見出し画像

【My Story#7】十億ってなんですか?

パソコン事業部に異動して3〜4年ほどたつと、パソコンは急速にコモディティー化して、価格競争の時代に入りました。DELLの出現で、メーカーが直接エンドユーザーにパソコン販売をする、ダイレクト販売がはじまりました。

マーケティング部門に、セールスとしての役割が求められるようになりました。一台でも多くのパソコンを直接ユーザーに売ることが、私が所属していた部署の、新しいミッションになりました。

私にも十億超えの売上目標が降りてきました。1台25万円のパソコンを、いったい何台売れば十億になるのでしょうか? もともと営業職だった同僚たちは、数字ありきの世界があたりまえのようでした。私は、ふり分けられた巨額の目標が、自分ごとと思えず、途方に暮れました。

それでも、この時にとても大切なことを学びました。それは、ビジネスとはなにかということです。

自分の好き嫌いにかかわらず、売上目標は上から与えられます。途方もなく大きく見える数字を眺めていると、とても達成できるとは思えなくて、身動きがとれません。どこからどう手を付ければよいのか、わからないのです。

でも、ゴールの数字から逆算すれば、四半期ごとに何台売ればいいのかがわかります。そしてキャンペーンの企画を立て、作業をタスク単位に落とし込んでいきます。ここまでくれば、具体的に何をすればいいのかがわかるので、行動できるようになりました。

どんなビジネスでも、安定した収益を出すためには、数字へのこだわりが必要です。具体的な数字があるからこそ、それを達成するための方法を、頭を絞って考えます。クリエイティビティが生まれます。数字にこだわることがなければ、どんなビジネスも成長しない。こんなあたりまえのことに、30歳を過ぎてようやく気づいたのです。

また、スプレッドシートのスキルが格段に向上したのもこの時期です。システムエンジニア時代にデータベースのデザインをしていたことがあったので、現実世界をデータ項目に落とし込むことが好きでした。パソコンのマーケティングでは、現実世界を数字に落とし込んで見ることのパワフルさを知りました。

数字はビジネスの共通言語。数字に基づいて話をすれば、有意義なディスカッションができて、意思決定もスムーズです。逆に数字がなければ、ディスカッションは混迷して、大きな判断ミスにもつながります。数字を通してものを観る楽しさに出会えたことは、その後の人生に大きく影響することになりました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?