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小さな島の大きな木

小さな町が1つある、ポツンと小さな孤島には、木が一本しか無かった。

長老が生まれるずっと前から、町の緑は大きな木が一本あるだけだった。町の住人は、近くの大きな島から食料を輸入して生活していた。


住民は、大きな木が死んでしまうのが一番の恐怖だった。

住民は大きな木が長生きできるように、木の警備を24時間つけ、毎日肥料を欠かさず与えた。挙句の果てには、彼らはこの大きな木を神格化し、お祈りをする者まで現れた。

彼らはこう呟いた。「今があるのも、神木様のおかげです。」


ある日、鳥が大きな木の幹を突いているのを警備員が発見した。警備員は慌てふためきながらも、鳥を追い払った。

どうやら、大きな島から来た人間が小さな島にやってきて、緑化計画を実行していたそうだ。その影響で、小さな島に虫や鳥がやってきたらしい。


それがわかった途端、町長は激昂し、その人間を役場に呼びつけた。

「そなた、名は何と言う。」

「エリックです。」

「この島で何をしている。」

「この島に緑をもたらしたいと思い、活動させていただいております。」

「ならん。」

「なぜです?」

「神木が貴様のせいで危険な目に遭ったのだぞ。」

「神木?ああ、あの大きな木のことですね。危険な目とはどういうことですか?」

「あの忌まわしき飛ぶ生物が神木を傷つけたのだ。あやつを呼び寄せたのは貴様ではないか。」

「…鳥ですか。緑化計画が成功すれば、動物や虫がこの島に戻ってきます。あの木を守るだけじゃダメなんです。」

「うるさい!!!今すぐ立ち去るのだ!!!!」


エリックは、ニヤリと笑みを浮かべた。

「でしたら、生き物を呼び寄せずに緑化計画をする方法をお教えしましょう。」


エリックはカバンからスプレー缶のようなものを取り出した。

「これを島の至るところに撒けば、生き物は寄り付きません。そうすればこの島は、神木を傷めることなく自然を豊かにすることができます。」


町長はこのスプレーを大量に購入し、それと同時に、この緑化計画を町の人間に引き継ぐようエリックに要求した。エリックは了承し、大きな島へと帰っていった。


このスプレーを撒いてから数日。虫や鳥は小さな島から姿を消した。さらに、町の人間が一丸となって緑化計画を続行したため、1年後には緑豊かな島となった。


大きな木は思った。「この島は、もうおしまいだ。」と。



その2年後、町の緑は全部死んでしまった。「神木」と崇めた、大きな木も。

スプレーによる土壌の悪影響が、植物にダメージを与え続けた。それだけでなく、鳥や虫が来なくなってしまったため、受粉が起こらず、植物が増えなかったのだ。




大金持ちになったエリックは、こう呟いた。「今があるのも、神木様のおかげです。」



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