アメリカはNPOのしくみづくりがうまい

アメリカ社会には数多くの非営利団体が存在している。非営利団体のリサーチを行っているNational Center of Charitable Statisticsによるとアメリカの非営利団体の数は150万団体にものぼる。日本における非営利団体の数は5万団体(日本NPOセンター出典)なので、日本とアメリカの人口比に比べるとアメリカにはものすごく多くの非営利団体が存在していることになる。

アメリカに来て最初に出会った非営利団体のセーリングクラブだった。このクラブは私のアメリカ生活の中でとても重要な社交の場となっていく。同時にボランティアベースで運営されているにもかかわらず見事に運営されているアメリカの非営利団体のすごさに感動させられた。

ウインドサーフィンを始めたいと思って道具のレンタルショップを探していたときに、非営利のセーリングクラブがあるとサーフショップの男の子に教えてもらった。クラブはマリーナの一角にあり、掘っ立て小屋みたいなクラブハウスと艇庫のある敷地の中にはところせましとウインドサーフィンのボードやセール、セーリングのためのディンキー(2人または4人乗りの小型ヨット)が置かれていた。

親切そうな会員の人が入会案内のパンフレットを渡してくれて、簡単にクラブのしくみの紹介と艇庫の案内をしてくれた。

• 会費は3か月で50ドル、(これは20年前の会費で現在は120ドルに値上がりした)
• 会員になったら3か月の間に2時間のボランティア仕事をしなければいけないこと、
• ウインドサーフィンやセーリングのレッスンはすべて会員のボランティアで行われていること
• 道具はすべて無料で借りることができるけれど借りる前に海のルールを理解するための筆記テストを受けること
• 初級、中級、上級べつに使える道具と出廷できる範囲が決まっているので、レベルをテストするための実技試験を受けること
といった感じだ。

システムはきちっとできあがっていて、海のルールを学ぶためのパンフレットやウインドやセーリングのしくみを学ぶ冊子が用意されていた。海のルールブックやセーリングのハウツーを説明した冊子はボランティアによって作られたものだった。

ボランティアの仕事は会員へのレッスンから道具のメインテナンス、クラブハウスや敷地の掃除、メインテナンス、クラブで主催するパーティのお手伝いなどさまざまな仕事があった。

セーリングやウインドサーフィンを何時間か教えると会費が無料になる制度もあった。教えるほうにとっては会費が無料になるというメリットがあり、教えてもらうほうは無料レッスンを受けられるという素晴らしい仕組みである。

年に一度選挙制でクラブのエクゼクティブコミッティ(役員会)のメンバーが選出される。役員トップでクラブの総責任者にあたるコモドア、会費などを管理する会計役員であるトレジャリーなど10人ほどの役員がいて、月に1回の役員会でさまざまな問題を話し合い解決していく。

このあたりのしくみづくりはさすがだなあと思う。非営利団体という組織の歴史が長いだけあって組織づくりもよくできているしきちんと機能している。またボランティアに奉仕するということを子供のころから経験しているアメリカ人が多く、ボランティア制のしくみも受け入れやすい土壌があるのだろう。

このセーリングクラブの場合はボランティアに従事するのは3か月のうち2時間だけ。会費を無料にしたければせっせとレッスンを与えればいいわけで、ボランティアの先にはメリットがきちんとある。ギブアンドテイクのしくみが出来上がっている。

もともとは大学のカリキュラムの一環としてスタートしたクラブだったが、のちに非営利団体として独立した。セーリングやウインドサーフィンを一般の市民に普及させようというのが目的のクラブだ。日本ほどではないにしてもセーリングやヨットはまだまだ高価なスポーツという認識がある。ヨット人口は何といっても白人が中心だ。クラブを通じてふつうならセーリングに縁のない人たちにも楽しさを知ってもらおうということで、月に一回無料でボートに乗れるサービスも提供している。

クラブに関する説明と艇庫などを案内してもらって、さっそくクラブに参加することにした。3か月で50ドルなら捻出できる。ウインドサーフィンの道具を借りるにはまず海のルールの筆記テストを受けて、そのあとウインドサーフィンのレベルを決める実技テストを受けなければならないそうで、海のルールのガイドブックを渡された。

学校の勉強に加えてまた新しい勉強が増えてしまった。でもこれも実際に英語を使う練習になる。ウインドサーフィンはできなかったけれど、新しいコトが始まる予感でわくわくしながらクラブを後にした。

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