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泥棒が教えてくれたこと

木曜日の夕方、自宅に泥棒が侵入した。つながっている3つの家全てに形跡を残して素早く去った。侵入者たちはジンガリと呼ばれる盗みのプロフェッショナル。

彼らは現金と金製品しか奪わない。3か所ともなにも盗まれなかった。手慣れた行動で目星をつけた場所だけ的確に探したら余計な物には触れない。

収納スペースから出された箱はただ蓋が開けられただけでなにも壊れていなかった。貴重品はたいてい収納箱に入れてやや取り出しにくい場所に置く人が多いのだろう。使わないから箱に入れて奥に収納していた思い出の品が引っ張り出されていた。

隠し金庫を壁に作る家がイタリアでは多いということを彼らは知っているので、カレンダーや額、小型家具の後ろの壁を調べた形跡があった。

泥棒が入ったと連絡を受けたとき、盗られたり壊されたら本当に困るものはなんだろう?と家に戻る道すがら考えた。

お金・パソコン・パスポート・お気に入りのかばんや財布…どれもこれも盗られたくはないけれど、もしなくなってもなんとかなる。

いちばん嫌だなと思ったのは創作道具をめちゃくちゃにされること。彼らにはきっと価値のない絵具やインク、ペン、紙、筆。それからいろいろな素材や加工道具。私にとっては大事なものを踏みつけられたり壊されたら嫌だなと思いながら帰宅。

家の中の様子をみてホッとした。かばんや引き出し・収納棚は開けられて物色した跡はあったけれど大事な道具や素材達は無事だった。

金製品は他のアクセサリーに混ざっていたので気づかれなかった。たくさんあるネックレスや指輪の99%が手作りまたは雑貨屋で購入した物。泥棒には無価値の品ばかり。ざっくり収納が功を奏した。

さらに鍵がないと外からは開かない扉に鍵をかけずにでかけていたので簡単にドライバーで開けられていてドアを壊されなかった。隣の2つの家は扉が破壊されて窓がこじ開けられていた。

彼らが教えてくれたことはたくさんある。

価値観は人それぞれ。多くの人は大事なものを奥に隠す。鍵のかかる場所は開けたくなる。

なるほど。

常識破りの自分独自の価値観を持って、大事なものを隠さずに使い、鍵をかけずに開放していれば侵入者はなにもできないのだ。

そんな学びの置き土産を残してくれた突然の来訪者たち。おまけに探していた冬物の靴下を見つけ出してベッドの上に置いてくれていた。

もう来なくていいけれど貴重な体験と教えをありがとう。

願わくば盗みを働かなくても心身ともに豊かな暮らしができるといいね。

(はてなブログ「アレコレ楽書きessay」2020.11.02 加筆修正転載)

Grazie 🎶