頼まれもしないのに、必死でやっていること。記録を残すこと。【美術館再開日記26】
頼まれてもいないし期待されてもいないのに、必死でやってしまう。それをやっておかないと何かが致命的に欠落する、と直観したときはほぼそうだ。でも見方によっては、たいていの「お仕事」にそんな「致命的」なことはなかったともいえる。少なくともお金の使い方で大失敗したことはない。
私の「致命的!」センサーが働くのは、忘却、という事態に対してのことが多い。忘れ去られている大切なことを、見つけてしまったと思う場合。
忘れ去られてはいけないことが、いま起こっていると思う場合。
前者の「忘却」について。例えば展覧会。
現代美術の場合はどうかわからないが、少なくとも半世紀以上前の作品や作家を扱う展覧会のためにコツコツと調査をしていると、時代やジャンルにつきまとうバイアスで見えなくなってしまっていた(結果、無視ないし隠蔽されているようにも見える)ことに突き当たるときがある。
例えばそれが、アーティストの新たな側面を照らし出す可能性があるテーマだと思えば、それを今後さらに探索するための「礎」をつくっておきたいと猛烈に思う。「礎」とは、「カタログ巻末の文献リスト」であったりする。一般の人は決して見ない部分だろう。しかしクリエイティヴな、それ自体が新しいストーリーを語る文献リストというものがある。それを誰かが使えば、確実に新しい未来が開けるような。去年企画・担当した写真展のカタログで、最も時間をかけたのがそこ。精鋭の校閲者と二人三脚で、今までにない文献リストを創った。(でもまずは作品を見ていただければ笑)
話を戻して、後者の「忘却」、目の前で起こっていることについて。例えば「作品のない展示室」。
忘れ去られてはいけないことが起こっているのなら、自力で(も)記録しなければならない。そして知らせなければならない。どんなにたくさんの外部メディアの取材を受けていたとしてもだ。クロージング・プロジェクト「明日の美術館をひらくために」ともども、当事者が記録を残さなければならない。なぜだろう。そこからしか自力で未来を開けない。たぶん、そう思っているからである。
美術館再開79&80日目、9/2&3、また猛暑。公式インスタで50日間、記録/記憶をアップし続けることに。
都内コロナ両日とも200人前後。ずっとだな。
パフォーマンス「明日の美術館をひらくために」から1週間。
写真による回想、Instagramで展開中。
フォロワーも地味に増えている不思議。
撮ってくれた堀哲平さんとこの1週間、
何度もやりとりして50日分を選んだ。
その1週間のあいだにも
陽は少しずつ短くなり、
晩夏は初秋に向かっている。
なのにInstagramのフィードには
ずっと夏の終わりの光が射し続けて、
その光はどんどん遠くなるのに
毎日毎日、現在の時間に介入を続ける。
50日、写真約100点、
じわじわアップしていきます。
アーティストたちの言葉も。
さて今日は
間抜けすぎる事務手続き上の
ミスが発覚して衝撃の午後に。
名付けて「1円事件」。
各方面に「すいません1円余計に
税金引いちゃうところでした」
とお詫び&再手続きの連絡連絡連絡。
これから連絡する方もいます、
間抜けすぎてすいません。。
美術館再開81〜83日目、9/4-6、暑い。インスタもいいけど、やっぱり手に取れる冊子が要る。
都内コロナ情報はスルー、
たぶんいつもとそう変わらず。
この半年の疲れが出て、まる2日寝込む。
大きい仕事の節目と季節の変わり目が
重なるとやってくるやつ。
次に行く前の儀式みたいなもんである。
さて、
Facebookで毎日たくさん書いたせいか
「作品のない展示室」は塚田の企画、
と思っている方もいるようなのだが、
そうではない。
じゃあ誰の企画なんだと言われたら、
「セタビの」としか言いようがない。
だから、ほぼすべての取材は副館長が受けた。
(副館長はこの企画の主担当者でもあった。)
というわけであれは別に
「自分のもの」じゃないのだが、
「自分のこと」として
ものすごく切実に考え行動してしまった
というのは本当である。
「特集」展示も、クロージングもそうだ。
土壇場で、200点近いポスターのスライドショーもつくった。
どれも頼まれもしないのにやった。
どうしてもやらねばと思った。
クロージング・プロジェクトの
「明日の美術館をひらくために」は
Instagramで記録/記憶を展開している。
それは事実上「作品のない展示室」の
記録/記憶の場にもなるようにしてある。
これも頼まれていないが勝手に。
そして今、さらにもうひとつ、
「頼まれもしないのに」な仕事に手をつけている。
インスタでの記録公開、それはそれでいい。
でも手にとれないんだよね。
それじゃダメなんだ。
どんなにささやかでも冊子を残さなきゃ。
というわけで動いております。
裏紙使って手づくりダミーつくって。
もしサポートいただける場合は、私が個人的に支援したい若手アーティストのためにすべて使わせていただきます。