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1度に2問の質問術で取材を操る/作家の僕がやっている文章術052

取材のとき、インタヴューのときに、こんなことで困りませんか?。

質問に相手が延々と答え続けて、興に乗ってしまい、いつの間にか脱線した話になってしまっているのにその話をやめない。

この事態を招かない質問術があります。

2問同時質問術です。

<インタヴュー例1>

A:パリを訪れたときの印象はいかがでしたか?

Q:まず凱旋門からシャンゼリゼ通りを歩いて、シャネルのお店を探したんですけれど、見つからないので歩いている人に聞いたら、英語が通じなくて、それでタクシーに乗れば連れて行ってくれるだろうと考えて、タクシーをつかまえられるところまで歩いている途中で、パラソルが道にはみ出している露天のカフェを見つけて、あ、そうだ、パリのカフェも体験しかたったんだと、いったん落ち着いて本場のカフェオレを飲もうと席に座ったら……。

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こんな風に回答をするうちに、いつしか夢中になってどこまでも話し続ける人はいます。


私は、取材相手が思考夢中泥沼タイプだなと気がついたときには、2問同時質問術を使います。

<インタヴュー例2>

A:次に伺いたいことが2つあるんですが、パリを訪れたときの印象と、パリへは、ご自身がデザインなさった婦人傘の商談で商社を訪ねたんですよね。どちらから伺おうかな?。

こうして2題の質問を同時に提示するのです。

すると相手は、2つ答えなくてはならないんだなと意識します。

1つを答えながら、もう1つの回答を頭のなかで考えます。

1つめの回答に決着をつけて、2つめの回答を述べなければならないんだなと、意識します。

こうなると、1つの質問に興が乗って、延々と話し続けることができなくなります。

<インタヴュー例3>

Q:少年時代はどんなお子さんだったんですか。それと現在の社長になられるまでの経歴を伺いたいと思います。

インタヴュー例3は、2つの質問をしているように聞こえますが、少年時代~社長は1連の時間軸となってしまいます。

こう相手に意識されると、少年時代の苦労話を延々と話し続けられるはめに陥ります。

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2問同時質問術を応用して、次のように質問をします。

<インタヴュー例4>

Q:少年時代、青年時代、会社員の時代、そして独立起業して建築会社を3つ経営なさっている現在へと、続くわけですが、そうですね、バランス良くすべての時代のエピソードを伺うとして、まずは少年時代からお話いただけますか?。

インタヴュー例4では、相手には、それぞれの時代を分割して答えてくださいと提示しています。

少年時代だけじゃないんだな、青年時代も、会社員時代も語らなければならないんだなという意識を植え付けるのです。

こうなると、相手は社長として成功した自分を早く語りたくなって、少年時代、青年時代、会社員時代、社長になったプロセスを頭のなかで整理します。

2問同時質問術は、相手に思考の区切りを与えるのです。

答えながら考え、考えながら答えると、回答者は自分でもわけが分からなくなって、口を突いて出るままに、延々とダラダラと話し続けます。

回答しなければならない思考の範囲に柵を設けてあげる。

柵で仕切られた概念を1つのブロックとして回答してもらう。

1つのブロックを話し終えて、区切りをつけて2つめのブロックに話題を移してもらう。

「この1つの質問に、言いたいことをすべて乗せて語らなければ、この取材者は私が言いたいことを書いてくれないかもしれない」

という焦りと不安を取り除いてあげるのです。

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2問同時質問術は、取材テクニックの1例です。

答えるのが楽なように質問の仕方を工夫する。

良質な記事を書くためには、取材の際の工夫も大切になります。


サポートしていただけると、ありがたいです。 文章の力を磨き、大人のたしなみ力を磨くことで、互いが互いを尊重し合えるコミュニケーションが優良な社会を築きたいと考えて、noteを書き続けています。