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小学校に遅刻してしまう課題を解決した体験設計

今年の4月から小学生になった息子は、毎朝どうしても時間ギリギリに家を出るので遅刻の常習犯となっています。

親も遅刻多かったしなぁ…

両親としてはあまり気にしてはいないのですが、事故の可能性かそうではないのかの判断は学校にはつきづらいため解消せねばならない問題です。

以前書いた家庭で試すUXデザインに加える記事として今回はこの問題を解決した方法について書いていきます。

遅刻する経緯

登校時間に合わせて玄関へ行くと、そこで靴下を履くのに時間をかけるのです。そのせいで家をでるのが遅くなり遅刻してしまいます。

クラスでは朝の会の前に宿題を提出するのですが、遅刻ギリギリに登校する息子はそれに間に合うこともありません…。ぬぬぬ。

簡単な工夫として時間を前倒しにしてみました。

しかし、5分前倒せば5分使って粘ります。15分前倒ししたとしてもきっかり15分粘って靴下に不満をいったり、歌ったり、踊ったり、他のことに気をとられたりしながらのんびり時間をかけて玄関を出るのです…。

「なぜ遅刻するのか」を分解する

前回の記事と同様におおまかな分解を行います。

When / いつ:登校時間
Where / どこで:玄関
Who / だれが:6歳の新小学生
What / なにを:靴下を履くのに時間がかかる
Why / なぜ:爪先の縫い目が肌にあたる感覚が嫌でなかなか履かない
How / どのように:???

What、すなわち「何が問題か」が難しいですね。

問題は靴下?

彼の言い分では靴下の爪先の部分。画像でいうと「5」の箇所が肌に触れて気持ち悪く、履いたり脱いだりを繰り返しているのです。

「ロッソ」というらしいですね。

https://tabio.com/jp/dictionary/naming/

実行した施策

先にネタバラしをしますと4,5がうまくいった施策であり、4は永続させるのが難しいので5で解決しました。

  • 施策1:いろんな靴下を試し本人が納得したものを買う

  • 施策2:履きやすい靴下を親が選び買う

  • 施策3:登校時間のYoutubeを禁止する

  • 施策4:下の子を先に登園させ、彼自身はひとりで出発させる

  • 施策5:靴下をリビングに配置し、着替えと同時に履かせておく

ユーザーへの理解を深めるのが大切ではありますが、ユーザーの言うことを起点として模索しても施策が正解するとは限らなかったのです。

我々デザイナーはその前後を含めてつぶさに観察する事が大切だという事が突きつけられますね…。


以下ではうまくいかなかった施策についてのプロセスを挙げていきます。
うまくいった結果のみを読みたい場合は「施策4」まで飛ばしてください。

施策1:いろんな靴下を試し、本人が納得したものを買う

問題を理解するのには当事者の意見を聞くのは大切です。さっそく彼の意見を聞いてみましょう。

Whyにあるように「靴下が気にいらない」ようです。

「肌にあたる感覚が嫌」というのは親が感じることができませんので、まずは「どのような靴下だったら良いのか」を見つけることにしました。

  • 色が白がいい

  • 長い靴下が良い

  • 本来の足のサイズより大きめが良い

という要望を挙げたので、Amazonでそれらしい靴下を数種類購入して試着をしてもらいました。

正直違いが分からん…

「うん、コレがいい!」と本人から太鼓判を押してもらったので「勝ったな!ガハハ!」してたらうまくいきませんでした。

朝になってみるとやっぱり「なんか違う」とのことです。試着室では良い感じに思えた服が自宅ではそう思えない事と同じですね。

親に見守られて意見を聞かれたものでユーザー自身も無意識に「つい良い方向に」答えてしまったのかもと考えられます。

また、彼自身が何が求める靴下かを見極めきれていないケースも考えられるので親が選ぶことにしてみました。

こういう時、彼らが「子どもだから」うまく判断できない、良いものが分からないのだろうと思ってしまう事があります。しかし言葉を持っていないだけで、彼らにはビジョンや意見があるんですよね。

ぼやき

施策2:履きやすい靴下を親が選び買う

履きごこちの良い靴下をいくつかピックアップして購入してみました。

真っ白ではない靴下、くるぶし程度の長さの靴下などの方が履きやすく、キツさもないため爪先の不快感も軽減できるだろうと購入。

しかし、見た目が好みでないためユーザーは不満を現わにし、履くことすらしてくれませんでした…。とほほ。

  • ハイソックスを膝下まで引き上げることがうまくできず、時間がかかる

  • 引き上げすぎて、爪先がキツくなっている

  • 爪先ばかりひっぱるが、うまく爪先を緩められず時間がかかる

など、観察してみてハイソックスを履かないという提案をしたのですが、余計なお世話だったようです。

いくら問題が解決できるとはいえ、本人がアイデンティティを寄せているようなものを除外するのは受け入れてもらいづらいですね。

施策3:登校時間のYoutubeを禁止する

靴下が問題じゃないのかも…?

原因は靴下にあるのではなく、登校をしぶる環境にあるのかもしれません

玄関に来る時点でYoutubeを中断することに不満があり、機嫌が悪い状態でいるのでそこも原因として考えてみます。

朝のYoutubeを禁止してみたのです。

これには上の子のみならず下の子からも抵抗が強く、現実的ではありませんでした。下の子からすれば原因は自身にないのに今まで得られていた娯楽が制限されるのは理不尽です。その通りですよね…。

また、朝が弱い私は基本的に起きられず旦那さんが主にお世話をするので、彼らの反抗を御しきれませんでした。

自分が運用に参加できないのであれば無理な運用を強いるべきではありませんね…。

施策4:下の子を先に登園させ、彼自身はひとりで出発させる

さらにユーザーの話を聞いてみると「下の子はまだYoutube見てられるのに自分だけ先に行かねばならないのが不満」という意見がありました。

試しに先に下の子を登園させ、ユーザーをひとりにさせてみるとしれっと登校。しかもオンスケ…!

実際にはひとりではなく、私がお布団から見守っています

補足

なるほど!彼としては彼以外は皆家で遊んでいるように感じられていて、そこが不満だったのですね!!!

とは言えこの施策は夏休み限定です。

保育園の受け入れ時間を考えると小学校の開始時間に合わせて預けることは保育時間の調整が必要になるのです。

表出・本質の問題。そしてどこまでを解決するのか。

ここまでの施策で彼が抱える不満が、靴下によって表面化していることが良く分かりました。

  • 本質的な問題:学校に行かず家でYoutubeを見ていたい

  • 表出している問題:靴下の爪先が肌に合わない

表出している問題はそれほど重要なものではありません。これを解決したとしても別のカタチで牛歩作戦を実行するでしょう。

しかしながら本質的な問題は彼周辺をどうにかするだけでは解決できません。そもそも親である私が始業時間ギリギリまで寝ている状況から直さないとこの問題は解決できないことになるのです。

それはイヤ…!そんな事できるならそもそも独立していない…!

親になっても変わらないクソデカ欠点

ですので、表出の問題へアプローチするのみに留めて、本質の解決は行わないことにします。

学校に行きたくない理由をもっと掘り下げるべきでは…?というアプローチもあるのですが、行くと楽しんで帰ってくるんですよね。

「行くのは面倒だけど行ったら楽しかった」と本人も小学校自体は楽しみにしているようです。

施策5:靴下をリビングに配置し、着替えと同時に履かせておく

玄関に行くというのは「学校へ行く準備」という儀式として象徴的なものです。

そこにたまたま存在している「小さい問題」を媒介としてユーザーの不満が表出しているのが今回の事象です。

ならばその儀式に際して問題のあるオブジェクトを取り除いてしまえばいい。

ええ…、これで良かったんや…。
(キレイな写真じゃなくてすいません)

リビングに靴下箱を置き、着替えと同時に履かせておくのです。Youtubeもあるリビングではその小さな問題は表出せず、するする〜と履くことができました。

これはとてもうまくいきました。最初から問題が存在しなかったかのように、スムーズに玄関に移動し、粘ることもなく靴を履き、ランドセルを背負い玄関を出たのです。やったね!

「分かりやすい問題」に釣られがちな私のクセ

コーチング技術の授業でも先生に指摘されていたクセなのですが、わたしは目の前の結論に食い尽きすぎる性質があります。

今回も相手の提示する意見を鵜呑みにしたり、自分が勝手に想像した問題に対してアプローチしたりと紆余曲折でした。

本質的な問題へのアプローチも視野に入れたことにも反省点があります。仕事でもやってしまいがちなんですが、本質という川を鮭のように登りすぎてしまう事が多々あります。

「そもそも、それは我々が解決することなのか…?」となりがちなんですよね。極端なんです。

最後に雑談

はからずしも今回も靴下ネタでした。

※ 以前書いた「家庭で試すUXデザイン」でも靴下を洗濯カゴに入れてもらう施策を書いている。

靴下…。いったい我が家にとってどれほどの可能性を秘めているんだろう…。書こうと思っているエピソードは他にもあり、ソーダストリームの導線設計についても書く気であります。

今回この記事を書こうと思えたのは、これがとても象徴的なエピソードだったからです。

  • 「ユーザーの言うことを鵜呑みにしてはいけない」

  • 「観察が大切」

これらはリサーチやインタビューのたびに読み返す本などでも書かれていることで、毎回意識してはいるんですが「ユーザーの生の声」というのは刺激がとても強くついむしゃぶりついてしまうんですよね…。

「ここら辺をさぐったら解決策みつけられそう」

という目星をつけて思考を巡らすのですが、今回のエピソードはそこが狭すぎて失敗を繰り返したというのが象徴的かなと。ソーダストリームでもそういった目星のつけた所が間違っていたけど、探るところかえたらスルッっと解決できちゃったというものなのでよければご期待ください。

気が向いたら書きます。

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