見出し画像

父と娘の珍介護道中(日記的エッセイ2010〜2022) 時々、母のこと、故郷のこと、自分のこと EP10

エピソード10
ただありのままの自分でそこに凛と咲く

2011-10-15

GW以来の父の里帰り。
GWのときはヒドい渋滞で予定が大幅に繰り下がるということがあり、父に負担をかけてしまったが、今回も台風なみの風雨。
「美保ちゃんは雨女だからねぇ」と言われてしまったけど、お迎え、送りのどちらも、なんとか雨に降られずにすんだ。
晴れ男の父の勝ち! 異常なほど暖かかったしね。よかった、よかった。
家族全員集まって、大磯のお刺身(勘八すべての部位)をたらふく食べ、楽しくいろんなお話をした。

ちなみに私は、父が大好物な豚肉の角煮を作っていった。
今回は沖縄のラフテー風。
まず、圧力鍋で10分ほどネギとショウガと牛乳を入れてお肉をホロホロにし、一旦冷水で洗って、その後、だし汁と砂糖、醤油、日本酒ではなく焼酎(泡盛ならもっといい)でコトコト2時間ほど煮ました。
その汁にちょっと醤油を足して漬け込んだゆで卵を添えて。
ほしいだけの塊肉が、アメリカン・ポークしかなかったので、ちょっと油っけのない感じでしたが、美味しいと言ってもらえた。
義妹は、美味しいサラダと揚げ物、そして、部屋をパーッと華やかにするフラワー・アレンジメントを持ってきてくれました。

食後には、鴫立亭という大磯で人気のケーキ屋さんのショートケーキのホールを切り分け。
父の里帰りは一つのイベントだし、明日10月16日は、亡くなった母の誕生日でもあるので、そんな演出もいいかなと。
母の存命中はついつい忘れて、ケーキを買うなんてことをしてあげたことはなかったんですけどね。

ケアハウスに戻る前、「久々にお母さんに挨拶していく」という父と、母の大好きな笑顔の写真に「今日は楽しかったよ。お父さんを見守ってあげてね」と手を合わせました。

2011-11-05

昨日はケアハウスに到着した時間に偶然、全職員と利用者との懇談会があって、
よかったらぜひと言われたので、家族として参加してきた。

それぞれに状況の違うご高齢のみなさんが、事前に提出したアンケートに基づき、職員さんの対応から食事内容、館内施設について、
とてもハッキリとした(なかには手厳しいものも)ご意見を述べられている。
感心しました。
職員さんも、謙虚に耳を傾けておられ、またちゃんと期日を決めた対応を約束されていて、家族としては安心できた。

懇談会終わりには、新しく入られた若いコックさんが手作りしてくださったという栗のデザートとコーヒーが出て、ご相伴にあずかってしまいました。
とっても美味しかったです!!

2011-12-06

今日は夜のおでかけのお手伝い。
腰の痛みがだいぶよくなり、1時間ほどなら椅子に座っていることもできるようになった父が、
2年ほどご無沙汰していた詩吟の会のお教室へ行ってみたいとやる気を見せたので、「それなら喜んで~」と車で連れて行った次第。
お教室のお仲間は10人ほど。みなさんとても喜んでくださった。

まずは発声練習。せっかくなので私も参加(笑)。
お稽古は真剣そのものです。
順番にみなさんの吟詠を拝聴し、真打ち登場(?)で、父がひとうなり。
大きな拍手をいただいた。

毎日ひとりで練習しているだけあって、声もよく出ていてなかなかのもの。
「力みがとれて、さらに素晴らしくなった」とみなさんに褒められてたけど、
私も同感だった。
枯れた味わいのよさというものが、本当にあるんだなぁと。

ちなみに父が吟じたのは、新島襄(同志社大学を作った明治の教育者として知られ、ウチの実家のある大磯で静養中に没された)の「寒梅」という詩。

庭上一寒梅
笑侵風雪開
不争又不力
自占百花魁

庭に一本の寒梅がある。風雪を笑うように耐え、誰とも争わず、また力まず、ただすべての花の魁けとなって咲いている。
そんな意味だそう。

ただありのままの自分でそこに凛と咲くという生き方、を詩っていると、私なりに解釈した。
父がなぜその詩を選んだのか尋ね忘れたけど、
きっと今の心境と重なるところがあるんでしょう。

小1時間で先に退出させていただくとき、「みなさんに元気をもらいました」と、父はとてもうれしそうだった。
同じ趣味と向上心を持ったお仲間との触れ合いは、いい刺激であり、心の潤いにもつながるなと。
帰り際、「みほちゃん、先に行って車を暖めておいて」と言ってさりげなく車椅子のお手伝いをしてくださった会のみなさんの心遣いに感謝です。

大磯鴫立亭のケーキと今はない魚浅のお刺身


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?