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偶然の声|女の哲学

  声が嫌いだった。
  私自身の声。

  一生懸命努力したけれど、やっぱり好きになれない。
  私の声は、心地よくなかった。


  ある日
  偶然に声を知った。

  声は自分で出すものではなかった。
  声は向こうからやってきた。

  朝露でぬれた草原の真ん中に
  裸足で立っていたのだ。
  
  ふと

  森を駆け抜ける風に
  感謝した


  照りつける太陽の光に
  大地をついばむ鳥たちに
  ただ流れる川の水に
  自分のからだに
  抱き締められる両手に
  全てを感じられる
  眼に耳に鼻に舌に肌に
  内臓に骨に筋肉に血液に
  呼吸に鼓動に動きに静寂に
  

  
  自然と体のリズムが重なる
  大自然の命が流れ込んでくる

  命があふれたからだは
  輪郭を手放す


  どこからか
  声がやってきた


  あああぁあああぁぁああぁぁあぁぁああああ


  大地から空へ
  空から森へ
  森から大地へ

  全てを巻き込みながら
  声は空が上から降りてくるのか
  声が空へと溶けていくのか

  徐々に音程が高くなり
  どこからか聞こえる倍音の波

  それはハートがふるえる
  エクスタシーという響き

  
  これが声というものならば
  私の声は存在しない

  

  そうであるならば
  歌をうたいたい

  そして
  呼んでみたい

  あなたのなまえを
  

声が嫌いだった

(photo: ©MikaRin)






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