【フライパン】日本製を大切に販売する理由
三保原屋本店は静岡の家庭用品専門店。創業は1687年といわれています。
1階にはキッチン雑貨や陶器類が陳列されており「専門店」のような品揃えを目指しています。
鉄フライパンも販売していますが、
・健康上の理由から油を多く使うことを控えたい方
・重たいフライパンが持てない方
もいらっしゃるので、テフロン加工・フッ素加工のフライパンも販売しています。
お店は限られた面積ですが、日本製フライパンを大切に販売しているので、今回はその理由をまとめてみます。
※海外製のフライパンが良い・悪いわけではなく、それぞれモノづくりの環境や考え方、役割や戦略の違いによる差があるとご理解ください。
フライパン寿命は「使い方」も大切
また、基本的にフライパンの品質も大切ですが、フライパンの寿命は「使い方」に影響されることが多くあります。詳細はこちらをご覧ください。
超量産に見えるフライパン
一度みなさんに考えていただきたいのが
A.日本製のフライパンをある程度の規模でつくれる会社は、何社あるか??
B.フライパン工場のイメージってどんな感じか??
という質問。
A.ある程度の量を生産できる、日本に工場を持つメーカーさんは、ほんの数社
多くのお客様の予想を下回り、実は、限られたメーカーさんが日本製フライパンの需要を受けてくれています。
B.「工場レーンで、一列にフライパンが並び、すべて機械作業・・・」なんてことはありません。
もちろん危険な作業などは機械化されている部分はありますが、かなり手作業の工程があります。
野菜も工場で出来てしまう時代ですが、
「こんなに量産に見えるのに、こんなことをしているんだ!」
と、思う方が大多数ではないでしょうか。
私も実際に工場に行くまでのイメージと、行ってからのイメージは大きく違ったのが本当のところです。
ウルシヤマさんに聞いてみた日本製フライパンの良さ
ここからは日本製フライパンを多く製造している、ウルシヤマ金属工業株式会社の方に質問したり、工場に行って伺った内容を纏めています。
①アルミの精度
アルミと言っても様々な純度のものがあります。
鉄でも同じことが言えるのですが、信頼できる素材を使うことが、安心・安全の大前提となります。
また、厳密にいえば鉄100%や、アルミ100%という素材は非常に高価(超々高額!!)になり、一般的には1%未満の不純物を含む状態になっているケースが多く見受けられます。
この1%に対しても安全性に責任をもってフライパンがつくられるのが日本製の特徴の1つです。
②品質管理の精度
ウルシヤマ金属さんでいえば、1つフライパンをつくるために13人~15
人程度の方が、それぞれの工程で関わっています。
そして、そのそれぞれの工程での品質管理が高いレベルで行われています。
フライパンの表面にポツっとした穴(ピンホールと呼ばれる)があるだけで、そこから表面加工が傷んでしまうことがあります。
「日本製」という名前だけでなく、実体としても高い品質管理が、継続的に行われているのは、日本の工場の特徴の1つかもしれません。
③テフロンとフッ素の違い
大きくは「フッ素樹脂加工」というくくりになりますが、同一のものではありません。
テフロンとはケマーズ社(旧デュポン社)の登録商標。
製造・販売それぞれにライセンシー契約がありますので国内での製造・販売は厳しいチェックをクリアしたメーカーしかできません。
製品には必ずテフロンシールが貼ってありますので、是非確認してみてください。
よくよく見ると、テフロンのライセンスをとっている商品は★の数でランク分けがされています。
値段は正直・・なことが多い
フライパンをつくるのは手間のかかる作業です。
ブランド料や、宣伝広告費を含めた値段設定がされていない限り、値段は正直なケースが多い印象です。
●材料
●フライパンを製造する際の人件費
●機械等を動かす電気代等
●コーティングの種類
など、必要な要素が決まっています。
原価高騰の波・・
近年の円安・電気代の高騰・人件費の高騰・素材の高騰など、複合的な理由から値上げがなされることもあります。
たとえば電気代・ガス代の高騰1つをとってみても、工場単位では、1000万円単位での電気代UPになっていることもあるそうです。
また、主たる材料である金属は、投機目的に価格が吊り上げられてしまうこともあるそうで、メーカーさん1社でコントロールできるものではないそうです。
このあたりを私たちが完全に理解することは難しいのですが、近年の原価高騰は非常に工場さんを悩ませていると聞きます。
最終的な購入の判断
もちろん、最終的に品質と価格のバランスを見て、ご購入いただくかどうかの決定は個人のお客様の判断によりますし、日本製だけが良いということではありません。
小売業の役割
私たち小売業は、商品の品質と、モノづくりの背景をしっかりと理解して、お客様にお伝えする仕事です。
また、品質に見合った価格で商品を提供することも、とても大切だと考えています。
一方で、お客様に「将来も日本製フライパンが購入できる」選択を将来的に提供しつづけるためにも、「お客様には届きにくい情報」を、こうやって伝える役割もあると思っています。
工場の中をちょっとご紹介
以前、ウルシヤマ金属さんに伺った際の写真やお話を用いて、簡単にフライパンづくりを紹介します。
※あくまでも一例です。
①皿をつくる
アルミのインゴット(塊)を溶かし、型に流し込む。
これは鋳物やキャストと呼ばれる製法で、高品質なフライパンに用いられるものです。
驚くのは人の手で1つ1つ型に溶けたアルミを流すこともあるということ。
(アルミを高温で溶かしておくだけでも電気代は相当なもの・・)
この製法でつくられたフライパンは、熱伝導率に優れ、熱ムラがでにくいというメリットがあります。
②整える
製品化に向けて皿を整えていきます。
金属を削るので、キラキラとしたキレイな破片がでますが、不用意に触ると手を切ってしまいます。
また、IHのフライパンは、ここでIHに反応するような部材をくっつける作業を行います。
なお、ここで出た破片は専門業者さんにより、再生アルミとして再利用されます。
③洗う
内部にテフロン加工を施すため、皿を洗います。
脱脂洗浄により油分を洗い流します。
④テフロン加工を吹き付ける
手でテフロンを吹き付けているものもあります。
ウルシヤマ金属さんでは、デュポン社からライセンスを取得して、吹き付けている最高ランクのテフロン(プラチナプラスというランク)も扱っています。
テフロンの塗膜加工は、最終の2層を職人の手(ハンドガン)により施しており、鋳造場の職人同様に最も高い技術が必要とされ、数ミクロン単位の仕事を手によって行っています。
⑤持ち手をつける
最後は持ち手を付けていきます。
フライパンにつける部品の、真ん中で止めるのが結構難しい作業。
ここで失敗してしまうと、今までの経費がすべて無駄になってしまうのでなかなか気を遣う作業です。
おそらく、こういった作業はすべて機械化されているだろうと予想されている方もいらっしゃると思いますが、実は結構な割合で手作業が含まれています。
最後に
フライパンの寿命そのものは、フライパンの品質よりも「使い方」による影響が大きく影響をします。
高くても・安くても
「これのフライパンは大切に使ってみよう」
という気持ちが長持ちにつながる一歩です。
長持ちさせたい方は、是非こちらのnoteもご覧になってください。
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