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中国留学記|今週の総理大臣は誰?と訊かれて固まった話

ーーー外国人と話す時、政治の話は避けた方がいい。

留学だけじゃなく、海外に行こうとする日本人なら一度は耳にするこのアドバイス。

中国留学2週間目、突然その話題の中心になってしまったときのお話。






「君、日本人だよね? 今週の総理大臣は誰?」



北京外国語大学に留学中の2011年秋、いつものベンチでみんなとおしゃべりしていたら、英語ペラペラ中国人のトニーに訊かれたこの質問。



この頃の日本は毎年レベルで総理大臣が交代していて、今が誰で、ひとつ前が誰で、その前は誰か、日本人ですらスッと出てこないことも珍しくありませんでした。

(安倍総理→福田総理→麻生総理→鳩山総理→菅総理→野田総理…の頃)

特にこの年の3月には東日本大震災がありました。


当時官房長官だった枝野さんが毎日毎日、昼夜問わずに作業服で記者会見を開き続けた結果、「枝野寝ろ」という投稿が大量発生したり、あまりにもメディアに出過ぎたせいで海外では官房長官である枝野さんにPrime minister(総理大臣)のテロップがついたことも…。そんな頃。

毎年毎年総理大臣が変わるもんだから、世界中がついていけていなかったのです。

トニーのこの質問は、そんな日本の様子をジョークにした何気ない一言だったんだと思います。

ちなみに彼のために断ると、この一言に他意はありません。
友人としての関係性ができているうえでの、雑談の中にポンッと生まれたジョークに過ぎないのでご心配なく。


でも、当時19歳の女子大生が自分の国際政治への興味の無さに驚き、情けなく思うには十分な一言でした。


私は、質問の意図を理解した瞬間に考えました。



自分は中国の首脳を何人知っているのだろう。
アメリカの、そして隣国である韓国の、台湾の首脳を何人知っているのだろう。


そして知っていたとして
その人たちはずっと昔から首脳なのか
それとも最近交代したのか。

情けないことに、ジョークにできるほどの知識はありませんでした。

でもこの人は知っている。
ジョークにできるほどの知識まである。


さらに驚いたのは、それを聞いたスイスやオーストリアなどヨーロッパ諸国の友人たちも頷き、

そして


Aso? Fukuda?
Noooo!! Kan??
Nooooooooo!!! Noda!!


などと答え合わせを始めたのです。

 



日本から見たら西の果ての国で生まれ育った同年代の彼らは
彼らの国から見たら遠い遠い、東の果ての国、日本の総理大臣が
毎年のように変わっていることを知っている。
しかも名前まで知っている。



西の果てのことなんて、私は全く分からない。
そもそもスイスやオーストリアがヨーロッパのどこに位置しているかも知りませんでした。



それに気付いた時、自分の視野の狭さが、無知が、
とても恥ずかしく思いました。


 

恥ずかしすぎて、ジョークには全く応えられず
できたのは俯きながら"Noda…"と呟くだけ。



外国の友人から日本のことをたくさん訊かれて
自分の無知を実感するというのは留学あるある。




でもまさかジョーク混じりに政治に関する話を投げかけられるとは。


しかも留学2週間目。
「野田さん」言えてよかった。危ない危ない。
ほんの一週間前に菅さんから交代したばかりの頃でした。



ほーらね!野田じゃん!!



西の果てから来た友人たちは
クイズの答えにキャッキャしています。

トニーも「野田かあ〜 来週は誰かな~」とか言いながら彼らと一緒に笑っていました。


君たちすごいよ…私も君たちくらいに世界を広げたいよ…

日本での学生生活からは考えられないアカデミックなジョークで笑い合う彼らを見ながらそんなことを考えました。


ら。



「…で、今の総理大臣と前の総理大臣、何がどう違うの?日本人的にはどっちがいいと思う?」





バキュン。


知っているだけじゃだめだった。

試練続く。

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