③ 彼のメールについて

彼は独特の文面のメールを送ってくる。

そもそも、やり取りは、某SNSのメッセージだ。
私は彼がSNSにログインしている時を狙ってメッセージを送った。
毎日、毎日。
決まった時間に、一日2回。
朝と、彼が寝る前の時間。
朝は、おはよう、まだ寒いね、とか、晴れてとてもきもちがいいね、とか爽やかなやつ。
夜は、それこそ思いつく限り、自分の出せるもの全部出して、時間をかけて文章を作り、送った。
それもこれも、全て彼の気を引くためだ。

ある日は、続きが気になるオリジナルの物語仕立て(主人公は、ダーティーハリーな彼だ)のプロローグ、ある日は、いろは順に彼の好きなところを羅列した。そしてある日は、おやすみ、とただ一言。
全部計算していたつもりだ。
どう転んでもこっちを向いてくれない彼に、少しでも気にかけてもらうための苦肉の策。
毎日毎日メールが来てたのに、ある日から急にメールが来なくなったら、嫌でも気になるという心理?を利用しようと考えた。
本当に、何ヶ月も毎日メールした。

彼から何か返事が来るのは、10回に1回くらいだった。
彼のSNSのログイン状態を観察していると、私がメッセージを送って彼が読んだであろうタイミングで、急にログインが途絶えることが多かった。
身を隠してるつもりなんだろう。読んでないフリをして。

彼が送ってくるメールだけど、基本的に、彼の言葉は書かれていない。
というのは、普通は朝なら「おはよう、4月なのにまだ寒いね、風邪にきをつけてね」とか、普通の恋人ならそんなメールをすると思う。
でも、彼の場合、もしも「風邪ひくなよ」と言いたいとしたら、ちょっと面白い風邪薬のCMとかをYouTubeで見つけてきて、そのURLを貼り付けただけのメールを送ってくる。

最初は、私もなんの事だか分からなかった。
そのうち、これは彼の思いなのだ!と気がついた。

「風邪ひかないようにね」と文字で送ってくるのと、
風邪薬のCMを見つけてきてYouTubeのURLをメールしてくるのと、どっちが心がこもっていると感じるか?
もちろん文字の方だが。

ひょっとしたら、彼は最大限に気遣いをしてくれていたのではないか、と今になって思う。
口に出しては言わないが、実は心配しているんだよ、というダンディな態度を、その変なメールで表現していたのではないか。
いちいち、女に「メールありがとう」「嬉しかったよ」などと返事するのは、彼の美意識に反している。

まあ、本当に私からのメールがめんどくさかったのかもしれないけど。
知らんけど。

とにかく、彼のメールに書かれているのは、
YouTubeやサイトのURL、
または
顔文字一つだけ
または、暗号めいた
「〇日〇時○○」
という、待ち合わせの指示だった。
もしも普通の人なら、「今週の土曜日は都合どうかな?〇時に○○駅で待ち合わせで大丈夫?」となるだろうけど、彼は絶対に私の都合など気にしない。

とにかく、彼は、自分の言葉では伝えてこない。
YouTubeのURLや、サイトのURL、某掲示板で有名なAAとか、そういう物に代弁させる。

私は、彼は面倒だからコピペで済むURLをとりあえずメールしてきてるんだと思っていた。
どうなんでしょうね。
わかりません。
でも、面倒なら、わざわざURLでもメールしてくるかな?と、いいように受け取って、私はせっせと毎日メールしていたのであった。

今日はこの辺で。
それでは。

#モラハラ彼氏 #モラハラ #恋愛 #過去日記 #日記 #エッセイ #独白 #変な彼氏 #依存 #よくわからない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?