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中国留学記|留学初日に空港で発音を直されて日本に帰りたくなった話@北京

2011年、大学一年生の9月初頭、私は中国 北京に降り立ちました。目的は4カ月間の語学留学。小学校入学前から英会話に通っていた影響か、親も自分も、大学に入ったら海外留学には行くもんだと思っていました。もちろん英語圏という大前提のもとだったけど。

そんなお話。

縁もゆかりもない中国に留学した理由

幼いころからひと月の半分は父が中国出張に行っていたこと、段ボール入り肉まん騒ぎや反日運動などで日本国内の対中イメージが最悪だったこと、父から聞く中国のイメージとそれが全然重ならなくて疑問だったこと、費用が英語圏の半分だったこと、英語を伸ばすより第三言語を学ぶ方が面白そうだと思っていたこと…。(トリリンガルって響きに憧れた)

18歳の私が持っていたたくさんの小さな興味や疑問がぎゅっと集まって、そうさせたように思います。別に三国志が好きとかでもないし、中国にルーツがあるわけでもない。言ってみれば縁もゆかりもない国でした。

とはいっても、突然思い立って中国に決めたわけでもなくて。

大学に入ってすぐに開催された留学オリエンテーションで15分ずつの国別説明会に3カ国まで参加できると言われ、空いていた中国に最初に参加。本命はアメリカとオーストラリアだったから、1枠分余っていたのを中国に使うことにしたのです。
結局3回のターン全てを通して中国の参加者は私しかいなかったらしく、中国担当の先生たちは私にロックオン。

そこからのラブコールはすごかった。とにかく声をかけられました。中国に行ったらどんなに楽しい日々が過ごせるか、毎日のように説かれ続けました。

正直、めちゃめちゃ悩みました。悩んでいる自分にも驚きました。だって10年以上英語を習っていたのだから、英語圏しか眼中になかったはずなのです。でも幼いころからの刷り込みのおかげで中国にも興味があったし、自分が思ってもいなかった選択肢を見せられると「そうか、その手があったか」と、ワクワクしたこともまた正直なところ。

結局

「英語がやりたいの?それならクラスメートと下手な英語話すより、英語ネイティブのクラスメートと一緒に中国語を勉強する方が楽しそうじゃない?」

という、中国担当の先生による分からないようだけど、よく聞くととても魅力的な口説き文句で落ちました。中国に申し込んだと母に伝えたら、とても驚いていました。そりゃそうだ。

中国語は全く話せない。そもそもまともに聞いたこともない。何か怖そう、いつも怒ってるみたい。そんな印象しかなかったのに。

このとき知っていた中国語
「ニーハオ」「シェイシェイ」「サイチェン」

先生たちの手厚いフォローにより、第二外国語として週2回の中国語の授業を受けることになりました。

中国の第一印象

時は流れて運命の申込みから4か月後、私はひとりで北京首都国際空港に降り立ちました。

くっっっさ!!!

第一印象はこれに尽きます。
これを読んでいる中に中国の方がいたらごめんなさい。
めっちゃ臭かったんですほんとに。

初めて日本に来る外国人は、醤油とカレーのにおいを感じるらしいと聞きますよね。中国の場合は、何か分からないけどとにかく臭かったです。(多分臭豆腐とか八角とか独特のスパイス?知らんけど。)

あとは漢字が絶妙に読めないのが気持ち悪かったのも覚えています。「国際線」が「国际线」のように形が変わるのは海賊版のようで安っぽく見えたし、「行李」というサインは意味が分からなくて結局英語表記「BAGGAGE」を見て理解しました。(そこは「荷物」だろ!と思っていた)

iPod touchで撮影した「行李」

ちなみに行李、大昔は荷物という意味で日本でも使われていたらしいです。じゃあ「荷物」はどこから?????

初めての“日本語が通じない中国人”

人の流れに乗って出口まで到達。ついに入国審査。担当は髪はボサボサだけどきれいなお姉さん。日本語が通じない中国人と相対するのは初めてだったのでとても緊張しました。

最初に何語で質問されたのかは覚えていないのですが、滞在目的、期間、などを英語で答えたのは確か。学校名はあらかじめ用意していたメモを見せました。全部スムーズでした。

よし、入国だ。パスポートを受け取って、さあ行こう!その前にこのお姉さんにお礼を言わなければ。

「…………しぇいしぇい!!」

これ以上ない笑顔も添えて。こんなちんちくりんの対応をありがとう!留学頑張ります!そんな気持ちを込めて、精いっぱいのお礼を伝えました。そしたら。

「ぁあ?」

想定外の反応。完全にチンピラが言うときの発音。
このときの私は「啊?」が全中国人が発する聞き返しの反応だなんて知らなかったので、ただただ恐怖でした。

「し…しぇいしぇい…」

「はぁぁぁーーーーーーー」

ため息。怖すぎ。もうやだ。帰る。

「し! え! し! え!!!!!!!」

言いながら手をしっしっとされました。しえしえ…?
え、もしかして発音直された?

ここで「谢谢」の発音が「xièxie」だったことを思い出します。

そう言えば先生が「日本人が言う谢谢って本当は"イ"と"エ"の場所が反対なのよー」って言ってたかもしれない。たぶん。

いや、それにしても。

こっっわ!!!!!!!!!!!!!
中国、こっっわ!!!!!!!!!!

この国に降り立って初めての会話で発音直されたよ?
しかも私が外国人だと分かったうえで直されたよ?
あ、善意?善意で教えてくれたの?留学生だから?
いやいやあんな言い方ある?


お出迎えの兵馬俑にも発音をばかにされている気がした。

驚きと恐怖がぐるぐるした結果、とんでもない国に来てしまったと、これから始まる留学生活にすっかり怯えながらゲートを出ました。

ゲートを出たら大学からお迎えの学生が来ていてくれていました。日本語学科の人が来ると聞いていたのに、この人がまさかのフランス語学科。

また日本語が通じない中国人て。3分前のトラウマが頭をよぎります。リムジンバスでの2時間、会話はゼロでした。

中国語、本気でやろ。そう強く思った留学初日でした。


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