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佃新古細工#10/佃三角公園に来ていた飴売細工のおじさん

佃の三角公園には、色々な行商か来た。紙芝居、おでん屋、抜き屋、飴売り。なかで一番、高価な売り物は飴売りのオジさんが作ってくれる細工物だ。オジさんは、実に器用に子供のリクエストを聞きながら造作する。色々しゃべりながら、子供を飽きさせないで手早く作って見せる。
 飴売りという商いは、江戸時代から有ったという。もちろん、子供たちはそんなこと知らない。オジさんの手元を凝視するだけだ。
 使うのは和バサミと麦稈(麦わらストロー)と食紅を塗る筆。

箱の中から出した水飴を取り出すと、これを捏ねながら麦稈で膨らませ、和バサミで加工する。和バサミも筆も何種類をあって、引き出しの中から素早く取り出して、見る間に仕上げていく。

和バサミは、母の裁縫箱の中にあったそれと一緒だ。
「坊主、何がいい?」オジさんが聞く。
僕は答える。「真っ暗闇のカラス」
「そりゃ無理だ。他に何かあるかい?それ以外なら、なんでも作るよ。」 「ん~~。だったら、ネズミ千匹」
「おお、それなら作れる。」
オジさんは、箱から水飴を出して、器用に細工しはじめた。
鋏が小器用に動き、食紅が手際よく塗られていく。
出来上がったのは、ネズミが栓を引いてる格好だった。
「あいよ。ネズミ栓引きだ。」 

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無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました