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『君と宇宙を歩くために』(泥ノ田犬彦)



<<<<<<<<<この記事はネタバレを含みます>>>>>>>>>>




『君と宇宙を歩くために』という漫画がすごくすごく良い。「当たり前」が苦手な二人がそれぞれ工夫しながら生きていこうとする話。


簡単にあらすじを。
小林大和のクラスに転校生・宇野啓介がやってきた。
宇野には日常生活を送る上で苦手なことが多い。その性質ゆえに学校生活では上手くいかないことも多く、周囲に笑われたり馬鹿にされた経験を持つ。そこで自分が少しでも安心して生活を送れるようマニュアルをつくり持ち歩いている。
このマニュアルをきっかけに宇野と小林は交流を深めていく。小林もまた、世間のいう「当たり前」が出来ず苦しんでいたのだった。



宇野の書いたマニュアルを見て一瞬息が止まった。

「これ自分だ…」


わたしも仕事上で苦手なことが沢山ある。複数のことを同時に行ったり、突発的なトラブルに対処することなど。ルーティンワークでも焦っている状態だとやることをど忘れしてしまったりする。この前できていたことができなかったりして、自分でも驚く。上手くいかないと恥ずかしいし悔しい。真っ先に「何回同じことやっているんだろう」と考える。何回も聞いてしまうことで先輩にどう思われるか怖い。落ち込みすぎて「しにたい」と呟くときもある。

仕事を始めたての頃、ダメダメすぎて自作のマニュアルを作った。焦ったときに落ち着けるように。宇野が言うところの「テザー」(宇宙飛行士が付ける命綱)を。そして仕事中何度も確認するようにした。このマニュアルと場数のおかげで、数か月経ったいま上手くやれるようになってきたような気もする。それでも、苦手なことはやっぱり苦手なままだ。
これだけ改善しようとしているのに苦手なんだからなあと思っていい具合に諦めがつく。出来なくても「しょうがない」と思えるようになって今まで追い詰めてきた分楽になった。
マニュアルを活用しても失敗することもあるけど、上手くいったときすごく嬉しい。自分にも出来るんだって思うし、自分が一生懸命作ったマニュアルが役に立ったこということは今までの悔しさや恥ずかしさが報われたってことと同じだから。経験は無駄じゃないんだなって救われた気持ちになる。

宇野に触発され自分と向き合い始めた小林。彼の言葉が自分の心に染みて、深い所にストンと落ちた。

俺 出来ないこと多いんだなーって認めるのはハズかったけど
でも それがわかって向き合ってる今のほうが…なんかさ たのしーんだ

泥ノ田犬彦『君と宇宙を歩くために』

そうそう、そうなんだよ。最初辛いんだけど、楽しいんだよね。工夫っていうのは。

これは創作物な訳だけど、同じような人いるんだなと思えて勇気が出た
現実にもいるのかなあ。私の周りにはいないから、どうなんだろう。
帯に「60万人が共感し、涙した」って書いてあったから本当にいるんだろう。

わたしも、宇野と小林と、その60万人と、もしかしたらもっと沢山の人と
宇宙を歩いてるんだな、一緒に。


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