見出し画像

トランス女性の夫と別居を考えたときのこと②

「トランス女性の夫と別居を考えたときのこと①」の続きです)

そんな時に動いてくれたのが元夫でした。私と一切の連絡が途絶えている間に、交通機関がいつ回復するのかをこまめにチェックし、少ない空きの中から帰りの飛行機のチケットも、北海道の空港近くのホテルの部屋も予約しておいてくれていました。

やっと携帯電話が復旧して元夫と連絡が取れた時にはそれらの手配が全て完了しており、すぐに私は帰るために保養所から出発しました。

帰りの道中、私は数か月ぶりに以前からの元夫を、「この問題が起こる前までの男性だった時の元夫」を思い出していました。これが本来の元夫なのです。誰かが困っている時に、なんてことないかのように機転をきかす、素早い行動力と優しさのある人です。

ここまでの、誰の意見にも耳を貸さずに女性化への行動へと突っ走る姿ばかりを見ているうちに、すっかり忘れてしまっていた本来の姿でした。私は元夫への感謝で胸がいっぱいで、涙が止まりませんでした。

空港に到着したした時にはもう夜だったのですが、元夫は私を迎えに空港まで車で来てくれていました。とても嬉しかったのですが、私の頭の中はすっかり「以前の男性である夫」のイメージでいっぱいだったので、
実際現れた「少し髪の伸びた、なよっとした男性ぽい人」という現実に打ちのめされました。

無事に帰ってくることができた元夫への感謝と、女性化していく元夫を直視できない複雑さが入り混じった「あぁ、これが現実だ、また現実に戻ってしまった」と何とも言えない気持ち……

ですがほんの数日間の出来事ではありましたが、地震でライフラインがすべて止まり、連絡が遮断されてしまう経験をしたことで、お互いの必要性を再確認するきっかけになりました。

「これから自分たちの関係はどうなるか分からないけど、とりあえず別居をすることは止めて、一緒に暮らしていこう。もしまた災害などがあった場合、遠くに離れていて安否が分からなくなるのは耐えられない」
とお互いに意見が一致し、北海道に行くことは見送ることにしました。

こういう経緯で「別居」は見送り、その後も「家庭内別居」をするか悩みつつも、「お互いに自分の部屋を持つ」に落ち着いていきました。

お世話とご迷惑をかけた北海道の保養所にはお詫びとお断りの連絡をし、再び戦場に戻る覚悟をしました。これでもう元夫が本格的に女性に変化していく姿を見ることから逃げられなくなる日々の始まりとなったわけですが、今となってみればこれで良かったのだなと思っています。

私自身、深く考えた末の決断ではなく「事の次第についていけないから、とりあえずこの場から逃げ出したい」という思いからでした。もしあのまま別居していたら、現実から逃げ続けて最後まで受け止めることが出来なかったかもしれません。なのでちゃんと現実と向き合って、対峙できたことは良かったのだと思っています。

たった一泊だったはずの日に大きな地震が起こり、それで運命の方向が少し変わったり、決断の後押しとなることもあるのだなという、私にとっては不思議な出来事でした。

このnoteは、トランスジェンダーを家族に持つ方とコンタクトが取れる場をつくりたくて始めました。
もしご縁があってこのnoteを見てくださり、悩んでいるけど周りに話せる人がいないよ、という方がいらっしゃいましたら、良かったらコメントください🥰
誰かに話をしてみることで、少し気持ちが軽くなることもあるかもしれません。
ページ下にある「クリエイターへの問い合わせ」からでもOKです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?