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#翻訳 ”女性起業家インフルエンサー"現象について

FastCompanyに、女性起業家がインスタグラムを使うことについての考察が載っていました。
インスタグラムで成長する例もあれば、撤退の決断をする例もあり、
日本以上にインスタグラムがビジネスと直結しているのが伝わってきて興味深い。

様々な女性起業家による大成長企業の例が載っていて、新たに面白い企業がたくさん知れて良かったです。

原文
The Instagram trap: Social influence is helping women build brands—as long as they follow the rules (2019年4月)

インスタグラムの罠:ソーシャルの影響は女性のブランド構築を助ける―ルールにしたがっている限りは

テイラー・ヘイニーはうんざりしていた。去年の11月、彼女は彼女のアスレジャー会社、Outdoor Voicesでの管理職の務めを全うしようと、外部の人材採用ファームに依頼をかけていた。ヘイニーは、自分が何を求めているかはっきりわかっていたが、リクルーターは彼女の望みに気づいていない―または軽視している―ようだった。
そのため、30歳起業家とCEOは彼女のインスタグラムのアカウントへ行って、ジムで汗をかいている自撮りを、情熱的な見出しと共に、彼女の5万近いフォロワーに向けて投稿したのだ。「私は可愛いみたいだし、みんなもキュートだと言ってくれる。…でも私の下に隠れているのはビースト。この力を日々減らしている人なんて、ばかみたい」

【Outdoor Voices テイラー・ヘイニーのInstagram】

投稿スタイル:元気いっぱいの経営者

このメッセージは、いかなる議論を呼ばなかったという点である意味平凡だった。そしてこの投稿は製品を売るという以上に、製品のユーザーを元気づけた―おそらく2つのゴールは一緒なのだが。彼女の不満を公共の場に出すことはリスクだったが、それは計算されたものだった。"みんな好きになってくれた”とヘイニーは言う。投稿は6000近いLikeがついた。

ヘイニーは、2018年3月には資本金3,400万ドルで起業し、累計5,600万ドル調達しているやり手の起業家だ。しかし彼女はソーシャルメディアの達人でもあり、彼女の顧客は熱狂的に彼女の動向をフォローしている。彼女がOutdoor Voicesのツートーンレギンスでハイキングに行ったとか、チュールガウンを着てボーイフレンドのマーク・ウィスタックと一緒にカントリーミュージックアワードのレッドカーペットに立ったとか。"フォロワーたちの気分が上がるように心がけている、そうすればずっと見ていてくれる”と彼女は言う。

※訳注 (以下引用部分はすべて訳注)
Outdoor Voicesの紹介はこちらがわかりやすかったです。
D2Cスタートアップの概況についてPart.1

(Outdoor VoicesのFBページのトップ画像)

今日の若い女性起業家の多くは、朝のルーティーンをインスタグラムのストーリーに投稿するのが、経営会議で資金の調整をするのと同じくらい自然なことだ。中には、何万―何百万の時さえあるが―のフォロワーを集めるという点でソーシャルメディアの性質をマスターしているものもいる。これまで企業が伝統的に仲良くなろうとしてきたブランドアンバサダーのようなものになることによって。とはいえ、これらの創業者たちは、忌み嫌われた称号としての”インフルエンサー”というわけではないが、彼らは大いに影響力がある。

昨年ベンチャーキャピタルによって出資された総額1,300億ドルのうち、女性の創業者への出資はたった2.2%だ。そしていまだ、もしくはおそらく、この不足により、不適切な注意を引いているのが女性起業家である。特に今日の#MeTooの投稿が職場や幅広い文化を席捲している時代には。10年前であればメディアは、パーカーにサンダルをはいた男性起業家に執着していたが、今日のイメージはGirlBoss RalliesやBamble Bizzのネットワークイベント、The Wingのような、フォトスポットが無限にある女性のコワーキングスペースなどに表されている。結論、女性起業家は―数千人しかフォロワーがいないとしても―自分達の声が増幅されて届くことに気づきつつある。

GirlBoss Rallies 働く女性のためのカンファレンス
「誇れる仕事」もファッションのひとつ、#girlbossから学んだこと(2018年9月)

Banble Bizz Tinder創業者が作った、恋人探し以外のマッチングアプリ
新たな転職活動を、出会い系アプリ「Bumble」が開拓する。(2017年10月)

The Wing 女性専用の高給コワーキングスペース。
スペースの提供だけではなく、メンバー用に託児所の運営、ポッドキャストの配信、雑誌の制作、他ブランドとの積極的なコラボレーションを通じて、「現代に生きる女性をエンパワーするブランド」というなポジションを構築しつつある。
女性専用コワーキングスペース「The Wing」、AirbnbやWeWorkなどから約83億円の資金調達(2019年1月)

(コワーキングスペース、the wingの様子)

"女性起業家インフルエンサー"現象は、一夜にして突然起こったわけではなかった。投資家は長い間ある種の”磁性"を具現化する投資家を探していた、と始業9年目のベンチャーキャピタルファーム、フォーランナーベンチャーズのキルスティン・グリーンは言う。フォーランナーベンチャーズは、注目を浴びる女性が推進するたくさんのブランドに何年も投資を行ってきた。「創業者というものは、あらゆる努力をする必要が出てくる。投資家、従業員、顧客を含めた多くの人を、自分と一緒に旅立たせなくてはいけないのです。」

フォーランナーが、2013年、彼女が化粧品ブランドGlossierを立ち上げる1年前にエミリー・ワイズへシード期の調達のオファーを出した時、ワイズはすでにインテリ層向けのビューティーブログ、「Into the Gloss」をしっかりと立ち上げていた。「エミリーのソーシャルメディアでの存在感が、彼女の最大の資産でした。彼女の美的センスと顧客の心をつかむ力がわかりました」とグリーンは言う。現在、ワイズのインスタグラムの個人アカウントには50万人弱のフォロワーがいる。彼女はプロダクトローンチのお知らせを、休暇先でのセルフィ―や絵文字と共に投稿している。彼女のディレクションのもと、Glossierはブランド自身も巨大なフォロワーを持ち、消費者と直接つながることで去年10,000万ドルを超える利益を出すことに貢献している。

Glossierについては、こちらのノートがとても分かりやすいです!
【NY発のコスメブランドGlossierのグロース戦略】

【Glossier エミリー・ワイズのInstagram】
(投稿スタイル:fresh-faced domination ※訳注:うまく訳せず…)

投資家にとって、創業者のカリスマ性を早期発見するサインをソーシャルメディア上で探すことは極めて普通のことになって来た、特に創業者が女性の場合には。女性が率いる企業の支援を行うFemale Founders Fundのパートナー、スーチャン・ドンは、起業家のインスタグラムアカウントのコンサルを行い、どうすれば彼らの顧客を引き込むことができるか教えている。「インスタグラムでは、コミュニティ―を作ることができます。それは歴史的にも女性の方が得意なことでした。」

旅行鞄のスタートアップであるAwayの共同創業者にして最高ブランド責任者であるジェン・ルビオは、彼女が会社を始めるよるずっと前から彼女の旅をインスタグラムに投稿している。現在、彼女は旅の流行の作り手でもあり、意欲的な女性起業家でもあり、36000人のフォロワーが彼女が世界中のミーティングへ急ぐのを見ている。彼女があまりにも影響力を持ったので、最近ナイキは彼女の投稿のスポンサーになったほどだ。"この点では、私たちは誰でもインフルエンサー”とキャサリン・パワーは言う。彼女はClique Brandsというファッションサイト"Who What Wear"の運営などを行う会社の共同創業者でCEOだ。"インスタグラムのアカウントはホームページのようなもの―自分のブランドの入り口の最初のポイントだとみなしています”。

Away
女性起業家2名のスーツケース企業「Away」が100億円調達(2019年5月)
このまとめnoteもわかりやすいです↓
【D2Cブランド「Away」のグロース施策】
Clique Brands
データ指向型パブリッシャー、CMGはなにを成し得たか?:「その製品は、途方もなく売れている」(2017年11月)

【Away ジェン・ルビオのInstagram】
投稿スタイル:Getting it done, out of a suitcase

Clique Brands キャサリン・パワーのInstagram
投稿スタイル:管理職(そして母)のモデル

しかし女性にとって、この種の露出は多数のジェンダー論的な複雑さをうむ。"人々は時に、この世界で女性が持ち合わせていなくてはいけない愛想のよさを理解していない。"とジェシカ・O・マシューズは言う。彼女はUncharted Powerという再生可能なエネルギーのインフラを提供し、コミュニティ形成に貢献する企業のCEOだ。マシューズのソーシャルでの存在感はまだまだこれから大きくなるところだが、彼女はオンラインでのあり方に自覚的だ。"私は技術的に天才だと思われている人をたくさん知っているけれど、表には出てこない。女性の場合は常にそれで済むとは思わない"と彼女は言う。メディア上では、イメージが実際よりも強調されるのは問題のように見える。”実際やるべきこととして、私は自分の市場進出戦略を構築する時間を作り、そしてその企てを実行する必要がある。誰からであろうと私がばかっぽく見える世界は許されないのです"と彼女は言う。黒人女性の創業者として、マシューズは、より鋭く代表者としての重荷を感じている。"自分が見えているものにしか、なることはできない。私は、ある程度、ソーシャルメディア上では、どんなことが有ろうと情熱をもって生きようとする必要があります。”

Uncharted Power
発電できるサッカーボール「SOCCKET」で、途上国の子どもたちに光を(2013年4月)
見過ごされたエッジから 〈ニューエコノミー〉が始まる(2019年5月)

【Uncharted Power ジェシカ・O・マシューズのInstagram】
投稿スタイル:内なる奮闘

インスタグラムが、人を元気づけるメッセージを拡散するために使われた時でさえ、ある種のステレオタイプは滅びない。しばしば、女性起業家は”ちょっとした関連性"を示しながら自己卑下しなくてはいけない。文化批評家でブランド戦略家、人気ポッドキャスト"Call Your Girlfriend"の共同創始者でもあるアミナトウ・ソウは言う。彼女は男性のCEOがプライベートジェットでの自撮りを投稿するのは問題ないのに、女性の場合は目新しい贅沢なライフスタイルの投稿はプライベートのアカウントに隠すか、まったく投稿しない傾向があることを長年察知している。Outdoor Voicesのヘイニーも、”へこみすぎている"投稿や、成功を見せびらかすような投稿は避けることを意識している。

会社のイメージを自分自身に紐づけることは、現実的な危険もある。00から40までのサイズ展開で知られるアパレルブランド、Universal Standardの共同創業者であるポリーナ・ベクスラーとアレックス・ワルドマンは両名ともソーシャルメディアから手を引いた。Universal Standardの顔になることは、ブランドに同じ型を当てはめ続けることを意味しかねないからだ。ブランド全体の思想は、型に当てはまらないことにある。”シャネルガールがいたり、アルマーニのイメージが浮かぶ人がいてもいい。でも、Universal Standardにはいらない"とワルドマンは言う。複数ブランドが編成された時にも、創業者の個人的な失敗が会社の崩壊になりかねない。生理用下着のスタートアップ、Thinxは、まだ2年前に起こした罪状のリカバリーに勤めている。派手な共同創業者、ミキ・アグラワルが従業員にセクハラし、敵対的な労働環境を作り上げてしまったのだ。(彼女は2017年にCEOに降格した)。

Thinx
生理というタブーに切り込んだあの下着ブランドの起業家、次は〈お尻〉なぜ彼女は“便座”で人の感情を揺さぶれるのか(2018年6月)

ブランドのアンバサダーになるのはまた、とてつもなく時間を要する。多くの卓越した女性起業家が、ソーシャルメディア上で発言が少ないか、存在しない代理役や幹部を抱えているのは偶然ではないだろう。ヘイニーは最近Outdoor VoicesのCOOとしてスポーツウェアのベテランパメラ・キャトレーを雇用した。キャトレーはインスタグラムアカウントを持っていない。ジェン・ルビオのAwayの共同創業者でCEOのステフ・コーリーはソーシャルメディア上ではそんなに活発ではない。Drybarの創業者であるアリ・ウェッブはブランドの声を担う一方で、CEOのジョン・ハフナーが日々の会社運営を担っている。急成長中のアパレルブランド、Cyuanaでは、労働者がよく共同創業者間で分裂する。公にはあまり顔を見せないカーラ・ガラードとスポークスウーマンとしてブランドを担うCEOシルファ・シャーだ。シャーは"私は私たちの聴衆とつながる特権がある。カーラがそのために時間を作ってくれたから。”という。

Drybar
「切らない美容室」を年商100億円に育てた女性起業家(2016年10月)

CUYANA

【日本未上陸】”いつもよりちょっと良いもの”。高級ブランドさながらの上質バッグブランドCUYANA(クヤナ)☆(2019年1月)

女性起業家の中には、ソーシャルメディア上のゲームの中で、ちょっと動くだけでさえ、その裏にあるリスクを取るほどではないと見る者もいる。女性向けのビタミンブランドRitualの創業者でありCEOのカテリーナ・シュナイダーはそのリスクを完全に避けることに決めた。彼女は、チームから頻繁に、顧客がシュナイダーの起業家であり母である経験の中からインサイトを得ることができれば、会社の利益につながると提案されていることを認めている。

"私がイベントに登壇する時、女性は選ばなくていいと伝えています。子育てとビジネスの成長は両立できるのです。"とシュナイダーは言う。しかし彼女は私生活をショーケースに変貌させるつもりはない。”私は自分の時間を、自分の装いや照明や、自撮りの時の顔うつりを気にすることに使いたくないので。よりベストな製品の開発のために使いたいと考えています。”インスタグラム時代の女性起業家にとって、これはますます大胆な決断になっていくだろう。