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父と娘の珍介護道中(日記的エッセイ2010〜2022) 時々、母のこと、故郷のこと、自分のこと EP12

エピソード12
誰かが生きた証は誰かの記憶の中にある

2012-03-31

午後から東名ぶっ飛ばしーので父のケアハウスへ。
珍しく椅子に座って数独をやっていた。
時間がありすぎてネガティブなことを考えないようにと思い、好きな数独の本を2冊買っておいたのだが、本人曰く、「気づくと熱中しすぎて疲れちゃう」のだとか。性格ですねぇ(笑)。

「よく知っている演歌のCDも欲しい」というので、この日持って行ったら、
かけ始めたそばから、今度は数独をパタリとやめ、歌に熱中。
ひとりカラオケ状態となりました。これがまた止まらない。
それでまた「熱中しすぎて疲れちゃう。ああ、ダメだ」と(笑)。
好きなことに熱中する私のタチは、この人の遺伝子なんだなぁとつくずく。
ま、でも、歌う気力があるということは喜ばしいこと。

2012-05-11

今日は父に頼まれた実家の用がいろいろとあったので大磯へ。
ちょうど、幼稚園からの同級生が大磯のギャラリー「ぶたのしっぽ」で素敵なオリジナルの服の展示会を開いていたので立ち寄った。
どれもこだわりいっぱいの細かくてきれいな仕事がなされた服ばかり。
素敵でしたよ。

「ぶたのしっぽ」は大磯の美味しいとんかつ屋さんとして知られる「はやし亭」の一部。ちょうどお昼時でもあったので、
はやし亭にも立ち寄り「はやしさんちのハヤシライス」を食してきた。
何を隠そう、ここのオーナーシェフ林君も小学校からの同級生なのだ(笑)。

いやー、美味しかったし、お母様をはじめ、家族のみなさんもお元気そうでよかった、よかった。海の見えるテラス席は最高。
もし、大磯に立ち寄ることがあったら、ぜひ、はやし亭へ。あ
の西行法師が、その美しさを「鴫立沢の秋の夕暮れ」と詠んだ大磯の名所「鴫立沢」にあります。

せっかくのなので、今日は後に俳句をやる方たちの聖地のような場所となった「鴫立庵」にも立ち寄ってきた。
地元にいたときは前を通り過ぎてただけだけど、故郷を離れてみると、
ああ、そういう名所だったのだなぁとあらためて思います。

2012-07-06

父の胸にできたデキモノ(何かはまだ不明)の切除手術があったので、その付き添いに、4時半起きで平塚へ。
1日入院するだけなのだが、本人相当緊張していたらしく、
手術を待ってる間も全然じっとしていられない。

ベッドで少し休んでいてくれればいいのに、
「慣れないベッドだから起きる練習をする」と言って自分で起き上がろうとし、
それでなくても痛い腰をどうにかしてしまったらしく、
悲鳴を上げて顔をゆがめたのにはまいった。
もちろん私は、心の中では「ったくもう、何やってんの?」とあきれているのだが、父の不安な気持ちを思うとそうも口にできない。

ま、でも、誕生日が父と同じという担当看護師さんが中心となって明るくお世話をしてくださり、ストレッチャーで無事手術室に向かうことができた。
そして、帰ってきたときは、とってもご機嫌な父でした(笑)。

2012-07-12

昨日は父を病院に送迎。
先週胸のデキモノを切除する手術をし、昨日はその抜糸。
デキモノの組織を調べたところ、特にガンなどではなとのことで一安心です。
じゃあ、何かというと、先生がおっしゃるには、
薬とか食品とかの影響で突然おっぱいの一部が女性化したのだとか。
へーっへーっへーっ! です。
幸い傷もほぼくっついていて心配なし。よかったよかった。

2012-07-21

昨日は、車検から戻ってきた車で、調子よく東名ぶっ飛ばしーので父のケアハウスへ。久しぶりに、大好きな青々とした田んぼ道を通って、実家にも寄ってきた。
母の大好きだった百合の花が、雨の中、また大輪の花を咲かせてました。
母に会えたみたいでうれしい。

寒かったのに、なぜか父はこの日の朝からきわめて熱中症に近い症状に。
顔が真っ赤になって、体温が8度2分まで上がってしまったとのこと。
私が到着したときは、すでに7度2分まで下がって、食欲もあるとのことだったので一安心。

夜、冷房をかけると風がきて咳が出てしまうとのことで、
かけないで寝ていたら、そうなってしまったよう。
お年寄りによくあることとしてニュースなどで言われているまさにその通りの経緯と症状でした。
体温調節がうまくできなくなるんですねぇ。
お部屋の温度管理って重要なんだなと再認識。

2012-08-11

もうすぐお盆。
ずっとご無沙汰している母の実家へ父がお線香を上げに行きたいというので、
車で付き添い。母の兄(私の伯父)はもういないのだけど、
伯母家族がお昼のご馳走を用意して待っていてくれた。

伯父も長い間車椅子だったので、庭先からリビングへリフトで上がれるようになっていて、とても助かった。
父の腰の痛みが心配だったけど、久しぶりに昔話に花が咲き楽しそうだった。
帰り道、母が眠る大磯・善福寺さんの本堂にもお参り(私はお墓のお掃除)。
5、6段の階段を手すりをつかまりながら頑張って昇った父に拍手でした。

今は亡き懐かしい人々を思い出してお線香をあげると、
なぜか気持ちがスッキリする。
誰かが生きた証は、今生きている誰かの記憶の中にある。
それをこうやって共有すると、故人も喜んでくれる気がします。
お盆ってきっとそういう期間なんですね。

大磯はやし亭のはやしさんちのハヤシライスと閑静な鴫立庵


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