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食品メーカーでの開発志望からシフトチェンジ。地元の人に愛される”みんなの台所“を作りたい~越野雅人さんインタビュー~

「作るだけでなく、お客さんの反応まで見届けたい」夢だった食品メーカーから保険業界に転職した訳

ーーまずは自己紹介をお願いします。

越野雅人です。長野県出身で、現在は神奈川県に住んでいます。保険の営業として働きながら、飲食店の開業を目指して料理の勉強をしています。食が好きで、高校生の頃から将来は食関連の道に進みたいと思っていました。
石川県立大学では食品化学科を専攻し、長野県の食品メーカーであるサンクゼールに入社。ジャムやパスタソース、調味料などを販売する食のセレクトショップで2店舗の店長を経験しました。商品開発がしたくて入ったのですが、3年くらい経ってから、商品開発って商品を作って終わりかなと思ってしまったんです。自分はお客さんの反応まで見たいと思っていたのに対して、開発職だと反応が数字でしかわからないのでやりたいのはそこじゃないなと。

ーー自分で商品を作るだけでなく、お客さんの反応まで見届けたいと気付いたんですね。

はい。それからは飲食店をやりたいなと考え始めて、だけど今の時代、飲食店一本でやっていくのは厳しいのでまずは金融の勉強を始めました。今は保険の営業に転職して、ライフプランの相談や保険の提案を行っています。

ーー分野がかなり違いますが、保険のお仕事はどうですか?

仕事は面白いですね。例えば20代の人だったらライフプランや将来のことを親身に話を聞きながら保険の相談にも乗り、人の手助けをすることが楽しいです。お客さんというよりは身近な人、自分の内側に近い人みたいな感じですかね。
特にお金の話は友人より踏み込んで話すことがあります。この仕事だからこそ親しい人よりも話せることもあるし、それを話してもらうというか開示してもらうのが自分にとっては嬉しいです。仕事に限らず、根本的に人と交流するのが好きで、さらに相談してもらったり頼られたりすることに喜びを感じます。

ーー人と話すのが好きで相談されるのが嬉しいと感じる性格は、今のお仕事にぴったりですね。人に開示してもらうコツはあったりしますか?

相手のことをあまり否定しないようにしています。色んな人がいるよねっていうスタンスでいるし、自分の意見は言えるけどそれが正解かはわからないので。
あとは初めの雑談の時間をしっかりとります。相手の好きそうなものをリサーチしていくとか。服装であれば、その人が来てる服はそのタイミングで何かしら思って買ったんだろうなって思うので「その服どこで買ったんですか?」って聞いたり、スーツを着ていたら「今日は何やってたんですか?」って仕事の話を聞いたり、”あなたに興味ありますよ”っていう姿勢が伝わるようにしています。「この辺で何かおいしいものありますか?」ってご飯のことを聞くこともありますね。本当は自分もしゃべりたいんですけど我慢してます。趣味の話とか料理の話とか、話し出すと長くなるので(笑)

料理好きのルーツは子ども時代のお手伝いだった

ーー越野さんはもともと食分野の商品開発志望で食品メーカーに入社して、転職してからも料理にさらにはまっているんですよね。食や料理が好きになったきっかけがあれば教えてください。

それについて自分だけではよくわからなくて、最近親と話してみたんですよ。「なんでこんなに食が好きになったのか」と。親の料理がすごくおいしかったから料理に目覚めたわけでもないんです。
話しているうちに、そういえば家に子ども用の包丁があったよね、っていう話になりました。自分は習い事もしていなくて放課後時間があったから、小学生の頃からご飯作るのを手伝っていたのを思い出したんです。そして普段はあまりほめないタイプの親だったんですが料理を手伝ったときはほめてくれて、それが嬉しかったのがきっかけなのかもしれないです。

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ーー小さい頃は親からほめてもらうのがモチベーションになりますよね。

はじめは手伝い程度だったのですがだんだんやらせてもらえる分量が増えてきて、高校3年生のときにはひとりでご飯を作り始めていました。といっても当時は家族に振る舞うわけでもなく、お昼ご飯を作って、親も仕事で家にいなかったので自分ひとりで食べていたのですが…。チキンソテーのトマトソース添えが得意でよく作っていました。料理の本も家になかったので、レシピは見ないで自分で考えて作っていました。

ーーすごい、レシピを見ずに作っていたんですね!料理が好きで大学も食品関連の学部に進んだんですよね。

料理がうまくなるかなと思って食品化学科に進学したのですが、料理の授業はあまり多くなかったんです。それより食品衛生とか化学寄りの授業が多くて、イメージと全然違いました(笑)。面白かったけど思ったより料理とはかけ離れていましたね。でも大学からひとり暮らしを始めたのもあって料理熱はさらに上がって、社会人になってからは料理教室に通うようにもなりました。

料理を本格的に学ぶべく料理教室へ。一番の収穫は料理好きな人たちとの出会い

ーー料理教室もレベルや目的によって色々な種類があると思いますが、どんな雰囲気だったんですか?

飲食店のシェフなどプロも通うような本格的な料理教室で、そこに通うなかで味の分析ができるようになりました。例えば味が物足りないときも酸味が足りないとか甘みが足りないとか、何で物足りないのか考えられるようになりました。
人間の舌感じられる味覚には5種類あって、そのうちどれが欠けてるか、その味覚を補うためにはどんな食材や調味料がいいかっていうのも習って、今でも実践しています。

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ーーかなり本格的ですね!料理教室に行って一番良かったことは何ですか?

料理好きな人と知り合えたことですね。自分が作ったものをみんながおいしいって言って食べてくれるのは嬉しいけど、それだけではちょっと物足りないな、というのは感じていました。どんな食材で作っていて、何で酸味があって、とかを分析するのが自分は楽しくて、でもそこまで話せる人は周りにあまりいなかったんです。料理教室ってどれだけ料理の話をしてもいい空間なので、料理好きな人たちと「これは何でおいしいのか」とかそういう話ができるのがすごく楽しいです。

年齢が離れた人と仲良くなれる機会も多くて、料理教室で知り合ったおじさんの家に何回か行かせてもらって、ホームパーティーのメニューの相談を受けたこともありました。本を20冊くらい並べて、お酒を飲みながらメニューを一緒に選んで。今までそういう人と出会ってこなかったので面白いですね。

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ーー人に食べてもらいたいというよりは、味の分析や追求をするのが楽しいという感じでしょうか?

昔からそういう好奇心は大きかったです。作ったことないものを作ってみたいし、使ったことない食材もどんな味がするのか試してみたいっていうのはずっと思っています。友人たちに振舞うのはどんな反応をされるか怖くてためらいもあったのですが、料理教室に行ってからは人に振る舞うことにも抵抗がなくなりました。意外と喜んでもらえるんだなっていうことが分かってきたんです。今まで食べてもらうのは実家の家族か奥さんしかいなかったから、他の人に反応をもらうのが新鮮ですね。

ーー最近新しく使ってみた食材はありますか?

今年の春に初めてたけのこの下処理をしました。水煮だと香りはほとんどないと思うんですが、生の状態から下処理をするととうもろこしみたいな甘い香りがするんですよ。1時間くらい煮て、それをグリルで焼いたものと、たけのこご飯にして食べたらびっくりするほどおいしかったです!たけのこって本来はこんな匂いがするんだっていうことが知れて嬉しかったし、たけのこのポテンシャルに感動したので毎年やろうかなと思ってます。
あとは菜の花もえぐみがあるけどちゃんと下処理をして食べたらおいしかったです。夏は茄子の煮びたし、秋は筋子からいくらを仕込む予定です。季節ごとに旬の食材を楽しんでます。

定食屋から日本酒バー、料理教室まで。目指すのは、地元の人が集う台所

ーー将来的には飲食店を持ちたいということで、今後やりたいことやお店のイメージがあれば聞かせてください。

地元の人が来られる、常連をつけられるお店にしたいという想いはあります。単なる飲食店というよりも、地域の人たちの居場所になれるようなお店を作りたいです。ハレの日じゃなくて普段の台所代わりくらいの感覚で使ってもらえればいいなと。
食材を持参してもらってもいいし、「今日は○○さんからたけのこいただきました!」みたいな感じでその日のメニューを作るのも楽しそうですよね。そこで週3日は飲食店をやって、週2日は料理教室をやってみたいです。

それから、最近イタリアンの鳥羽シェフ(東京・代々木上原にある、ミシュラン一つ星を獲得したレストラン「sio」のオーナー)のYouTubeをよく見ているのですが、鳥羽シェフは飲食店だけだと食べていくのが難しいっていう考えを持っていて、料理人を食べさせるための仕組みづくりをしている人なんです。飲食店のシェフでありながら、テレビに出演したり、コンビニの商品の監修も手掛けていたりと、複数の収入源を持つ働き方をしていて、彼の働き方には注目しています。

ーーお客さんに食材を持ち込んでもらうの楽しそうですね。料理教室はどんな方がターゲットですか?

地域の主婦の方や若い人よりは、趣味として料理を楽しんでいる高めの年齢層の方に来てほしいです。料理って少しのコツでおいしく作れるので、そのことを伝えてもっと料理を楽しんでもらいたいです。

ーーちなみに越野さんの今の一押し料理は何でしょうか?

餃子、魚のポワレ系、ポタージュ、パスタあたりですかね。今はイタリアンやフレンチが多めですが、今後は和食にも力を入れていきたいです。なんだかんだ和食のほうがみんな来やすいし、自分も外食で定食屋さんを探すことが多いので。

魚も上手く焼けるようになってきたので、和洋どちらもやりつつ、奥さんが日本酒に詳しいので日本酒と合うものを用意したいです。日本酒だとちょっと汚い居酒屋が多いので、夜はデートでも使えるようなきれい目な雰囲気の居酒屋、ランチはOLを助けるような、おいしい定食屋さんを目指します!

とにかく自分に素直に、何でもやってみる

ーーフットワーク軽く色んなことを楽しんでいる印象を受けますが、自分の中で大事にしていることはありますか?

参加しているコミュニティでやった性格診断で出たのが「バランス型」という結果でした。仕事もプライベートもバランスを大事にするタイプらしく、確かにそうだな、と。
仕事とプライベートはきっちり分けなくてもいいけど、自分がやりたいことをできる時間は持っておきたいし、制限があって何かができないのは嫌なんです。気になることはやってみて、失敗したらそれはそれでいいと思っているので、やりたいことには忠実に生きていきたいです。最近は飛び込み精神で何でもやろうと思っています。

ーー自分に忠実に生きるのは大事ですよね。最近新しく始めたことはありますか?

最近登山を始めて、7月には富士山に登る予定です。
1年で10個、やったことないことをやりたいと思っています。新しいことを経験して、それが増えていくと自分がレベルアップした実感が持てるじゃないですか。何かを新しく作ったり始めたりするのが好きなんです。レシピを見ずに料理を作っていたのも、0→1が好きだからなのかもしれないですね。逆に継続ができないので、継続できるものを探すためにも新しいことに挑戦し続けています。
あとはもう、自分に素直に、いつも楽しそうに。それを心がけています。

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