スピリチュアルおたくのルームメートがやって来た

リンダの家に住み始めてから2週間くらいすると、新しいルームメートがやってきた。べスという28歳のイタリア系女子で、看護学校に通っているという。リンダの働く病院でバイトをしていた関係で知り合ったそうだ。

べスは目がくりくりっとしたかわいい子で、リスみたいな感じだった。日本人の私よりも背が低いとても小柄な白人女子だ。

日本から来てるんだってね、よろしくね。一緒に暮らしてたボーイフレンドが南カリフォルニアに仕事で引越しちゃったから、学校を卒業する12月までここに住むのよ。日本食大好きだからいろいろ教えてね。

べスはよくしゃべる。出会ってすぐのころは話していることの半分くらいしかわからなかったけど、なぜか気があってすぐに仲良くなった。

一緒に近所のスーパーに行って買い物の仕方やクーポンの使い方を教えてもらった。べスはクーポンマニアで、ちらしなどにくっついてくるクーポンの束を必ず持って買い物した。

べスと急速に仲良くなったのは、お互いスピリチュアルおたくだったことにある。当時も今もわたしはニューエイジに傾倒していて、特定の’宗教はフォローしていないけどハイヤーセルフとかリインカネーション(輪廻転生)を信じている。アメリカの精神科医であるブライアン・ワイスの著書、過去生療法はいまでも最も好きな本のひとつだ。

べスもおもいっきりスピリチュアルにはまっていて自分のタロットカードを持っていたし、似たような本を読み漁っていた。

私もタロットカードを読むことができる。日本で会社員だったときの社員旅行に余興でタロットカードを持ってきた子がいた。もってるくせに自分ではどう読むかわからないという。高校時代のときのクラスメートでタロットカードを読んでくれる子がいて、読み方はなんとなく覚えていた。私読めるかも、といって本を見ながら見よう見まねで3人くらいのリーディングをしてあげた。

社員旅行から帰ってきてしばらくすると、リーディングしてあげた3人の女子たちが、あの時カードにでたことが本当になったと告白してくれた。内容はすべて20代の女子にありがちな、恋愛や結婚のことだった。

以来、リクエストに応じて昼休みに会社の会議室でタロットリーディングをしてあげるようになったのだ。ひそかにリーディングしてほしいといって家まで来る子もいた。当時下北沢に住んでたので社内の女子社員の間でひそかに下北の母と呼ばれるようになった。

そんなわけで、べスのカードでタロットリーディングをしてあげることもあった。一緒に瞑想をしたり、カルマやスピリチュアルの話で盛り上がって夜更かしした。

ある朝、べスが興奮して起きてきた。

マイカ!昨日の夜あなたが英語をふつうにしゃべっている夢をみたよ。それで私たちいろんなことをいっぱい語りあうことができたのよ。

そのころのわたしの英語力は、上達しているとはいってもネイティブがしゃべる50%くらいだったとおもう。それでもべスと私はコミュニケーションをとることができたのだ。

べスの夢は正夢となった。わたしは英語をふつうに話すことができるようになった。そして出会ってから20年以上たち、お互い遠いところに住む時期が圧倒的に多かったが、わたしたちはいまでもベストフレンドだ。

現在ニューヨークに住んでいるべスとカルフォルニアに住む私は、会うことは1年に1回あるかないかの頻度である。でもべスは私のアメリカでの妹で、ひさしぶりに会ってもまったく距離を感じない。

スピリチュアルでつながってるんだね、と彼女とよく話す。つながっているソウルは一緒に生まれ変わって学んでいくのだ。わたしたちは何度も前世を過ごしてきたのだと思う。





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