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10月・11月に読んだ本を紹介します

月に大体4冊といい感じの読書ペースをしばらく維持していたものの、10月・11月は本から手が遠ざかりがちな毎日となっていました。読みきれた数は、2ヶ月で3冊。読書の秋は一体どこへやら……

とはいえ、感想は書き残しておきたい。そう思ったので記事にすることにしました。3冊とも、出会えてよかったと思える素敵な作品です。

すべて忘れてしまうから/燃え殻

今まで400記事以上もnoteに文章を書いてきたくせに「良いエッセイ」の定義はいまだに掴めていません。いや、正直なところ「エッセイ」ってなんなのかも、わかってないかもしれない。

そんな自分の足りない部分をうめてくれるような本が読みたいと思い、手に取ったのが『すべて忘れてしまうから』でした。燃え殻さんの実体験を基にしたエピソードが、短編的に並んでいます。

冷静に考えると「濃いな」と思うエピソードも多いものの、読んでいると、そうは思えないような軽やかさがある。自身の過去を遠くからぼんやり眺めているような文章に、読みながら心地よさを感じていました。

でも案外、自分もそうなのかも。当時は「濃い出来事」と思っていても、時が経てば、いずれ忘れてしまうほど軽やかなものになる日がくる。

だからこそ、書き残すことには意味があります。熱量を帯びた当時のまま言葉にするもよし。時が経ってから、時々ふと思い出しては、遠くから眺めて見えた過去に、新たな意味や解釈を加えるもよし。

エッセイの定義は相変わらず難しいままだけど「書き残す」ことの価値だけは、この一冊を読んでいっそう明確になりました。

会話を哲学する/三木那由他

「会話が得意」と思ったことは、人生で一度もありません。でも、会話自体は好き。会話について分析した本なら、ぜひ読んでみたい。『会話を哲学する』というタイトルを目にして、そんな気持ちが湧きました。

会話の形は多種多様です。関係性、状況、文脈、選んだ言葉、言い方。さまざまな要素が複雑に絡み合って生まれる会話が持つ意味には、どんな可能性があるのかを、有名作品の一節を例示しながら解説していく内容です。

ひとりではなく、誰かと交わすものだからこそ、簡素な一言でも、真逆の言葉を選んだとしても、真意が伝わったりする。会話がいかに高尚な営みであるかがよくわかる一冊です。

大袈裟ではなく、読んだ後は、会話や物語に対する見方が変わります。特にドラマや本で(この言葉をここで選ぶということはつまり……)と考えたくなってしまう。そんな新たな視点を授けてくれました。

マチネの終わりに/平野啓一郎

裏表紙では「ロングセラー恋愛小説」と紹介されていました。だけど読み終えてみると「恋愛小説」と一言で片付けてしまいたくないと思ってしまうのが本音です。

蒔野、そして洋子が初めて出会った日から、別れを経て再会するまでの物語。別れの日から再会まで、いくつもの理不尽が振りかかります。

「他人を変えることはできない」2人はそれを悟っていて、とにかく他人からの理不尽に抗おうとしません。そして、大切な相手に対しては土足で踏み込んだり、気持ちを押し付けたりせず、とにかく尊重する。

「未来は常に過去を変えている」と蒔野は言い、洋子もその言葉をお守りのように抱えながら生きていきます。

日々の出来事も、他人の気持ちの受け止め方も、結局は未来の自分次第で変えられるもの。そう信じているからこそ、2人は理不尽な現実も、他者も受け入れようとするのかな、と解釈しました。

始めはそんな2人の生き方を不思議に思いながらも、物語が終わりに近づくにつれて、美しいと感じるようになっていく。自分の人生観にも影響するような、今年読んだ本の中で特に印象的な一冊となりました。


「3冊だからいつもよりちょっと濃い内容で書こう」と思ったら、思いがあふれてきて文字数が多くなってしまいました!最後まで読んでいただきありがとうございます。

12月は読書欲が戻ってきて、いろいろと読み進めています。2022年最後の月は、素敵な本との出会いを思いっきり楽しみたいです。

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