ビールの神様

今でこそ、
「夏といえば?」
「仕事終わりといえば?」
「ビールでしょ!!!ラブ!!!」
な私だが、
「ビールなんて苦くて美味しくない、、」
とビールを飲めない頃もあった。

暑い日々が続くと何故か、
初めてビールを美味しいと感じたあの日のことを思い出す。

大学一回生の春休み、初めての一人旅でタイを訪れた。

首都バンコクに滞在したのち
隣国のラオスを目指すため、夜行バスを予約した旅の中盤。

蒸し暑く日差しの強い夕暮れ時。
人で溢れかえったカオサン通りを
荷物でパンパンのバックパックを背負い
フラフラと歩きながら裏路地に入り
なんとか夜行バスの集合場所まで辿り着いた。

もちろん集合場所は屋外。
流れる汗が身体中をつたう。

手配を頼んだ旅行会社のスタッフはまだ来ておらず、
同じバスに乗るであろうバックパッカーたちがもう既に何人か待っていた。
そのうちの1人、タニさんという30代後半のおじさんに話しかけられた。
彼も同じバスに乗る予定なのだが、集合時刻になっているのにスタッフが来ないから困る
というような内容であった。
「ここはタイだし、きっとスタッフはしばらく来ないだろうから休憩しよう」
と重いバックパックを地面に置き
タニさんは横の露店に向かっていった。

戻ってくると手にはタイのチャーンビールが2本。
「暑いからビールでも飲んで待とうよ。はい。」
と私に手渡してくれた。

面識も浅いかなり年上の人に奢ってもらったビールを
「好きじゃないから...」
という理由で断れない、、
とっさに判断した私。
「いただきます!ありがとうございます!」
「日本に比べると安いものだからね。笑
 そうしたら、、乾杯!」
夕焼けの太陽に反射した、ビール缶を重ね合わせ、
腹をくくった私はグイッと一口ビールを飲んだ。

「お、おいしい?!!!」
あれ?ビールってこんなに美味しかったっけ?
しばらく水分を取っていなかった上に、
暑い中汗だくになっていたこと、
タイのビールが薄くて飲みやすいこともあり
私はもらった缶ビールをすぐに飲み干してしまった。

暑い中飲むビールがあんなに美味しいなんて。
予想外だった。

それ以来私はビール好きに転身。

夏がやってくると必ずこの日の乾杯を思い出し、缶ビールを味わうのが通例になった。

タニさんとは短いバス旅の後、
「お互い良い旅を!」
と連絡先を交換することなくお別れした。
彼は私とってビールの神様。

もしまたどこかで人生が交わるなら
あの日と同じようにチャーンビールで乾杯したいなぁ。
あの日よりも大人になった私です!と。

#また乾杯しよう
#女子旅 #タイ #チャーンビール #バンコク
#一人旅 #バックパッカー

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