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保育園に保育士が誰もいなかった日の話

私は野良保育士をしています。

時々、ヘルプに入るため、単発で保育園に働きにいくことがあります。はじめましての保育園、はじめましての保育士、はじめましての子どもたち。お伺いする時は毎回ドキドキです。

ましてや
開園時間を過ぎても誰もおらずまっくら、鍵の場所もわからない、連絡先も繋がらない、なんて日にはもう。本当にドキドキがとまらなかった。

今日はそんな日の話。


とりあえず、保育園の常勤保育士が来ないことにはどうしようもないので、外で待つ。お子さんの登園時刻になってしまう前に、頼むから来てほしい。

というか、この状況はなんだ??
保育園休みだったりする?もしかして、ボイコットとか?

予想外の状況に怯えながら待ち続けていると、ようやく人が来ました。
子どもを連れていない。職員だ!

助かった!とほっとしたのもつかの間、これまたヘルプでいらした調理師さんでした。まだ空いていなくて、と伝えたら、「そうなんですか、えっと、待つしかないですよね……?」と。
見知らぬ保育園にふたり、途方に暮れる。不安を共有する仲間ができただけ、マシにはなったけども。

緊急連絡先として渡された番号は保育園の電話だったので意味なし。保育園の先生が来ると信じて待つしかない。そのまましばらく経ち、とうとうお子さんが来た。さすがにやばい。

雨で冷える朝のこと、お子さんを寒い外で待たせっぱなしという訳にもいかず、外階段に見つけた予備鍵で保育園をあけることに。本来絶対だめだけれど、外で待ち続けても埒が明かないので腹を括る。

戸惑ってる様子の保護者さん。そりゃそうだ。

電気をつけ、暖房をいれ、壁や棚に責任者の電話番号が見つけられないかと探しました。頼む、園長直通の番号を!
探していたら、荷物とお子さんを置いて保護者さん行っちゃった。まじかよ。仕事とかあるし、預けられないと困るのはわかるんだけど。

「名前は○○です、体温36.3です!」
ドアを閉めてさっさと去っていく保護者さん。

こうして私は、名前と体温しか知らないお子さん(推定1歳児)の命を知らない保育園で急遽預かるはめになりました。


もし今、地震が起こったとする。私はこの保育園からの避難先も、ヘルメットや防災頭巾や非常用持ち出し袋の置き場所も知らない。

もし今、お子さんが体調を崩したり転んで頭を打ったりしたとする。私は保護者さんの電話番号を知らない。

保育園は命を預かる場所なんです。
時給1500円の単発バイトひとりで子どもをみるとか本来有り得ない。頼むから誰か来て。


系列保育園の番号一覧を壁に見つけたので、一番距離の近い園に電話をかけました。ヘルプで働きにきたものの私以外の保育士が誰もいないこと、お子さんが来てしまったこと、保護者さんが預けて仕事にいってしまったこと、を伝えると「確認して折り返します」。

頼む。早く何とかしてくれ。

その後、園の電話に園長から連絡がありました。
「すみません大変ですよね〜」
「今から向かうので、子どもの受け入れだけお願いします!」

大変どころじゃないし
さらに受け入れさせるなや


しばらくして、また見知らぬ保護者さんが子どもを連れて登園しましたが、明らかに異常事態な状況に戸惑い、正規の保育士が来るまで保育園で待っていらっしゃいました。

そりゃそうだ。
私だって同じ立場なら怖くて預けたくない。


そんなこんなで保育園には大人が3人。調理師(とりあえず予定通りにごはんの支度)、保育士(とりあえず玩具を出してお子さんを見守りつつ折り返しの連絡や保育士を待つ)、保護者(とりあえず我が子と共にいつ来るかもわからない保育士を待つ)。非常に気まずいです。

子ども2人は、様子のおかしい保育園で大人しく過ごしてくれています。何もわからない赤ちゃんに見えるかもしれないけど、小さな子だって、いつもと違う保育園の様子や、パパママの困惑や不安、不信感などには気づきます。まじでごめんね。


しばらくして本来休みだった先生が繋ぎで駆けつけてきてくれて、園長も到着して、なんとかなりました。なりましたが。
「バタバタしてごめんなさいね」くらいのノリで片づけられたことがモヤモヤします。

だってさ

今回は、調理師も私も悪い人じゃなかったからよかったけれど。世の中には保育園での酷い事件だって起こってしまっているわけで。

もし、単発バイトで来た保育士が小児性愛者だったら?小さな子どもは自分にされたことを親や先生に上手く伝えることができない。

写真だって動画だって撮れる。お子さんやご家庭の個人情報だって漁りたい放題。

預かっている子どもの安全を確保するのは保育園、保育士の責任です。

頼むよ、まじで!

都内の無認可保育園で、本当にあったお話です

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