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「不安感」を、医学、経済学、心理学から考えてみる(乳がん治療中の学び)

私の乳がん治療、予後順調、放射線治療について


前回、2023年2月5日のnoteで「私の乳がん治療、予後順調」と書いた。
予後順調の意味は...(乳がん治療中の気づき)|岡田美紀子|note

2023年2月8日から、私の放射線治療が始まった。
部分摘出手術をした人は必ず標準治療で25~30回の放射線治療がセットとなっている。私の場合は30回だった。この25回と30回の違いはどこから起きるのか、放射線医の先生に聞いてみたところ「年齢、部分摘出後の状況などから決まる」とのこと。
放射線治療と聞くと、通常、その名前から抗がん剤治療のような治療をイメージしてしまうが、違った。治療は毎回10分程度、放射線は目に見えないし、痛みも熱さも、ない。主な副作用として言われるのは「放射線宿酔、皮膚炎など」だが、それも人によって程度がかなり異なるらしい。
放射線治療で副作用以外に大変なことは「毎日、同じ時間に、30回通院すること」である。これがきっと、仕事と通院が難しい人にとっては悩みの種だろう。幸い、私は、今のところは目立った副作用もなく日常生活を送れているし、フレックスタイムを活用して仕事と通院を両立できている。がんサバイバーの立場になってみて「柔軟な働き方ができる人事制度」の有難みが本当によく分かる。


がんサバイバーが感じる「不安感」を、医学、経済学、心理学から考えてみる

今日は、私の乳がん手術を執刀してくれた澤田先生(NTT東日本関東病院 乳腺外科部長)が、勉強会で講師をするということで勉強会に参加してみた。
勉強会のタイトルは『なぜ、いつまでも、不安感を払しょくできないのか?乳がんを、医学、経済学、心理学から考える』
乳腺外科の先生から経済学と心理学について学ぶ日が来るとは思ってもいなかったが、先生の話がとても興味深い考察だったので、備忘録としてメモしておく。
・がんと診断されると不安になるのは当然だが、治療中も不安が続く人が多い。
・多くの人の不安感は「何が分からないか、分からない」からやってくる。
・裏を返せば「何が分からない」何かが分かれば、不安感は少しは解消されるのではないか。
・医学と経済学は実は似ているところがあり、経済学の観点から患者の不安感を分解してみると解決方法が見えてくる。
・経済学の中でも、ミクロ経済、「リスクと不確実性」。リスクは過去のデータから起こりうる事象と確率が分かっていること。不確実性は事前予測できないこと。
・不確実性が高いほうが人は不安になる。
・医者と患者では、症状や治療について、リスクと不確実性の見方が異なる。医者が文献やデータからリスク(将来予測できる)として話しても、患者がそれを不確実性と捉えれば患者の不安感は拭えない。
・例えば、乳がん患者の5年後再発無転移(転移しない)データで、乳がんのあるタイプでは93%は再発転移しない結果があり、医者としては「再発転移リスクは少ない」と告げたとしても、患者が「自分が7%の中に入ったらどうしよう」と考えてしまったら、不安感は拭えない。
・つまり、患者自身が、自分の不安が「リスク」なのか「不確実性」なのか見極めること、「不確実性」を受け入れる心の余裕が持てれば、不安感は減少するのではないか。
・「不確実性」を受け入れれる心の余裕を持つためには、心理学的にはレジリエンス(回復力)とWellbeing(ウエルビーイング)を高めることが大切。
・がんサバイバーにとって、人に自分の体験を話す、ことだけでもレジリエンスが高まることもある。

澤田先生がなぜ医学以外の経済学にも興味を持ったのか、そのことに興味を持って先生に質問したところ「前職の大学病院を出て、NTT東日本関東病院で働き、NTT社員の人と医学以外の話をすることで、経済学や心理学にも関心を持った」という。医者という専門家であっても、やはり、越境によりアンラーンすることは視野を広げ洞察力を高めることになるのだ、と感じた。

澤田先生との出会いも、今日の勉強会も、私が乳がんと診断されなければ起きなかった出来事である。今日はそのことに感謝できて、私のWellbeingも上がった1日だった。

私の放射線治療はまだ続くが、もし不安感が芽生えたら、それが「リスクなのか不確実性なのか」を考える、心の余裕を持ってみよう。


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