星空の効果

野尻抱影(随筆)、山口誓子(俳句)の『星戀』という本の中の山口誓子「二つの星夜」というタイトルの序の文章がとても好きだ。

筆者が昭和28年だったかの台風13号の被害に遭い、生命の危険もあった上に自宅は雨戸が一枚も無いような状態になった夜のことを書いた部分が特に。

一部抜粋させてもらうと、

『外はすごい月夜で、潮は遠くまで退いていた。直ぐ眼の前に大犬座のシリウスがきらきらかがやき、その上にオリオン星座が勿体ないくらい美しく見えた。それ等の美しい星座を見たとき、私は台風に生命を脅かされたことをうち忘れ、自分の家がどんなにひどい被害を受けていても、堪えられると思った。事実、鎖して置いた雨戸が一枚もない自分の家に踏み入って、高浪の荒らし去ったあとを見たとき、私は自らを失わなかった。星座のひかりはしずかに強く私を励ましたのである。』

この効果は星空に限らないと思う。

山口誓子の好きなモノがたまたま星に関することであり、さほど星空などに興味を持たない人がこのように感じるかというと疑問だし。

でもこの文章から思うのは、「自分の好きなこと」を持つことはこんなにも人を強くするのか、とか、そういうことで。

音楽でも、アニメでも、スポーツでも美味しい食べ物でも、植物、動物、なんでも、なんでもいいんだと思う。

苦境に立った時に、自分を見失いそうな時に、自分を自分たらしてめてくれる何かを心に持つことはすごく勇気になると、そんな風に思った。

『星戀』。機会があれば、ぜひ読んでみてもらいたい。勇気が出る。

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