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小説新人賞の最終選考落選の知らせを受けたとき(泣)しかも2度目(号泣)

400字詰め500枚を書ききって、1次選考、2次選考を通過した作品は、最終選考に残った。
10年前に経験して以来二度目の最終選考。
本当に、長かった。
長いなんてもんじゃなかった。
仕事は続けていたので、忙しさが救いだったかもしれない。
でも、ふと、トイレに行ったとき、車で移動しているとき、寝る前……。
怒涛のように不安と期待が押し寄せる。ボロボロなメンタルを人に悟られないよう、笑顔と気合で仕事をした。

そして最終選考の日が来た。
朝から待っているのに、連絡は来ない。
ダメかもしれないという予感が胸の内からせりあがってくる。
でも、もしかしたらという希望も捨てられない。

携帯電話が鳴った。
私はデスクに置かれたそれを取り、急いで中庭に出た。
モーター音がうなる冷房の部屋から一転、眩しい南国の光を浴びて目がくらむ。私は木陰の下で選考結果の知らせを聞いた。

落選。

ダメだったんだ……。
茫然と空を見上げた。
みどりの葉陰から、太陽の光がキラキラと踊っている。
きれいだ。
陳腐な言い方しかできないが、光も空も緑もきれいだった。
もう、ため息しか出ない。

私はカンボジアの首都プノンペンで知らせを受けた。
調査団はエネルギー省の一画に事務所を借り、仕事に明け暮れていた。フランス統治時代のコロニアル式の建物は、機能性には欠けるが趣があった。治安はずいぶん安定したものの、まだ内戦の名残が感じられるプノンペンだった。

私の戦い……長く孤独な戦いだったなぁ。
そして敗北かぁ。
ショックは大きかったが、カンボジアの惨状に比べたら、私のショックなど取るに足らない、と自分に言い聞かせた。ほんと、情けない。へこむな自分! と心の中で叱咤激励した。

その時、調査団の同僚が煙草を吸うため中庭に出てきた。
私の様子が変だったからか、ちょっといぶかしげな顔をした。
「あのさ、私、転職失敗しちゃったよ」
私は両肩を小さく上げて打ち明けた。
「えっ? 転職ですか?」
彼に意味がわかるはずがない。でも、悲劇を喜劇に変えてしまいたかった。
「うん、500人くらい応募者がいてね、最後の4人までは残ったの」
「おお、それはすごい」
「でも、最後の一人にはなれなかった」
「ええええっ、えらく厳しいですね。採用、たったのひとりですか……」
「そう、たったひとり」
その競争率にはさすがに驚いていたが、まさか小説の賞だとは思わなかったろう。
「まじめに仕事するしかないね」
そう言ってカラ笑いする私に合わせて、彼も頬を引きつらせながら一緒に笑ってくれた。


帰国後、私は敗因を考えた。
雑誌に載った選評を読み、ネットで小説の賞に関する様々な記事やつぶやきを拾い読みした。そして、敗因がどこにあったか気が付いた。

そうか、そうだったのか。
それなら、賞に応じた戦略を練るしかない。あきらめの悪い私は次のことを考え始めた。

と、今日はここまでにしておこうかな。
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