見出し画像

ちょっといい暮らし ちょうどいい暮らし Simple life in Italia

 イタリア暮らしをはじめて20年以上の月日が経ちました。家族と暮らしていた頃と今現在のひとり暮らし。変わったことと変わらないとこ。ひとりひとりにちょうどいい暮らしがあって、そんな日常生活の中でちょっといい物や心があたたまる出来事と出会う。それがしあわせの原点だと思ってます。
 家族と暮らしていた頃にはてなブログ「イタリア楽描きessay」で発信していたモノクロのイラストエッセイを添えつつ、今思うこと、考えていること、最近の出来事を綴ります。
 近頃また単色イラストのエッセイを描き始めました。シンプルな暮らしの豊かさを感じとって楽しんでいただけたら嬉しいです。


【なんちゃってチラシ寿司】

 家族でのお祝いや持ち寄りパーティーに重宝するなんちゃってチラシ寿司。先入観を取っ払って、すし飯を彩りよく飾ればいいや、と作ってみたら大好評。父親と同居している息子達と週1回夕飯を一緒に食べる時の定番メニューのひとつ。
 太巻き・細巻きも作るけど、なにしろ海苔が貴重品。中国人が経営するアジアン食品の店か大型店舗のスーパーマーケットまで行かないと手に入らない。手に入りやすいもので手軽に作れるひと工夫メニューは、作り手と食べる人をどちらも笑顔にする。

【まぁるいピッツァ・シカクイピッツァ】

【パスタいろいろ】

 職場近くの店 Le Bontà(レ・ボンタ)で私は「黄色いピザ夫人」と呼ばれている。とうもろこし粉のピザをその店で売り始めたのは、たしか昨年の秋頃。最初は試しに数枚だけ焼いていた。黄色の生地にズッキーニの緑色が映える魅惑的な外見だけでなく、ピザ生地に練り込まれたひまわりの種がとてもいい味を出していて、他のピザよりもしっとりとした仕上がりになっている。見かけるたびに必ず購入して、何度も何度も「これ大好きなんです!」と アピールしていた。しばらくして黄色いピザは、店の定番として定着した。朝、出勤前に店に立ち寄ると「黄色いピザ?」と先に聞かれる。職場の同僚たちにも時々おすそ分けしていたらファンが増えて、縫製場内ではちょっとしたとうもろこし粉ピザのブームになっている。
 減グルテンの食生活のために米粉ととうもろこし粉をもっと活用したい。これが近頃のマイブーム。グルテンをたくさん摂取しすぎると日本人の体には特に良くない影響が出やすいと聞く。
 せっかくパスタとピザ王国のイタリアに住んでいるのに全く食べないのはもったいない。どうせなら楽しく美味しく食べたい。普段の炭水化物は米・豆・じゃがいも・とうもろこしを中心にして、今日はパスタだ!ピザだ!という日にはごちゃごちゃ考えないでじっくり味わうことにしている。
 ひとり暮らしを始めてから家では全粒粉のパスタとピザを作るようになった。家族と暮らしていた頃は長年の習慣をいきなり変えることが難しくて、少しずつ、本当に少しずつ、できるところから変えてみた。なんとか定番メニューとして落ち着いたのは全粒粉のスパゲッティ。こってりした味のカルボナーラにすることで、ようやくオトコ達を納得させることができたっけ。懐かしいな。

【エスプレッソコーヒー】

 ぽこぽこと少しずつカフェッティエラの上部にコーヒーが湧き上がってくる音とキッチンにふわりと広がる香りが大好き。朝食のリズムがここ数年変わった。朝は白湯を飲む。エスプレッソコーヒーを淹れるのは午後。牛乳を飲まなくなったので、ライスミルクでミルクコーヒーを作る。たとえ濃厚なエスプレッソコーヒーをいただく時でも砂糖を加えることはなくなった。ベタベタした甘みがせっかくの風味を台無しにしてしまう。隣の席の同僚は「コーヒーのジャムじゃないと飲めない」と言う。それほど増し増しでたっぷり砂糖を加える。彼女は頭痛持ちで冷え性。 砂糖の摂取しすぎも原因のひとつだと思うんだけどなあ。
 ミルクコーヒーにビスケットをちょんちょんとつけて食べるのは今でも大好き。米粉のビスケットをうまく焼き上げたくて、ただいま研究中。市販のビスケットは効率よく売るために流通に合う商品として仕上げられている。家で焼く時にはいらない材料がたくさん入っている。
 ある程度は仕方ないと思う。だけどあたり前の日常の食事やおやつに添加物がわんさか入った食品を食べ続けていると、体内にいらないモノが溜まりに溜まって体調を崩してしまう原因の一つになる。ストレスも余分なモノもなるべくこまめにデトックス。これは身体のケアの要だと思っている。
 最近コーヒー飲み過ぎかな?と感じたら1週間くらいコーヒー断ちをする。いつでもやめられることならば、たしなみ程度に楽しむのは構わない。これが私の嗜好品の判断基準だ。

【小学校の朝のおやつ】

 学校でも職場でも朝のおやつ時間がある。朝ごはんを食べずに家を出ても大丈夫。職場には休憩室があって、飲み物・食べ物の自動販売機が設置されている。近頃のお気に入りのおやつは果物かドライフルーツ。エスプレッソコーヒーやオルツォ(大麦ベースの飲み物)を自動販売機で買って、持参したおやつを食べてひと休み。お茶や白湯を持っていくこともある。月に2〜3回、出勤前にとうもろこし粉のビザを買うのも通勤の楽しみのひとつ。
 イタリアの代表的なチョコレート味のクリームNutella (ヌテッラ)。これを買うのはイラストエッセイを書いた数年後に止めた。飲み物もペットボトルから水筒に変えた。元気な男の子達の物の扱いはやや雑で落としたりぶつけたり。水筒は何度か買い換えたけれど、何年間もプラスチックボトルを買い続けるよりも廃棄物の量は減っただろう。
 長男が高校生になった頃、イタリア全域で水筒を持ち歩いてプラスチックボトルを減らそうという動きが広がった。長男は調理師も養成する学校に通っていたので、食まわりの事情に学校関係者は敏感で対応が早かった。すぐに全生徒に持ち歩き水筒が配布され、学校内にあった自動販売機から水のペットボトルが減ったそうだ。しばらくして次男の学校でも水筒が配られた。
 イタリアはこういう動きが早い。プラスチック廃棄物の削減のために商業用に使われる袋の規制が始まるよ、と宣言されてから数年後にはきっちりと導入された。小規模の市場などではまだ今でもプラスチックの袋を見かけるけど、大型のスーパーマーケットではすっぱりと切り替わった。買い物袋はすぐにすべて有料になり、自然分解される材質のものか紙袋になった。
 息子達が使っていたおやつ用の布袋は今も現役選手。小物を分類したり、職場への物の持ち運びに使っている。裏布も着いて頑丈。まだまだ長い付き合いになりそう。

【自家製ポップコーン】

 今の家にテレビはない。映画を楽しむのは年に1回あるかないか。家族が見ていたから一緒に映画を見ていたんだなと、気づく。 ポップコーンは時々作る。相変わらず塩バター味が好き。熱々の出来たてポップコーンを作って食べるようになってからスーパーマーケットで買ったことはない。作る時は透明のガラスの蓋を使って、ポンポンと弾けるコーンの陽気でかわいいダンスを楽しむ。キッチンに漂う香りもたまらなく好き。カレー風味やハーブ味も作ってみようかな。

【手軽なおもてなし】

 最近は季節外れの雨が多い中部イタリア。この国で暮らし始めて20年以上が経ち、だいぶ気候も変わっているように感じる。近頃はビスケットや クッキーをそのまま放置するとしっとりしてしまうので、缶や瓶や袋に密封するようになった。元ダンナの糖尿病対策で常備していた飴は買わなくなり、おもてなし用のチョコレートはイースターとクリスマスシーズンに購入するか、手作りするようになった。
 ひとくちリキュールのおもてなしは今も時々やってるけど、去年の夏にデトックスした時からアルコール飲料をあまり飲まなくなった。誰かと食事をする時くらいかな。我慢ではない。体が求めていない時には飲まない。たまに 「あ!今日はスパークリングワインだ!」みたいな日が突然やってくる。そういう日は素直に買って冷やして、ぴったりのつまみを用意してとことん楽しむ。昔の日記を読んだり、本を読んだり、窓からの景色を眺めたりしながら。 
 友達や家族と過ごす時間は楽しいけれど、頻繁でなくてもいい 。ひとりでゆっくりする時間が多い方が私の幸福度はあがる。今の手軽なおもてなしの一番のお相手は自分自身だ。
 ちなみにイタリアでは酔っ払い運転でなければ、たしなみ程度のアルコール飲料を飲んでも運転OK。

【ひとくちサンドイッチ】

【アンティパスト4種】

【プルーンのベーコン巻き】

 子供達が幼かった頃、大人数で集まるイベントに何度も参加した。持ち寄り形式になることが多かったので、簡単にたくさん作れるレシピを繰り返し愛用していた。今でも時々作るのはひとくちサンドイッチ。イタリアでは誕生日の当日に本人がおやつを振る舞うという習慣がある。職場へほぼ毎年持っていく定番メニュー殿堂入りのひとくちサンドイッチ。何度持って行っても喜ばれる人気品だ。
 先日久しぶりに我が家に友達が来た時、たまたま冷蔵庫に生ハムが数枚あったので、プルーンをくるりと包んでオーブン焼きを作った。あっという間にできるうえに香ばしい匂いがキッチンに漂う前菜。こういう簡単なメニューをたくさんストックしておくと本当に便利 。イベントの時だけでなく毎日のおやつやリラックスタイムにさっと作って楽しめる。

【パスクワのチーズトルタ】

【パスクワの焼き菓子】

 パスクワ(イースター)の伝統的な食べ物はいつもお義母さんが作ってくれた。離婚した後も機会があるごとにおすそわけが届く。とてもありがたい。特に彼女が作るチーズトルタは絶品。古い石窯を使っていた頃は毎年、息子達と一緒に手伝いに行った。人の形に焼いたビッチクータはお楽しみのおやつ。子供達がすくすくと育ちますように!健康で1年過ごせますように!と祈りを込めて人の形にするそうだ。すぐに焼き上がるので生地の味見をしながら大きなトルタが焼き上がるのを待つ。
 材料を計ったり混ぜたりするベテラン人員はいつも他にいたので、私がやっていたのはキッチンと作業場の片付け。それからトルタを運ぶ作業。プレゼントするトルタやチャラミコラの梱包も得意な作業だから担当していた。
 長男は春生まれ。チーズトルタを焼く日が誕生日だったり、イースター当日だったり、まとめてお祝いをすることもあった。伝統的なトルタやお菓子を作る人は多いけれど、石窯を使いこなせる人は少ない。そんなおばあちゃんのそばで育った息子達も私も幸せ者だ。
 チャラミコラとの出会いは強烈だった。初めてイタリアに来たのはイースターの季節の4月。毎年パスクワの日付は変わる。この派手な焼き菓子を短期留学滞在先の町トーディで見かけてぎょっとした。何これ!?イタリアのお菓子もアメリカみたいに着色料バリバリなのかな?と不安がよぎった。食べてみれば味は見た目ほど強烈ではない。他の焼き菓子は素朴なものが多くてホッとしたのを覚えている。
 けれども油分と砂糖の使用量が多くて重たいお菓子が多い。イタリアで覚えたレシピだけに限らず自宅でお菓子を作る時はいつも砂糖を5〜7割減にする。少しずつためして極限まで減らす。 
 家で作ればどんな材料がどれくらい入っているかわかるのでありがたい。甘みが足りないという人に振る舞う時は、はちみつ・シロップ・ジャムなどを添えて好みの味にしてもらう。後から甘味は追加できるけど取り除くことはできない。ちょっと足りないくらいがちょうどいい。

【トマトソースの保存方法】

 日本で「わが家の味」となる代表選手が 味噌汁だとしたらイタリアではトマトソースがマンマの味。家庭によっても作り手によっても味が違う。わが家では香味野菜もホールトマトも全てまとめて撹拌して野菜の繊維も皮もなるべく食べた。滑らかさが欲しいときは裏ごし。頻繁にパスタを食べていたから、冷蔵庫にも冷凍庫にもソースが常備されていた。
 パスタだけでなく野菜・肉・魚料理にも活躍するソース。イタリア料理の基本中の基本。このソースを作り慣れたことでメニューのバリエーションがぐんと増えた。現在はパスタを食べる回数が減ったからトマトソースを常備しない。トマト味のパスタを食べたい時はフレッシュトマトでさっとできるソースを作ることにしている。

【トマト煮込みハンバーグ】

 トマト煮込みハンバーグはなぜかズヴィッツェラと呼ばれる。「スイス風 」という意味。なぜそう呼ばれるのかわからない。お義母さんに聞いてみたことがあったけれど、由来は知らなかった。遊園地のジェットコースターをイタリア語で「ロシアの山」と呼ぶことに似ているのかもしれない 。近くの国の料理っぽかったり、遠くの景色になぞらえてみたり。  
 日本のナポリタンだって奇妙な名前だ。イタリアで売っている爪楊枝の商品名は ゲイシャ・サムライ・サヨナラだったりする。ポッキーもMIKADOという商品名になる。名前の付け方って案外単純でいい加減だ。それっぽいイメージがあればいいのだ。そしてそれが広がって定着していく。私達の生きる世界の虚構にハンバーグからたどり着く瞬間だ。

【味付きあらびきパン粉】

 今パンを買うことはほとんどない。この万能調味料を作りたい時はわざわざパンを買う。肉・魚に詰めたり乗せたり、ハンバーグをさっと作ることもできる。フライパンで炒ってサラダやスープのトッピングにも使える。炒めることでにんにくの風味が増し、食欲をそそる仕上がりになる。
 本当にお世話になった。これが 冷蔵庫や冷凍庫にあるだけでピンチをすくってくれた。毎日の食事を用意する時にありがたいのはやはり手際よく作れる品。そのお助け調味料として長い間私を支えてくれた。なんだか 久しぶりにこれを使いたくなった。そうだ!今晩はサラダのトッピングにしよう。

【マッシュポテトローズマリー風味】

 すごく簡単なのにウソみたいな美味しさ!バカンス先がキッチン付きのアパートなら必ず作るイタリア版マッシュポテト。野獣のように空腹を満たそうとする男達の胃袋を満たすお助けレシピ。
 イラストエッセイのブログを始めたときの1回目の絵がこれだった。すごくわくわくしたのを覚えている。シンプルなイラストと簡単なレシピの組み合わせは幼い頃から大好き。母の雑誌や本のイラストを何度も何度も繰り返し眺めていた。そんなレシピイラストを「あ!今自分で描いている!」という何とも言えない喜び!インナーチャイルド (自分の中にいる幼い子供)がわーい!とはしゃいでいる感覚。
 実は今でもこのはしゃぎっぷりは変わらない。ちょっと立体的に描き上げて陰影をつけて、ますますイラストが生命力を高める感じは何度味わっても色あせない快感。世界中のメニューを描き尽くす心配なんてないし、盛り付けや器が変われば 雰囲気も変わる。これからもずっと味わえるワクワク感なのだ。ふふふ 。超マニアックに嬉しい。

【玉ねぎとにんじんのスープ】

 これも簡単なのに本当に美味しい!玉ねぎと人参は日持ちする野菜なのでキッチンに常備してあることが多く、とりあえず今日はあるものでなにか作ろうという時のお助けレシピとして秀逸。ジャガイモもあればほっこり感が出る。仕上げに加えるハーブはタラゴンの他にオリガノ・タイム・チャイブ・イタリアンパセリなどなど相性のいいものはたくさんある。クセのないスープだからハーブやクルトンで変化をつければ連日食べても飽きない。シンプルなものほどやはり長く付き合えるし役に立つ。

【ハンバーガー用のバンズ】

【スペシャルサンドイッチ】

 イタリアで家族と暮らすことがなかったら多分こんなに何度もパンを焼くことはなかった。焼きたての香ばしい匂いが大好き。大学生の頃いっときパン屋さんでアルバイトをしていたのも香りにつられたから。オーブンで焼いてもホームベーカリーで焼いてもキッチンに漂うあたたかい香り。「幸福」を連想させる匂いだ。
 今は米粉を使いこなすために試行錯誤している。時折シンプルで懐かしい小麦粉のパンも作る。グルテン成分が闊歩している食生活が原因で色々なアレルギー反応を示す人が最近特に増えた。パンを食事の中心に置く文化背景の濃いイタリアでもグルテンに反応しやすい人が近年増えた。おそらくパスタやパンを極端に食べ過ぎるようになったからだと思う。
 パスタやパンの手軽さと種類の豊富さは魅力的。味の変化を気軽に楽しめる。米と同様に組み合わせの楽しさも無限大。日本人の体にはやっぱり米の方が合うと感じるけど、どうしても今日はこれが食べたい!と思う時はパンやパスタを食べる。何事も過ぎなければいい。そう思っている。

【無印良品の引き出し収納ボックス】

 物を使ったら元の位置に戻すことを、そこにあるだけで教えてくれたのがこの収納ボックス。小さい子供たちの手が届く場所にあったので、お菓子のおまけやカードゲームなどの専用場所を作り、そこにしまってね、と伝えた。そして手本をみせた。年齢に応じてできることを繰り返し実際にやることで、 私たちは生きる術を少しずつ身につけていく。
 子供たちの成長に合わせて親である私が「やってあげないこと」を増やしていった。学校の準備もスポーツの用意もなるべく手を出さない。なにかを忘れて大変な思いをすれば自分で工夫をするようになる。
 収納方法はそれぞれ使いやすいやり方があるし、片付けるタイミングも違う。2人の息子それぞれ独自の方法とリズムを尊重した。いつもきっちりこまめに持ち物を手入れする息子達ではないけれど、自分の物は自分で管理する習慣は身についている。これは本当に大切な学びだ。一生使える生きる技術だと思っている。

【土足生活・床汚れ防止の工夫】

 イタリアの一般的な家の玄関には段差がない。来客は土足でそのまま家に入る。せめて家族にはすぐに室内履きに履き替えてもらうように工夫していた。玄関に段差がないだけでなく、靴の収納場所はたいてい寝室またはウォークインクローゼット。着替えの一部に靴の装着がある。この習慣は決して悪しきものではない。特に子供が小さい時は便利だった。 わちゃわちゃと玄関先で履いたり脱いだりすることがないからとても楽だった。
 ただし床掃除のハードルは格段に上がる。そりゃそうだ。外を歩き回った靴で、そのままトイレも洗面所も寝室も闊歩するのだから。前の家はリビングの床が白タイルだった。引っ越しをするなら汚れが目立たない床の色を選ぶぞ!と夢を見ながら毎日床掃除をしていた。「白い床は明るくていい!」掃除の手間を知らない元ダンナがそう思って決めた白タイル。今ひとり暮らしの家の床はレンガ色。 最高に気に入っている。
 ちなみに掃除機は持っていない。すぐに履物を変えて極力室内の床を汚さないようにしている。アトリエ兼展示場として使っている玄関ホールの床と住居部分の床が全く同じレンガタイル。箒1本で家全体を掃除している。ホコリ取りシートと箒で毎日床のざらつきを取るのは習慣。いちいち「掃除しなくちゃ」モードは必要ない。水モップをかけるのは月1回で充分。
 子供達がいた頃のことに話を戻す。玄関ドアの脇に段ボール箱で子供用のシューズボックスを作った。日常使いの靴とスリッパはここに収納。帰宅したらすぐに履き替えられるように場所を決めて「イタリアの家あるある!靴がバラバラに家中に散乱!」問題を防いでいた。足が大きくなってシューズボックスが使えなくなる年齢期には、靴の収納場所を子供部屋の棚に移動した。頑丈な手製シューズボックスは薬品・電球・鉄屑などの分別収集ボックスとしてまだガレージで活躍中らしい。

【ハンガーを揃える】

 バラバラだったハンガーを揃えたら服の収納場所がすっきりするかな?と、まずは自分の服だけで試してみた。結果としていらない服を手放してクローゼットが使いやすくなったら、ハンガーはどうでもよくなった。使いにくい形、壊れかけたもの、あまりにも派手な色ハンガーは処分する。だけど色味と形が邪魔でなければ揃っていなくてもいい。
 とりあえず無理なくできることからやってみるという行動は本当に大事。続けるかやめるかは、やってみてから決めればいい。やる前からあれこれ考えすぎないことは、生真面目な人ほど暮らしにさり気なく取り入れた方が楽になる。案ずるより「やってみる」が易し、だ。

【洋服のダンシャリ効果】

【秋の服装】

 こんまりさん・やましたひでこさんをはじめとして、たくさんの人たちが「まずは服を減らすこと」を提案している。その効果は抜群。いらない自分の服を手放す。するとコーディネートして使っていた小物もどんどん減る 。どんどん手放せる物が決まってくる。
 お祝いの席で着る服は母が作ってくれた着物スーツだけにしようと決めた。するといらなくなったものが出るわ出るわ。リサイクルショップに持って行ったり、カリタスというリサイクルボックスに入れたりしてどんどん処分した。実行したご褒美は多少のお小遣いとすっきりした空間。ついでに「その服似合うね」という言葉が頻繁に耳に届くようになった。
 とりあえずまだ着られるからと保存していた服を手放した後にはお気に入りしか残らない。お気に入りのものを身につけているとご機嫌になる。いい気分で暮らしていればさらにごきげんな出来事がやってくる。そういうありがたいループを幸運と呼ぶと思う。
 なぜか豊かさは「持ち物の多さ」で測られることが多い。そういう時代が長く長く続いてきたから世代を超えて「たくさん持っていることが幸せの象徴」だと人類に刷り込まれていた。やっと違う種類の風が吹き込み、価値観が変わってきたことを感じる。時代が変わると人々の価値観も変わる。今はまさに過渡期。本当にたくさんの考え方が入り混じっている世の中だ。
 周りの様子を適度に伺うのは外部と密に接触するときだけでいいと思っている。その場にあまりにもふさわしくない格好をしてわざわざ問題を起こすこともない。自分の好きな服を着て、お気に入りの持ち物を持って堂々と生きればいい。他人に多少の不快感を促すような場合もあるかもしれないけれど、通り過ぎる人の声を聞きすぎることはない。
 快適で好きな服を必要なだけ手元に置き、大切に手入れをしながら着る。持ち物も小物も同様に好きなものを選ぶ。それぞれに合うシンプルさを大事にすればいいのだ。

【夏の麻ワンピース 花アップリケ】

Instagram https://www.instagram.com/simplelife.in.italia

あとがき

 暮らしをちょっといいものにするために必要なのはまず視点を変えること。たくさんの「ある」をみないで「ない」をみるから足りないと感じてしまう。いらないモノと考え方にがんじがらめになっている人はイタリアにも結構いる。サバサバと暮らしている私の行動にでっかい目をさらにまるくするイタリア人達も多い。見本や手本になるために今の暮らしをしている訳ではない。ただいらない先入観や価値観を手放しただけだ。
 余分な物を手放したら、いつの間にか身体についていた余分な肉もなくなっていた。身体が軽い。年齢を重ねるごとにシミやシワや白髪が増えても、今の私は5年後10年後の私よりは確実に若い。もっと若い頃から〇〇をやっていればよかった、〇〇をやらなければよかったと思うこともたまにはある。だけど一瞬だけ。嘆いていても時は戻らないし、その頃の私を責めたらかわいそうだ。昔の私だってそれなりに頑張っていたのだ。頑張らなくていいことまで。経験と学びは必ず役に立つけど、がんばり過ぎなくても大丈夫だよと伝えたい。

 いらない物といらない考え方を手放してシンプルに。「ちょっといい暮らし ちょうどいい暮らし」を私は続けていく。

Instagram
https://www.instagram.com/simplelife.in.italia
YouTube
https://youtube.com/@ppmp
Twitter
https://www.twitter.com/YaegashiLuna
note
https://note.com/mikiluna
Facebook
https://www.facebook.com/luna.yaegashi
Blog
イタリア楽描きessay
https://yluna.hatenablog.com
アレコレ楽書きessay
https://yluna.hatenadiary.com

Grazie 🎶