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現場レポート:研修前に「現場を見る」ことは、研修効果を高めることにつながるかもしれない

研修やワークショップなどでクライアント企業を訪問する際は、時間があればなるべく、見学OKなところを見させてもらうようにしています。特に出張を伴うようなケースは、普段目にすることのない現場を見てクライアントを知る貴重な機会です。

前回のnote「トップが何を語るかで1on1の社員の本気度が変わる!」で話題にしたこの1on1研修の際は、前日入りをして「現場」を見学しました。それが、思わぬ効果を生んだので、

  • 現場を「見る」行為そのものが、ラポール(信頼関係)形成につながるよ

  • 「見て気づいた現場の生情報」を研修で話すと、参加者との間の「境界線」がうすくなるよ

  • 「見て気づいた現場の生情報」を研修とひもづいて語れると、研修効果が高まるかもよ

という話をします。


「現場を見たい」と思う気持ちがまず大事

「現場」とは、工場、営業所や店舗、倉庫、スタッフ部門のオフィス(社員食堂なども含む)など、人々が集まり働いている「場所」のことをここでは指します。

現場の見学なんて、人材開発・組織開発コンサルタントもしくは研修講師の立場でできるの?と思うかもしれませんが、こちらから「ぜひ見たいです」と言うと意外とみなさん喜んで調整して案内してくれます。最近では、出張のたびに「現場見ますか?」と声をかけてもらえるようにもなりました!

もしかすると、その「見たい」というその気持ちだけで、「自分たちに興味をもってくれている」「自分たちの職場を受け入れようとしている」と感じてもらえるのかもしれません。普段、「先生」と呼ばれて、現場とは一線を引かれてしまう立場なので、そんなところからもラポール(信頼関係)構築につながっていたらいいなと思っています。

現場で働く方の挨拶がめちゃくちゃすばらしかった

さて、先日は、研修の前日にクライアントの、とあるエリアの「作業現場」を見学しました。現場の若手責任者に案内してもらいながら、「へーへー、ほーほー」と、作業場をきょろきょろ見回し、「あれはなんですか?」「これはなんですか?」と聞いていました。

初めて知ること、見るものがたくさんあり「世の中、知らないことだらけだな!」と思いました。このように思う体験は、いつのまにか「先生」と呼ばれることに慣れ、つい偉そうにふるまってしまうかもしれない自分を離れ、現場で働く人へのリスペクトの気持ちが自然と持てるようになる効果もありそうです。

そのうちにあることに気がつきました。
現場で作業をしている人たちが、どんな作業をしていようとも、私たちが近寄るとこちらを向いて手をとめ、帽子を脱いで、笑顔で「いらっしゃいませ!」と爽やかに挨拶をしてくださるのです。若い人も、ベテランさんもです。男性も、女性もです。その姿勢が自然体で、やらされている感ゼロ!とても好感が持てて、私の中で、クライアントの会社としての信頼度が上がるのを感じました。

こんな風に挨拶が徹底できるなんて、どのような教育をしているんだろう?その過程でどんなことがあっただろう・・・?

翌日、朝から研修がありました。先日のブログにも書いたように、冒頭、部門トップのA氏よりすばらしいお話があり、心地よい緊張感で始まりました。
「みなさん、今日は参加してくれてありがとう。今、現場は大変だよな!うんうん、そんな中だけど、今日は一緒にがんばろう!」
いい感じのスタートです!

次に1on1の必要性の話になりました。
「私が異動になって数年ぶりにこの現場に戻ってきたら、前より活発なコミュニケーションがなくなって、なんか暗い雰囲気になっている。」
A氏の語気を強めたその発言を聞いた時に、前日の、爽やかに挨拶する現場のみなさんの姿が浮かんできました。

暗い雰囲気かあ・・・でも、挨拶はちゃんと、明るくできてたよね?

伝えたいことが降りてきた!

A氏の話のあと、講師である私が紹介されて前に立ちました。A氏の話を真剣にきいていたまなざしが一斉にこちらに向きました。簡単に自己紹介をしたあと、昨日見た現場の光景について一言話そうと思いました。

「昨日、こちらの現場を見学させていただきました。私は、こういう現場を見るのが大好きです。見学して、世の中知らないことだらけだな!と思いました。感じたことはたくさんありますが、特に、みなさんの挨拶のすばらしさに感銘を受けました。どの方も、作業の手をとめ、帽子を脱いで、『いらっしゃいませ!』と明るく爽やかに挨拶してくださり、こちらも明るい気持ちになりました。

ここで話を終えるつもりだったのですが、口をついて出てくるものがありましたので、思いつくまま話すことにしました!


あれだけきちんと挨拶ができるようになるまでには、現場で教育をされた方は、さぞ大変だったのではないか、と想像しています。ご苦労もあったかもしれませんが、来客者はみなきっと良い気持ちになり、御社への信頼度を高めているはずです。

さきほど、Aさんより、「明るい職場にしよう、そのために1on1をしっかり学んで、楽しんでやっていこう!」というお話がありました。今日は1on1について、みなさんが楽しく学べるように私も一生懸命考えてきましたので、楽しんでもらえたらいいなと思っています。

でも、現場で実際にやってみると大変なこともあるかもしれません。
こんなことになんの意味があるのか?と思うかもしれません。
最初はやらされ感もあるかもしれません。

それでも、継続して習慣になってしまえば、挨拶のように、お互いに気持ちのよい職場になるかもしれません。少々時間はかかるかもしれませんが、やってみる価値はあると思います。一緒にがんばりましょう。


話しながら降りてくるものをたぐり寄せていったら1on1につながりました!

「1on1で同じことをやっていきたい!」

正直、私の話を受講者のみなさんがどう受け取ったかはわかりません。ただ、みなさんがこちらを見るまなざしから、ちょっとだけ、私との間にある「境界線」が薄くなったように感じました。

研修は、その後、私の中で過去イチかと思うくらい、活発に進みました。

研修が終わった時、一人の若手マネジャーが私に話しかけてきました。昨日、現場を案内してくれた方でした。昨日よりさっぱりとした表情をしていました。

「現場での挨拶のこと、褒めていただいてありがとうございました。めちゃくちゃ嬉しかったです。みんなにしつこく言い続けて、本当によかったです!あと、自分がこうやってやってきたことを見てもらえて、褒めてもらえて、すっごく嬉しかったので、メンバーにも1on1を通じてこういうことをやっていこうと思います。ありがとうございました!」

一人でもそう思ってもらえたならこの話をした意味があった、と心の底から思いました。

人材開発・組織開発に関わるものが「現場を見る」ことの意味


この経験から、私は、現場を自分の目でみて感じた「現場の生の情報」と「研修の目的」をつなげたストーリーを語ることができると、現場の人の行動変容につながる=研修効果は高まるということもあるんだな、と思いました。

今回のように、現場で見たことををうまく研修の目的につなげて語れるケースは少ないかも知れません。それでも私は、知らないものを謙虚に知るために、クライアントを理解するために、現場を見て感じたことから何か自分にできるこを考えるために、これからも現場をみる機会を意図的につくっていこうと強く思いました。

私たちは普段、「現場」を目にする機会がほとんどありません。
一方で、「現場はこうだ」と人材開発部門やトップの立場の人から伝え聞いたり、
組織サーベイの結果など、数値(定量データ)で見たりすることが圧倒的に多いわけです。

もちろんそれも大切で貴重な「データ」ですが、「自分の目で直接見る」「感じる」ことも大いに大切にしたいものです。

私の師匠、立教大学教授の中原淳氏も、著書「人材開発・組織開発コンサルティング」の中でこう述べています。

「考える前に、現場に行け!」ということです。
これは精神論として主張しているわけではありません。「現場のニーズに根ざしていない人材開発・組織開発ほど空しいものはない」ですし、それ以上に経営にインパクトを与えることはできません。

中原淳「人材開発・組織開発コンサルティング」ダイヤモンド社

えっと・・・経営にインパクトまで・・・与えてるかな?いや、その気持ちで、がんばろう!

今日は

  • 現場を「見る」行為そのものが、ラポール(信頼関係)形成につながるよ

  • 「見て気づいた現場の生情報」を研修で話すと、参加者との間の「境界線」がうすくなるよ

  • 「見て気づいた現場の生情報」を研修とひもづいて語れると、研修効果が高まるかもよ

ということを書きました。現場からのレポートでした!

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