見出し画像

何者にもなれない今の私〜潜在保育士

数年前に報道で子どもへの虐待が大きく報道されていた頃、子育ての中で何故そのような悲惨な虐待が起こるのか、どのような状況が重なってそのような事態になってしまうのかと心を痛め、
児童相談所のこと、一時保護所のことに関する書物を読み漁り、世の中どうなってるんだと、憤りと悲しみに包まれました。

そんな中、私に少しでも出来ることがないかと考え、Twitterの中で密かにささやかれる児童養護施設で暮らす少年、少女達の本音、叫びを見て、この現実を世間の中のどれだけの人が知っているのだろう、と思いました。そして、個人的な個別の支援を自分に出来る範囲で初めました。(直接会ったり、LINEで相談を受けたり電話したり、支援品の調達、時には警察と関わったりなど)それから、彼女達が暮らしている児童養護施設がどんなところなのか、社会的養護を仕事として居ないことに何の説得力もないと思い、最寄りの児童養護施設の職員として働きました。(それ以前は、ボランティアで別の施設に通ったことがありました。そこから数えるともう10年以上経つかもしれません。)

私が、社会的に養護されなければ生きられない子どものことを考え出したのは、20代の前半です。幼少期早くに父を亡くした私にとって、施設と言うところは、そう遠い世界のものではなかったです。父が呆気なく水の事故で亡くなったのを目の当たりにし、人は簡単に突然この世から居なくなることがあるのだと体験しました。それから、あとはこの母がもし居なくなったら、私は施設と言うところで暮らさないといけないのかな、と言う漠然とした不安を抱えていました。また、当時、母との相性はそれ程良くありませんでした。経済的負担を抱えることになった母にとっては、それはごく当たり前の日常だったと思います。私は甘ったれていたのかもしれません。ですが、甘える場所を突然失い、喪失感を生まれて初めて実感しました。私の子ども時代は10歳を以って終わったと思います。それ以来、母に心を許すことはなかったように思います。甘えることも出来ませんでした。

そんな孤独感を抱えて生きて来たので、親元から離れて何らかの理由で一時保護所に預けられる子どもの気持ちを考えるといたたまれない思いがしました。中には一時保護所の方が居心地が良い子ども、児童養護施設で育つ方が安全な保護されるべきだった子どもも多いことでしょう。でも、保護されたとしても、都心部の一時保護所の実態を書物で読んだり、実際にTwitterで少年少女たちの心の叫びを目の当たりにする限り、そんな現実があるのも事実なのだとリアルに知りました。この子どもたちに何も罪はないのに・・・。

ある時、一時保護所の職員の求人募集を見たら、応募資格の中に保育士資格というものがありました。それが46歳の時です。
それから独学で3回受験し、保育士資格を取りました。

ひとまずは、認可保育園で、今の保育の実態を学んでみたいと思い、保育士になりました。現状は一言では言えませんが、保育園の中でさえ、今で言う不適切な保育、虐待とも取れる実態が日常的にありました。また、発達障害の子どもに対する対応にも疑問を持ち、個人的に勉強し、発達支援サポーターの認定資格を取得しました。2年で、別の保育園に転職するも、同じような状況でした。

私の問題意識は様々な方向へ向きました。
児童養護施設に入る前に何とか家庭内虐待そのものを止める動きが必要なのは当然だし、保育園の意識も変わっていかなくてはならない。国の進める子育て支援の意味に当時は希望を持っていました。

今、地元に戻って、認可保育園を1カ所経験した後、体調を崩し、今は自宅療養中です。基本、元気ではありますが、更年期のため時々鬱症状が出ます。睡眠は浅く、朝も弱いです。
46歳に保育士の資格を取る頃に感じていた自分の中の熱意が空回りして、どこへ向かうこともなく今は地面に着地しています。
今後、どのように進んでいくべきか、実は懲りもせず認可保育園への転職を試みましたが、2カ所内定を頂き、両方辞退しました。
今の私では、取り組めないと感じたからです。

これが正直な今の現状です。
もうすぐ数年前に20歳で亡くなった少女の命日が来ます。
一生懸命、生き抜いた女の子です。
私はここ数年に起きた色々なこと、関わって来たたくさんの子ども達のことを思うにつけ、前に進めなくなっています。
生きてさえいれば、人生は変わる、と綺麗事では言えます。
ですが、虐待され、心身ともに傷付けられた少年少女たちの心は癒えることがない、そんなことも往々にしてあるでしょう。

社会的養護の現場で実際に子ども達に寄り添い続けていらっしゃる方々には、心から敬意を称します。そして、実際に施設での育ちを経て、立派に社会で活躍されている当事者の人たちのことも知っているし、心から称賛しています。

現在53歳、更年期を抜けたら私は、また元気に自分のあるべき姿を追うことが出来るのでしょうか。
自問自答のここ数年、全てに無駄はなかったと思っています。
ただ、現時点で、自分の中に熱意の灯火が消えてしまうのが、少し怖いです。
何者にもなれていない現在の私です。

読んで下さってありがとうございます! 励みになります。