カルフォルニアで学んだヨットで生活するというライフスタイル

私は現在1年の三分の一くらいをサンフランシスコ湾のマリーナに停泊したヨットで暮らしている。

ヨットで生活というとすごく素敵な生活に聞こえるかもしれない。80年代に大ヒットしたマイアミバイスという刑事ドラマで(10年くらいまえに映画化もされた)サニーという2人組の主役刑事の一人はマイアミのマリーナに停泊している豪華ヨットで暮らしているという設定だった。

残念ながらうちのヨットはマイアミバイスが流行っていたころに建造された古いヨットで、あちこちしょっちゅう故障する。給水タンクが壊れたので全取り換えをすることになった矢先に、今度は蛇口をひねっても水が出たり出なかったりするようになった。いろいろ試しているが今のところ改善されていない。こんな調子がかれこれ2か月ほど続いている。

そんな不便なヨット生活だけれど、私たちの生活スタイルに合っていて、ヨット生活も今年で11年目に入った。海の上で生活するのってなかなか快適なのだ。

ヨットで生活するという日本ではあまり例のないライフスタイルを知ったのは、セイリングクラブに入ってからだった。セイリングが大好きな当時のボーイフレンド、ロバを通じて様々なセイリング仲間に知り合う中にヨットで生活する人たちがいたのだ。

グレッグという30代前半の男子はロバのセーリング仲間で、マリーナに停泊しているヨットに住んでいた。彼はなぜか陸の上に建っている家も所有していたが、家は人に貸して自分は船生活をしていた。それくらいセーリングが好きだったみたいで、ハワイやメキシコまで自分の船で出かけていくハードコアなセイラーだった。

彼が暮らしていたヨットに乗ってサンフランシスコ湾を何度かクルーズした。35フィートくらいのサイズだったと思う。

この船で暮らしているのかー。

興味深々だった。広さてきには都心のワンルームマンションより広いくらいだ。トイレとシャワー、キッチンなどが完備している。船の真ん中にソファとテーブルがあって、奥のほうにはベットルームがあった。

そのあともヨット暮らしをしている人や、1週間のうち数日をヨットで暮らす人たちに出会った。遊びにおいでよ、と気軽に自分の住んでいるヨットに招待してくれてお酒をのみつつおしゃべりをする。ビアガーデンのヨット版だ。

数年後ロバと別れた後にヨットでひとり暮らしをしているオランダ人女子と仲良くなった。お互い独立心が強くいろんな価値観をシェアできたので、いろいろなことを語りあった。彼女の住むヨットが私たちのガールズトークの場所であり、ヨットの小さなキッチンで手早く用意してくれる簡単なディナーを食べながらワインを飲みつつ恋愛や結婚の話をした。夜のマリーナは静かで満月の夜は月明かりが海面に反射して幻想的だった。

ヨットに住むのもいいなあと思ったのは彼女の影響が大きい。数年後にサンフランシスコベイエリアから3時間くらいかかる高原にある家を購入したときに、サンフランシスコの拠点としてヨット生活をすることに踏み切った。やってみると思ったよりも快適だった。毎日がキャンプみたいな感じで楽しいのだ。

この暮らし方はカリフォルニアという夏は比較的涼しく冬は温暖という気候だからこそできることなのかもしれない。ヨットに住むというライフスタイルはカリフォルニアに住まなければ想像もしなかったことだったと思う。


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