ボーイフレンドとの盛り上がりに欠けた出会いが心地よかった

皮肉なことに絶対に避けようとかたくなに思い込んでいた白人が、アメリカでの最初のボーイフレンドとなった。ロバ(ニックネーム)はセーリングクラブの会員でクラブに入会してほぼすぐに知り合った。

日本人ですか?

と日本語で訪ねてきた。大学で日本史を専攻していたそうで、片言以上の日本語を話す。大学を卒業したあとは日本語を話す機会がなかったらしい。久しぶりに日本語を話せてうれしいと照れくさそうに言った。

ロバは私より少し背が高く全体にがっつりと筋肉質で、数年前に亡くなった俳優のロビンウイリアムズによく似ていた。黒髪でヘーゼル色のぱっちりした目にはくるんとしたつけまつげみたいな長いまつげがくっついていた。ルーラーやまつ毛パーマは絶対に必要ない女子としてはうらやましいまつ毛だった。

出会ったとたんにビビッと電光が走ってフォーリンラブ!という出会いでは全くなく、昔からの知り合いに会ったような感じの出会いだった。恋に落ちたというよりは離れ離れになっていた兄弟に再開したような感覚だった。

ドキドキすることもあまりなく、なくなんとなく自然に食事に行ったり、彼のアパートに遊びに行ったりしている間に付き合いが始まってしまった。好きだとか愛しているみたいな表現も一切なかった。

この盛り上がりに欠ける静かな出会いは、離婚の傷がまだ完全に癒えていなかった私にとってはちょうどよく、心地よかった。嵐みたいな恋愛沙汰はこりごりだった。興奮しなくてもよいから静かな関係を築きたかった。

ロバは東京に多く生息していた殿様白人とはまったく違ったタイプだった。男女平等を尊重し、とてもリベラル(先進的)。私のためにドアを開けてくれることもまったくなかったし、外食するときは常に割り勘だった。アメリカ男子にありがちな、男性が女性をエスコートして守るのだ、という考え方はなかった。彼のアパートで食事をするときは料理をしてくれて食後の片づけもした。育った家庭では、食後の後片付けはお兄ちゃんと彼の仕事で、なぜかお姉ちゃんの役割ではなかったそうだ。

彼は私の持っていた白人男子に対する偏見を払拭してくれた。人種を同じくくりでみてはいけないのだ。白人にもいろんな人がいる。すべての白人が女の子と遊びまわっているわけではない。それはブラックだってアジアンだって同じことだ。人種だけではなく見た目や行動などで人を判断するべきではない。ステレオタイプに人やモノを判断しxxであると断定してしまうことが多い私は思いきり反省した。

こうしてロバとの付き合いが始まり次第に一緒に過ごす時間が多くなっていった。アメリカに移住してからちょうど1年がたとうとしていた。

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