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先手のデザイナー、後手のデザイナー

一人目デザイナー代行屋さんとしていくつかの企業でhotfix,feature,communitcation、それぞれ要望いただいたタスクをブルドーザーのように巻きとってきました。

デザイナーさんを一人雇うほどでもないけど、そこそこあるタスクを解消する。という事において、クライアントさんからも好評をいただき、自分にも適正があるなと思っています。

大雑把な私はデザイン向いてないのでは…?

「大雑把な私がデザインという繊細な作業をするのは無理では…?」

と思っていましたが、大雑把が長所になるフィールドを見つけて良いポジションでデザイナーとしての価値を発揮できたのは大きなターニングポイントです。

その反面、このポジションでより強みを発揮するのに必要なある武器が私には足りていないことにも気付きました。

それは「先手を打つ」ことです。

先手のデザインとは無形を有形にする力

私は依頼されずとも、必要なものを自ら考え、動いていく事が苦手です。

この動きができる人こそ「優れたデザイナー」であるとさえ感じています。

「お金もない、時間もない、知識もない」中で状況を打破する、負けない戦いをすることばかりに考えを巡らせていただけに、ゲリラ戦が得意となりました。

故に、資金、時間、知識。それら全てが揃った状況で真正面から戦いを挑む発想すら失われてきているのです。

先手のデザインについてもう少し詳しく見ていきましょう。

デザイナーの強みは「無形を有形にできる」ことにある

デザイナーが一番他業種と異なるのは「まだ見えない概念や設計を目に見えるカタチにする」ことです。

言葉や図、ノードを駆使することで情報に構造や意味を持たせることで言葉だけでなく視覚的にものごとを表現できます。「百聞は一見にしかず」という諺がありますが、まさにその通りでたくさんの文章を尽くしても難しいことを目でみて「ああ、これか」と出来るのです。

この強みは「未だ見ぬもの」について効果を発揮します。組織の考える自分たちの目指す未来を映像にしたり、これから実装する機能のおおまかな流れを簡単に書き起したりです。

具体的な例で言うとわたしは自身がデザイナーながら、自分の会社である「株式会社ミキイシジマ」の視覚表現領域を他のデザイナーさんに委託しています。

それこそ、「今の弊社が3年後目標に辿りつくにはどんな視覚コミュニケーションが必要か」からご依頼しているのでフローも、金額も、期日も決まっていないところからです。

私はそれを「探索」としています。

ぼっち会社ですし、自分もデザイナーなので一人で完成させる事は可能ですが、まずは「選択肢を広げる」ことをして、そこから何か予想もつかないものを得たかったのです。

先手を打つデザイナーはカタチのないものを「操作可能」にする

組織に存在する「なんとなく共有の前提知識になっているけど言葉になっていない」ような事をカタチにし、名前をつけて操作可能にすることです。

「なーんか弊社ってこうだよね」
「この機能、なんか実装がうまく進まないなぁ」

こういった意見に対し
「例えるなら攻殻機動隊みたいなチームワークですかね?」
「分岐条件が網羅されていないので、誰も全容を把握できてないからでは」
とすることです。

名前がつくと操作可能になる
  • 何に名前をつけるのか

  • その名前はどうするか

  • どうやってそれを組織内/外で広げるか

また操作可能になったそれらに構造を持たせ、司書のようにたくさんの情報を整理できることも、大切だと思います。

なぜ私は先手が打てないのだろう?

より先手を打つための施策として稼動する曜日を増やす、また制作業務をどんどん手放すことでクライアントと対話したり考える時間を増やすようにしています。

しかし、空いた時間の分、疎かにしていた家事育児へ振り分けてしまったりと、少し時間が増えた程度ではあまり効果がありません。

それなら、そもそも先手に向いていないと割り切って「最強の後手」になるのも良いかもしれません。

「後手にまわる」というのは相手に先を越されるという意味であり、あまり良い印象ではありませんが、守備と考えるのはどうでしょう。

最強の守備として「相手に先を越されても負けない」「追いつくどころか追いこせるチャンスメイクができる」というのは一つの戦い方かもしれません。

後手のデザイナーの生存戦略を探る

先手のデザインが「まだカタチになっていないものを先んじて有形化し操作可能にする」ことなのであれば、後手のデザインは「カタチが決まってしまった事象に対して負債を最小限に再構築を行う」ことであると考えます。

組織でのフローも、金額も、期日もある程度決まってきている中でデザインタスクを効率的にこなす。どれか一つの変数を入れ替えて、実現可能な範囲に納める。などです。

特急案件を好きで請けてきたこともあり、そういった限定的状況に対応するのはけっこう好きなので向いているかもしれません。

後手のデザイナーの需要はたくさんある

では、そういったデザイナーに需要があるのでしょうか?

経験からみると十分にあります。と、いうかデザイナーを「先手」として打てている組織は現在、国内では僅かでそのほとんどが全てが決ったあとで「デザイナーに依頼する」という形式をとっているのです。

後手のデザイナーの強みは「制限があってもそれなりの成果を出せる」こと

需要があることは理解できましたが、国内のほとんどのデザインフローが後手のデザイナー軸なら、私と同じようなデザイナーがたくさん存在しているという事です。

ではその中で何を強みにしていくべきでしょうか?

  • 確実にリリースに間に合わせられる

  • 品質を必達ラインに出来る

  • 短納期でも成果を出せる

などが考えられますが、これを常に続けていくのはツラそうですね。できれば週休3日、5時間稼動を目指したいです。

できれば休んでいたい

ですので、少し構造をいじることにします。この後手の特性をフローが決まる前に持ち込むことにするのです。

私がデザイン顧問をしているのはこれが理由です。

後手の「デザイン顧問」という考え

デザイン顧問というのですから、ほとんどは先手として組織内の名前のついていないものをチーム内から答えとして導き出すことを求められることが多いと思います。

しかしながら、そのようにデザイン顧問を活用するケースは以外に難しく「何を相談したらいいだろう…?」と考えを巡らせてしまいがちです。

その中でわたしが行うデザイン顧問は主に「デザインが必要なプロジェクトが走ったので相談させてもらう」というのを主軸にしています。

こんな感じでSlackを中心に質問に回答するプチプラ顧問をしている

サービス決定から実行のプロセスは、「提案」「企画」「検証」「実行」の1セットを部署 → 経営 → 開発の流れの中で繰り返していくことで進んでいきます。

ですので、この経営会議、もしくは開発などの部署に降りていく段階の会議に参加したり、Slackで質問に答えていくことで「やる事は決定したけれど、フローや金額、期間が決まる前」から参加しそれらの値から調整することにしています。

最強の守備としてチームの「なんとかなる」を保障するメンバーになる

この手法の良いところは、先手として動くのが苦手な私でも顧問業の質問事項としていただいた場合はすぐに動けることです。

社内にデザイナーさんはいないけれど、とりあえずイシジマさんに相談すればリリース前後までデザインの面倒見てもらえる」とクライアントさんにも便利に使っていただいています。

ホントにありがたいことです

そう考えると目標がないまま探索するのが苦手なのであって、目標が決まってそこに向かうのは十分可能なのですね。

本来は目標を自分で見つけ、それが組織の利となるものであることが望ましいのではすが、自分は「やりたい」が先行してしまい「組織の利」や「意義」を疎かにしてしまいがちです。

良い目標を見つけるのが苦手なのであれば、そこも一緒に決められる相手を見つければ良く、「後手のデザイン顧問」であればその相手もクライアントごとに存在することになるのです。

まとめ

自分の会社を経営しはじめて、3年。以前よりデザインと自分を俯瞰して見ることができるようになり、少しずつ「自分にあったデザインの売り方」を見つけられるようになりました。思えばデザインしかしらず、デザインの売り方も「依頼されて作る」しか知らなかったんだなと今になって思います。

この記事を読んでくださった方も自分にあったデザインや強みの売り方を考えるきっかけになれば幸いです。

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