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一生に一度の読書体験

今までの読書経験で読了後、茫然自失となった本が一冊だけある。単なる感動とも違う。イジメの描写が酷すぎたからか。それもあるだろうが、それだけではない。目の手術を受けた主人公が最後に光を見たからか。それもあるだろうが、それだけではない。

私が受けた圧倒的な衝撃は言葉では説明できない。ただ一つ、はっきりと覚えていることがある。その日、妻と共通の友人と京都で会うことになっていた。私は前日から読みかけのその本を持って大阪から電車にに乗り、京都駅に到着寸前に読み終わった。

その時、世界は一変していた。駅の雑踏の中で友人がにこやかに手を振っている。友人が怪訝な顔をしている。私は挨拶をすることもなく、しばし呆然と立っているだけだったのだ。

爾来10数年、そのような「幸運な」本との出会いはない。いや、一生に一度あれば十分だと思う。

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