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「鹿鳴館の夜」案内と食器、メニューで見るレストランクレッセントの歴史(2)


謹啓 菊花の候皆様方におかれましては益御清祥のことと御慶び申し上げます。

扨去年の十一月三日文化の日より三日間にわたりクレッセントハウスに於いて明治時代鹿鳴館の西洋料理を復刻再現し御賞味戴きました

お陰様にてこの催しは大変なご好評を得、毎年同じ様な夜会を計画する様にとの強いご要望が御座いましたので、別記の日取りを以て第二回鹿鳴館の夜晩餐会を開催させて戴きます

本年はたまたま今から百年前一八七六年(明治九年)の英国に於るメニューが手に入りましたので、この献立を織り込んだ明治風メニューをご賞味頂き度いと存じます。

このメニューは当時の英国皇太子をロンドン市がギルドホールに招待した夜会のものであります。更に本年始め東京の某大家より一九〇六年英国マツピンアンドウェッブ 製の洋食器類の大セットをお譲り戴き、本館1階カーディナルルームを改造して後期ヴィクトリア朝洋食器室(The Late Victorian Dinner Display)を設けましたので、この展示場を御覧に入れた上、これらの銀食器を使用して夜会の雰囲気を一層盛り上げる所存で御座います。

何卒鹿鳴館の盛宴を思い起こしながら、明治の香高き芝公園に皆様御揃いで御来駕下さり、美しい秋の夜を御楽しみ戴き度御案内申し上げます

敬具

昭和五十一年十月一日

石黒孝次郎


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レストランクレッセントでの鹿鳴館は、1回目の評判がとても良く、2回目、3回目と続くことになりました。「明治鹿鳴館の西洋料理を復刻再現する」という意志を持った、祖父らしい発想の晩餐会に、毎年様々な人たちが集まってくることになります。

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(当時のクレッセント外観。この頃には、4階のギャラリー・社長室と、5階のコレクションルームにも、常に明かりが灯っていました。)

毎回、18世紀末あたりの音楽生演奏を行い、同じ時代のドイツ製のオルゴールを披露します。この時代のオルゴールは、金属の円盤に小さな無数の穴が刻まれており、器具がその穴に引っかかることで音を奏でるのですが、それはそれは美しい音色がするものでした。動画で色々と検索して、一番近い音色のものがあったものはこちら。

鹿鳴館で使われていたオルゴールとは形状は違いますが、音の広がり、深さはこちらが一番近い様に思います。(プチホテルゆばらリゾートのドイツ製オルゴール ポリフォン 1900年)胸の奥底まで響いてくる、心地の良い音でした。

1回目の晩餐会では祖母のコルセットと祖父の軍服が展示されていたそうですが、ちょっと雰囲気的にうるさくなるのでそれはやめて、音楽生演奏とアンティークオルゴールの音色披露、ということになったそうです。祖父の遊び心は、どこまでも続きます。

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