カメラを買い換えた話
タイトルの通り、カメラを買い換えた。変なカメラばかり買ってたようにも思うので、それを踏まえて、これまでの遍歴をここに記したい。
リコー時代
まず初めて買ったのはRICOHの一眼フィルムカメラだった。
Nikonでもなく、Canonでもないところに、面倒臭い人間の片鱗を感じる。まだ20代も始まりのころであった。
専門学校で写真の授業を受けて、フィルムの面白さにメロメロになり、錦糸町の駅ビルに入る謎の中古カメラ屋で1万5千円で買った。RICOHの50mmのレンズがついていたように記憶する。
手持ちの複合機によるフィルムスキャン。
一応、なぜCanonでもなく、NikonでもなくRICOHだったのかには理由がある。
友人が何か業務用の顕微鏡か何かで、NikonよりRICOHのほうがよく見えるみたいな話をしていたのを頭の片隅に覚えていたからだったかと思う。業務用や、サロン専売品に弱い時節にその言葉は強い訴求力を持っていた。
このカメラはなかなか面白い写りだった。物自体がレトロなもので、その通り素直にレトロな写りで、トイカメラまでいかない周辺減光が美しかった。
カメラ仲間が欲しく、これは次のカメラの買い替えのタイミングで友人に譲った。
ニコンフィルム時代
そして、買い換えたのはNikonのF2だった。
当時、NHKの「エリンが挑戦 にほんごできます」という外国の方むけに日本語を教える番組をたまたまみて、そこに出ていた豊田エリーさんに一目惚れした。
丸いおでこと、無くなりそうな細い髪の毛が良かった。
彼女のblogを読むとNikonのFE2だったかを持っているとのことで、同じのが欲しかったが、中野のフジヤカメラにそのときなかったので、似た型番という理由なだけでF2を買った。2万5千円前後だったか。
フィルムスキャナーにてスキャン。
これはいまだに持っている。ガッチャン! みたいな、いかにも機械式なシャッター音が楽しく、写りも操作性もよく、カメラのいろははこいつで教わったと言っても過言ではない。たぶん、フィルムを再開しようと思ったらこいつを手に取るだろう。
内部の露出計がほぼ役に立たないので、露出計(光を測るだけなのに1万数千円する)を買ったり、プロ仕様のフィルムスキャナー(6万くらい)を購入したりした。
カメラ業界には「レンズ沼」という言葉があり、カメラにハマるとレンズを買いあさりお金を無くすらしいのだが、7千円くらいの50mmを買って以降、そっちにはまるで興味なく、そうした周辺機器と現像代ばかりにお金が消えていった。
幻のD40
お金が消えていきすぎ、これは行けないとNikonが出していたD40という、一般家庭にもデジタル一眼レフカメラを、という当時として世間のニーズにドンズバなカメラを購入。
ただ、フィルムに慣れ親しんだり、RAW現像というものをまだ何も知らなかった自分は、画質に満足がいかず直ぐ使わなくなった。
ニコンデジタル時代
当時(いまもだけど)、カメラマンの幡野広志さんが好きで、blogやSNSでの発信を追いかけていると、Nikon D700(当時一番普及していたフルサイズデジタル一眼)での作例とともに「もはやフィルムかどうかという議論は古い」という言葉があったように記憶している(確か、夕闇の街の景色だったような)。
確かにそこに写る絵は、デジタル・アナログを超える力強さを持っており、なるほどこれからはデジタルの時代か! という感じで、ちょうどその数ヶ月後にNikonが一眼デジタルのフルサイズを良い感じの値段で出すらしいぞ! という噂が広まっており、まんまとD600を購入することになった。
確か、まだ社会人一年・二年目とかで、本体16万円という金額は勇気が行ったが、頑張った(ブラックだった)ので、残業代によりなんとかなった。
この頃からようやくRAW現像をしっかりと覚えて、デジタル一眼の楽しさに目覚めた。一番長く連れ添ったカメラである。機械式カメラが長持ちするのは当然だけれど、デジタルだけれどこうして何年経っても使いやすい道具であるのは、カメラのいいところだと思う。
こちらはいま、友人の手元で活躍してくれている。いまだに第一線でも恥ずかしくない性能かと思うので、オートフォーカスが効かないという故障箇所も乗り越えて行ってほしい(不便だろうが)
マミヤフレックス時代
さて「フルサイズ」とはなんぞや、ということを調べるうちに、なるほど昔のデジカメの画がそれほど良くないのは、映像を受け取る「映像素子」という、光(画)を受け取るキャンバスみたいな部分が小さかったからなのか、と知った。
フルサイズとは、フィルムカメラのフィルムと同じサイズの映像素子を持ったデジタルカメラのことを言う。
単純バカな自分は「じゃあ、でかくなるほど写りいいんじゃん!」となって、フィルムサイズが35mmの3倍くらいある中判カメラを買った。
mamiyaflexだったか、上から覗くタイプの二眼レフカメラだ。
もうこれは使いにくいことこの上ない。
中判フィルム自体、現像できるところが少ない&綺麗に現像してくれるところが少ないという地獄。当時は理想の現像のために、千葉県から自由が丘まで1時間ちょいをかけて現像に出向いていた。
スキャンがすごいうまいDPEだった。
フィルムスキャナーも35mmは満足できるのだが、中判フィルムはなんだか頼りない絵にしかならないので、残っておらず。スキャナーの光量とかそういう問題だったのだろうか。
また、中判のフィルムは1本のフィルムに12枚しか写せない。そして、現像代が高い。
カメラが古いから失敗があるナドナド。
けれど、バカなりに思っていた「でかくなるほど写りいいじゃん」は本当で、情報量がバカみたいに多いと、やはりバカみたいに写りはいい。
NHKの8Kテレビの映像を見ると、3Dメガネをかけてもいないのに、ちょっと立体感を感じるというような要領で、情報量が多いと言うのは、物に存在感を与えてくれる。
そんな使いにくいカメラではあったが、写りは良かったので、メルカリで作例とともに出品したら、買った金額と同じで売れた(おまけもいっぱいつけたけど)。
シグマDP時代
D600で安定したカメラライフを過ごしている中、風の噂でSIGMAのカメラがやばいらしいと聞いて調べてみると、確かにやばい。
他のデジタルカメラとはちょっと違う映像記録方式を取っているらしく、3層のレイヤー状に色情報を記録し、重ねて表示しているらしい。らしいばかりであれなのは、もう画の見た目から他と圧倒的な差があるため、原理を理解せずとも違いを理解できるからだ。
中古で探し回り2万円ほどで購入したが、これがまたすごいカメラだった。
ちょっとISOをあげるとノイズだらけ(室内撮影はほぼ不可能)。液晶画面は低解像度で仕上がりをイメージしにくい。半日散歩しながら撮ろうものならバッテリーを4個も使う燃費の悪さ。現像は専用ソフトでのみ可能(そのソフトの動作が重い)などなど……
しかし、圧倒的な画。
基本的に最近は、このSIGMA DP2が不便で面白く使っていたのだけれど、どうにも堪えられなくなり、GR3などを検討したが、動画を撮りたいという気持ちもあったので、panasonicなども検討に入った。
メルカリで調べていると、なんとDP2が4万円で売り買いされている!
すごい!
事情はわからないが、状態も悪くないので売り払い、とりあえず現金化して、動画も撮れるpanasonicのGX7を購入した。
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しかし時代の進化はすごい。このGX7だって16年とか5年近くまえの製品だというのに、液晶も綺麗。タッチでピントを合わせられる。動画も美しい。
何の不満もない。レンズも込みで3万円くらいで購入できる。
フルサイズよりも小さいので、現像時に思った通りの絵を作りにくいのと、解像度が低いので引き伸ばししにくいが、一般用途でこれは十分だろうし、工夫次第でどうにでもなる(むしろ、楽しい)。
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実は他にもLOMOのLC-A(これはいまだに楽しく使っている)や、ハーフサイズカメラ(35mmフィルムの半分を1枚に使うカメラ)PEN-EEなども通ったり、ジャンク品のCanonを買って何も撮れず泣いたりしているが、最終的にPanasonicに落ち着いているという面白さは、なかなか良い感じだな、と勝手に思っている。
もちろん、金銭が許せばライカやハッセルブラッドなどを試してみたいという気持ちは強い。SIGMAのDPシリーズの新作も楽しみだ。
バイオリンとは違って、カメラは長く同じ姿を続けてきたが、新しい機能性を求めて姿を変える、ローテクとハイテクの両方が内在している不思議な道具だと思う。
今後はおそらくだけれど、動画と写真の境が曖昧になって芸術に昇華されていくような気がしている(写真家が伝えたいのはキレイな写真ではなく、目の前で起こる心象風景であるだろうから)。そのときにカメラの形がどんなものになるのか、果たして人生をかけて楽しみである。
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