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傷つかずに生きることは難しいけれど

親指の爪に小さな白い跡が残っているのを見つけた。小さい頃はよくできていたが、最近になっては珍しい。1ミリ程度の、小さな線。この線ができると栄養が足りてないだとか、カルシウム不足だとかいう話を聞いていたけれど、実はそんな悪いものではないらしい。できる理由は、自分でも気づかないほどの小さな衝撃から、なんてこともあるのだという。

テーブルの角にぶつけてしまったり、ドアの間に小さく挟んでしまったり。傷つく理由はそれぞれらしい。その時痛くて気づくこともあれば、後々になって「あれ、傷なんて作ったっけ?」と記憶にないものもある。けれど爪は覚えている。あのとき確かに自分は傷ついたことを。


小さいころの経験がその後の自分に影響を与えるように、身の回りで起こったことは自分の身体や内面に影響する。たとえ自分では覚えていなくても、身体はしっかり覚えているもの。その傷が無自覚にせよ深ければ深いほど、トラウマになったり、外傷として残ってしまったりするのだろう。

知らないうちに傷ついてしまうのだから、生きていくことは難しい。どんな些細なことでも今後生きるうえでトラウマになりうる。傷つけないように生きていくにしても、人と関わりあって生きるのならば、誰かの些細な一言に一撃必殺を受けてしまうこともあるだろう。

この世界はどうしてこうも生きづらいのだろうか。ほんの些細な白い跡を眺め、絶望さえもよぎった。


けれど、小さい頃たくさんできていた白い傷は、今はもう無くなっている。きっとこの傷も、爪が伸びてどんどん上へとあがり、やがては爪切りによって切られていくだろう。そうなると私は、今この瞬間に白い跡があったことなんて全く思い出せなくなるのかもしれない。

些細なことで傷ついてしまうかもしれないけれど、時間をかければきっと、ゆっくり治っていくものなのだ。

傷つかないように過ごすことは難しい。できないことが増え、何のために生きているのかわからなくもなる。それなら傷つくことは前提で、もしそうなってしまった時に治す方法を考えておいたほうが、"生きづらさ"は解消されるのかもしれない。

去年の毎日note


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