見出し画像

「好き」の定点観測

「お誕生日プレゼントは、当日もらえなくてもいいの?
 だったら、今年は筑波山に上りたい!」

2月生まれの次女が、間もなく8歳になる。
数年前から、誕生日の前になると自分の希望をはっきり伝えてくるようになった。

近所のカフェのカウンターに張り付いて仕込みの様子を観察するのが日課だった5歳の誕生日は「スタッフさんが使っているのと同じレモン搾り器」。尖ったお椀を伏せたような突起に半分に切った果実の断面を押し付けて搾る、アナログなあれのこと。結局、1回搾っただけだった。お姉さんの日々のがんばりを実感できたらしい。

ギリシャ神話と星座に夢中だった6歳は「星の本」。一緒に贈った天体望遠鏡でついに土星の輪が観測できた2022年9月3日は、我が家の「土星記念日」だ。

7歳を迎えた昨年は、学校の教室で休み時間ごとにリピートしていた「ことわざかるた」。幼い顔にそぐわない言い回しが会話の中でポンポン出てくるようになって、家族が諭される頻度がやたらと上がった。

間もなく迎える8歳の筑波山は、秋に達成した高尾山登頂のステップアップとしてだろう。自信を手にしたのが見て取れる。

シンプルな潔さに、なんだか胸を打たれてしまった。年に一度のチャンスだからできるだけ高価なもの、とか、プレゼントっぽい華やかさ、とか、そういう邪念がない。いや、決して欲がないわけではないんだよ。ケーキを半分こなんてときには、腰を低く落として獲物にとどめを刺すかのような目線で2つの皿を見比べるくらいには欲深い。けれど、つまりはそういうことだ。今欲しいものに、真剣でまっすぐなのだ、きっと。”やりたい””ほしい”を自分の手でしっかり捕まえている。

誕生日は「好き」の定点観測の日。去年と全然違っても、明日興味がなくなってもいい。その時の”好き”を胸を張ってぶつければいい。あなたにも私にも、毎年必ず巡ってくる日。自分が主役の日。他の人に有無を言わせない日。

20240129

▼ Essay Magazine「手帳の隣でコーヒーを」
手帳とともに40代の「じぶん実験」を楽しむライター・矢島美穂が綴るエッセイです。日々の記録や記憶が詰まった手帳のひとかけらを、コーヒー片手にじっくり眺めてみます。

原稿用紙2枚程度の、ささやかな文章を不定期に更新中です。
お読みいただく時は、ぜひあなたの隣にも一杯のコーヒーを。カップの底が見えるころ、あなたの景色が少しだけ新しいものになりますように。


#ライター
#手帳
#手帳術
#手帳タイム
#手帳の使い方
#手帳の中身
#手帳好き
#自分軸手帳
#エッセイマガジン
#手帳の隣でコーヒーを


最後までお読みくださりありがとうございます。SNSで感想・シェアを頂けたらとてもうれしいです(必ず読みに行きますね!)。いただいたサポートは、noteコンテンツにつながるような書籍購入に使わせていただきます。これからも気軽に遊びにいらしてくださいね!