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「考える教室 大人のための哲学入門」

手にとったきっかけ

なんとなく哲学に興味が湧いてきたけど、哲学の本はどれも分厚く、パラパラめくっても紙面からは難解さしか読み取れないような本が多い中、本の薄さ、可愛いイラスト、行間の広さ(物理的な)と文字の大きさから手にとった一冊。著者は存じ上げなかったが若松英輔氏。(このあとTwitterのタイムラインで偶然出てきたのでフォローさせていただく)

本著は以下のような導入で始まる。
「哲学は、偉大なる先人の学問的結論やその結論の他者の解釈を鵜呑みにすることではなく、そのテーマでの自分の考えを進め、それを続けていく旅する行為である」
と。

学問はなんらか結論として把握しておく必要があったり、アウトプットとしてまとめなければいけないと身構えていたので、体験や経験、対話を繰り返し、考え続けていくことこが学びである、とのこの話に少しだけ気が紛れる。とりあえず触れてることだけでも学び(というか無駄になってない)と言っていいかな、と。。

この新シリーズ「学びの基本」は「生きた学びを手に入れる」をコンセプトに、古今東西の教養の「きほん」を1テーマ1冊で学べるとのこと。安価で軽くてコンパクト。読んだ後には知の森に誘われる「学びの入り口」的一冊とのことであった。読後としてはまさにそのとおりで、2時間ちょっとの読書の結果、哲学についての心の敷居は一段低くなったように思う。

この本では以下の4人を扱っている。

  • ソクラテス

  • デカルト

  • ハンナ・アレント

  • 吉本隆明

以下から本稿のメモ。いずれも個人的に印象的な部分のみ、メモとして書き留めておく。

ソクラテス

  • 知らないことを知っている時点で、ソフィストよりも知っている。

  • 知ることが生きる目的であり、刑確定後も残された時間を対話につかう

書き留めるのも恥ずかしいが、ソクラテスという人についてほぼ無知であったため、概要の一端を知る。「無知の知」の人、神託を受けて問答法でソフィストを論破して怒りをかって刑に処されるなどの一通りの話に触れる。
小5になる息子はなんでも「それ知ってる!」といろいろと教えてくれるが、いつかこのテーマについて話せる日が来るとよいな、など一考。

デカルト

  • ルネ・デカルト。名前おしゃれ。

  • 旅。学問や本から学べないことを学びにいく

  • 早く知ろうとする愚かさ

おそらく「我思う故に我あり」をメモるべきだが、まだ良くわかってないので割愛。学問制覇後に旅に出て、外の世界で多くを学んだ哲学者。いろいろ学問を制覇した後に「学びたいことがここにない」と悟る境地は多分一生わからなそう。おっさんになってもその境地に憧れるが、とはいえ、早く知ろうとする愚かさ、はとても身に沁みる。

"「ある種の精神の持ち主は、他人が二十年もかかって考えたことすべてを二つ三つの言葉を聞くだけで、一日でわかると思い込み、しかも頭がよく機敏であればあるほど誤りやすく、真理をとらえる力も劣り、彼らがわたしの原理だと思い込んでいることを基礎にして、とほうもない哲学を打ち立てるきっかけをそこから与えないためであり、またその誤りをわたしのせいにされないためである。」
早く分かることを美徳とする現代人は、この一節を再三読み直すべきである"

本著より

ハンナ・アレント

  • 労働、の意味。労働は労働として成り立つが、仕事は仕事単体では成り立たず、労働がなければ成り立たない。

  • 手をつかって仕事をする

労働と仕事と活動の話はまずここでの「労働」の意味を苦役労働的な文脈とは別の意味で捉え直さねばならず、脳内での意味構築をもう少ししたいところ。しばらくは労働=健康資本的な捉え方をしてたが、ちょっと違う。
手を使って仕事をするくだりは、職人的な魂の話として話されていたような気もするが、たぶんもう少し実感や咀嚼量が伴わないと自分の言葉にできなそう。ハイデガーと恋仲だったのね。

吉本隆明

  • 吉本ばなな氏の父。

  • 共同幻想論。様々な幻想

  • 知の探求は童心とおなじ

存じ上げなかった。〜2012年とのことで、最近までご存命だった方。著者若松氏もご自宅でコロッケをいただくなど交流があったとのこと。
すべては幻想、といった話は、いくつかの哲学の本を読む中で触れてきた概念というか、國分功一郎氏か千葉雅也氏の話に出てきた記憶があるが、定かではない。いまのところ思うのは、自分の世界の大きな割合は、確実に自分の幻想であることは間違いない。
本文とあまり関係ないが、著書の共同幻想論についての一節に、自分で思っていたこと、起こっていたことと近しい話が載っていたので記載する。

"「この本の中に、わたし個人のひそかな嗜好が含まれてないことはないだろう。子供のころ深夜にたまに眼がさめたり、冬の木枯らしの音に聞き入った恐怖。遠くの街へ遊びに出かけ、迷い込んで帰れなかったときの心細さ。手の平をながめながら感じた運命の予感の暗さといったものが、対象を扱うてさばきの中に潜んでいるかもしれない。その意味ではこの本は子供たちが感受する異空間の世界についての大人の論理の書であるかも知れない」
共同幻想論は、大人のための論理の書だが、その奥底には、子どもにしか感じられない世界との交わりの記憶のようなものが生きている。その感覚が、国家や法が「幻想」であることを教えてくれる、と言うのです。"

本著より

読書ノート

最後に読書ノートについてひと見開きだけ解説されていたので、記しておく。

  • 読書ノートのもう一歩踏み込んだ付け方。

    • 心に響いた言葉を書き写す。

    • これに表題をつける。

" 一冊の本を読むと  ーそれが良きめぐりあいであればー、こうした一節にいくつも遭遇するはずです。それを日付とともに書き留めておく。もし、できるならそこに1行でも良いのでその時の思いを添える。そうすると、そのノートはおのずと「たましい」の航海日誌になります。"

本著より

以上。

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