この壁は何かな?
これ、なに用の壁でしょうか?
公園のそばにあるんだけど。
9枚ある。
上はちょっとおしゃれに波打ってる。
2メートルくらいの高さ。
色はただのコンクリ色で、雨のせいか、上部3割はいつも黒い。
数枚の壁には張り紙がしてあって、
なにか重要な使い方が書いてあるのかと近づくと、
「自転車は駐輪場に」的なことが書いてある。
ボールを当てないでください、とも書いていない。
でも、びっしりとボルトのようなものがはまっているので、
ボールはまっすぐ帰ってこないだろう。
また、前はすぐに歩道、車道なのでボールを投げる距離がない。
後ろは坂になっているのでこれまた、的あてに不向きである。
小さな子が登れる高さではないし、この辺の子供たちは忙しいようで、
この壁を使って悪さや、遊びをしているところを見たことがない。
子供たちは塾に行くか、ユニフォームを着てグランドに行くかどちらかだ。
というか、この壁を気にしている人を見たことがない。
旦那に聞いてみると、「そんな壁あったっけ?」と言われた。
隠れてコソコソ何かをするには、裏にまわれば丸見えだし、
1から9まで番号が振られているわけでもないので、
待ち合わせにも向かない。
掲示板として活用しよう、という意思も感じられないし、
じゃあ、撤去してください!
って、苦情を言うほどの迷惑は、なんにもかけられてない。
私はいつも、この壁の前を通ると、無性に反省したくなります。
壁に鼻先が付くくらいの近さで、真ん前にまっすぐ立って、
目を閉じてみたらどんな感じだろう?
コンクリートの冷たさが、顔に感じられるかもしれない。
そのうち、車の音や、グラウンドの人の声は消えて、シーンとしてくる。
自分と、壁だけが存在する世界で、
私は深く心の中に潜ることができるだろう。
この壁を建てた人は、どんなことを思ってデザインしたのかな?
目立たず、風景になじむように、と発注されたなら、見事に溶け込んでいる
威圧感なく、こじんまりと、と発注されたなら、見事なさりげなさである
シンプルに、素朴な感じで、と発注されたなら、ホッとする温かみもある
見れば見るほど、安心する、不思議な壁なのだ。
この壁がなんなのか、知っている方、ぜひ教えてください。