物語は小さく静かに発端から書く/作家の僕がやっている文章術045
『ONE PIECE』のような、『ハリーポッター』のような、『鬼滅の刃』のような、壮大な物語を書きたい。
そう考える人が陥りやすいのは、いきなり壮大なストーリーを書こうとして、キャラクターをたくさん登場させて、エピソードをふんだんにちりばめて、書き進めるうちに収拾がつかなくなる事態です。
創作を志す多くの人から、こんな悩みを相談されます。
頭が冴えてノリノリなときには、いくらでも世界を描け、魅力的と思えるキャラクターを思いつき、あり得ないような事件を描くことができても、いったん休むと、次にどうつなげて書けば良いのか分からなくなる。
基本を大切に世界を描く準備を整える
まず設定するべきことは、次の3つです。
1/主人公(メインキャラクター)の成長
2/主人公の動機(モチベーション)
3/主人公への試練
上記については、前回までにお話しました。
今回は物語の始まりをどう書くか。
すなわち『発端』の書き方と、その後の展開についてお話します。
発端の基本は、何気ないことを、小さく、静かに書き始めることです。
ONE PIECEのルフィーは、酒場で「海賊王になる」と宣言します。
その直後に、山賊と海賊の戦いが始まるわけですが、ほぼほぼ、酒場だけを舞台に物語は描かれています。
いきなり大航海に出かけません。
それは時代観と舞台設定とキャラクター設定が、読者の頭のなかで、イメージできるように整い、決まりごとが落ち着いてからの展開になります。
時代観=大航海時代
舞台設定=海で行けるさまざまな国、出会う人々
キャラクター設定=信義と友情のため、あきらめずに戦う、陽気な主人公
ハリーポッターの発端は、11歳のときにホグワーツ魔法魔術学校への入学案内が届き、学校へ向かうところから始まります。
舞台はいきなりの魔法学校ではなく、叔父さん叔母さんの家で冷遇されている日々から始まります。
時代観=現代
舞台設定=自宅→ホグワーツ魔法魔術学校
キャラクター設定=成長期の普通の少年→天性の才がある魔法使い
鬼滅の刃の発端も、何気ない日常から、小さく、静かに始まります。
時代観=大正時代
舞台設定=山奥にある炭焼き小屋の竈門家
キャラクター設定=鼻がきく炭売りの少年
物語の進展に応じて、大舞台に話が進むのは、後のことです。
さまざまなキャラクターが登場するのは、後のことです。
壮大なスペクタクルに発展するのは、後のことです。
まずは時代、舞台、主人公のキャラクターの紹介を書きます。
消えても構わないキャラクターの特徴
発端で、主人公に付された特技、特徴、性質は変化しても、消えてしまっても構いません。
ただし、主人公の成長とともに変化、あるいは消失します。
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