わたしも実はレズビアンなの、とリンダが打ち明けた

ドーナが立ち寄ってレズビアンなのと自己紹介して行った日の夕方、リンダがロバータと一緒に外出から帰ってきた。興奮してリンダとロバータにドーナのことを報告した。

さっき3番目のルームメートが来たんだけどね、彼女なんとレズビアンなんだって!

するとリンダがさりげなく言った。わたしもレズビアンなのよ。そして隣にいたロバータも、実は私もなの。

は?

Me too (私も)

という二人の言葉がしばし頭のなかでぐるぐる回った。

今にして思えば、2人は典型的なレズビアン風のいでたちだった。リンダはおおおんなで髪の毛は肩くらいまでのばしているけど、おばさんというよりはおじさん風。いつもばふっとした作業着みたいなシャツにジーンズで、でっかいピックアップトラックに乗っている。ピックアップトラックって肉体労働者系の男子に好かれる車で女子が運転するのはあまりみかけない。運転席によじのぼるのも結構大変だ。

ロバータは最初に出会ったときに男の子みたいだなと思ったくらいの短い髪の毛にめがね。やはりぱふっとしたダンガリーシャツにひざたけくらいのパンツかジーンズかチノパンをはいていた。

もしも今ふたりにであったら、ほぼ一瞬でレズビアンだなとわかる雰囲気を持っていたけど、当時の私には見分けることがまったくできなかった。

なんで最初から言ってくれなかったの?とふたりに聞いた。

リンダは、レズビアンって言ったら怖がるかもと思ったのよ、と答えた。

確かにゲイへの免疫ゼロの環境から来ているから、最初から大おんなのリンダに私レズビアンなのと言われたら警戒したかもしれない。でも必死にルームメートを探していたからちょっと怖いかもと思いつつも受け入れていただろう。

日本に住んでいるときはまわりにゲイはいなかったので、ゲイとかレズビアンって別の星で起きてることのように思っていた。怖いかもと思ったのは、自分の知らないことへ対する怖さがあったと思う。同時に、レズビアンってことは女子が好きなわけで、一つ屋根で暮らしていても大丈夫なのかな、という不安がなかったとは言い切れない。

その日の夜、学校から帰ってきたベスにことのしだいを報告した。

ベスは、リンダがレズビアンって知らなかったの?驚いた様子で言った。

リンダは自分がレズビアンであることを公開しているいわゆるオープンリーゲイ(Openly Gay)といわれる人で、彼女の職場である病院では誰もが知っていることだった。リンダが働く病院でナースの実習をしているベスにとってはあたりまえの事実だった。

ロバータの元カノがリンダの同僚なので、同僚を通じてリンダとロバータは友達になったという事も教えてくれた。

ゲイもレズビアンも同じ人間。たまたま同性が好きだっただけで私たち(ストレート)と何も変わらないよ。ゲイがオープンになってない国から来てびっくりしたかもしれないけど、ここ(サンフランシスコ)ではゲイであることを公表するのは特別なことじゃない、とベスは言った。

ベスの幼馴染もゲイでサンフランシスコに住んでいて、この後何度か会うことになる。

これをきっかけにリンダやロバータ、ベスの幼馴染のマイケルを通じて、これまで全く縁のなかったゲイ・レズビアンのコミュニティーを知ることになる。

ゲイに対する偏見はなかったけど、自分とは違う(=同性がすきである)ということに対する漠然とした不安がなかったとはいいきれない。でもこの経験を通じて、ゲイとかストレートって大騒ぎする事じゃないんだなと思うようなり、なんとなく自分が少し成長したように感じた。










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