーの いちばん最後に書き込んでいた…

安心するのは、百万年早かった。

愛していた黒猫ノワールが死んでから 喪服をきて過ごしていた栞は、 黒いものにまみれてしま…

【ショートショート】ロボット警備員と泥棒

深夜。 ある会社のビルに一人の泥棒が隠れていた。 男は裏社会で犯罪を重ねたプロの泥棒であ…

【ショートショート】素敵な移住先

B子はスーパーのパート店員である。 元来の口下手と人見知りから、30歳を過ぎたが独身で、恋人や友人もいない。 仕事は惰性で長年続けており、慣れてはいるが好きではない。 大人しいB子を見ては、絡んでくる客が結構いるのだ。 「ポイントカードが読み取れない!」 「セルフレジの機械がおかしい!」 「早くしろ!」 と罵声を浴びせてくる。 そのほとんどは、客が機械操作に不慣れだからだったりする。 大抵は客自身の問題なのだが、老齢男性から、中年男、老齢女性までB子によく怒鳴りつけ