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他業界から見るフィットネス業界の課題、人材への投資で企業と人は大きく変わる

通い放題のパーソナルジム 「ELEMENT(エレメント)」。2019年12月のオープン以来、月額39,800円で通い放題のパーソナルジムブランドとして、多くの会員様の「運動の習慣化(※)」定着に向けた体づくりをサポートしてきた。

昨今、消費者の健康への関心の高まりなどを理由にフィットネス業界は急成長しており、この業界で働く人口も増加している。しかしながら、このフィットネス業界は他業界と比べると、トレーナー個人の市場価値を向上させるための教育システムや人事制度が整っていない企業が多いという。今回は、ELEMENTを運営する株式会社MIGRIDSのCEOとCOOが「フィットネス業界におけるトレーナーの市場価値」をテーマに課題やELEMENTとしての考え方について議論してもらった。

※「週2回以上、1回30分以上、1年以上、運動をしている者」

厚生労働省

ビールメーカー、証券会社出身の二人から見るパーソナルジム業界

インタビュアー澤田(以下 澤田):まずはお二人のこれまでの経歴を教えてください。

CEO 鈴木太郎(以下 鈴木):大学卒業後、新卒でビールメーカーに入社し営業を行っていました。20代半ばでビールメーカーを卒業してからは、ずっとフリーランスとしてWebメディアを作ったり、Webマーケティングを行ってきました。

そして、20代後半で独立し、このMIGRIDSを立ち上げました。現在はパーソナルジムの運営だけでなく、宿泊事業やメディア事業なども行っています。

COO 森太一(以下 森):私は、新卒で国内証券会社に5年弱勤めており、金融に関して多くのことを学びました。その後、このスキルを生かしてインバウンドメディアを運営するスタートアップにジョインし、経営を行っていました。経営に足を踏み入れたのはそこからですね。

そこから独立して、スタートアップ企業の上場の支援などを支援を行っていましたが、鈴木から声をかけてもらったことをきっかけに2022年3月からMIGRIDSにてCOOを担っております。今回お話する、教育システムや人事制度は、私が中心となって構築しました。

澤田:これまでいた業界と比べてどのような点にギャップを感じましたか?

鈴木:パーソナルジム業界の雇用形態は「業務委託」の方が多いという点です。現在ELEMENTのトレーナーの多くは正社員ですが、創業当初は業務委託の割合が高かったですし、他の企業を見ても社員はほとんどいなくて、業務委託やアルバイトの方が現場を回していることが多くあります。

業務委託の方が多いことの課題点として「その人たちをどう評価するか」ということの難しさだと考えています。予約率やセッション数などの基本的なアウトプットだけでしか彼らを評価することができず、彼らの人間性やビジネススキルなどを加味して評価ができないことに課題を感じていました。

正しい評価をしてあげられないことから、トレーナーがなかなか定着せず、すぐに退職してしまうということが頻繁に起きてしまいました。結果として、お客様も信頼していたトレーナーのセッションが受けられなくなることから、退会してしまうという悪循環が起こっていましたね。ですので、このパーソナルジム業界ならではの雇用形態には大きな課題を感じました。

CEO 鈴木太郎

森:僕は、雇用形態についてのこだわりはあまりなかったのですが、鈴木に「今後、会社の規模を今以上に大きくしていき、幅広い事業展開をしていきたい」ということを聞いたときに、メンバーの会社へのコミットメントをいかに増やせるかが大切で、メンバーの正社員化がキーポイントになると感じました。

業務委託ですと「業務」を委託しているわけですから、決まったことをお願いして実行していただくことになります。しかし、現在のELEMENTのように会社を大きくするフェーズになったときには、お客様にセッションを提供するといった決まった仕事以外にも目を向けて動いてもらう必要があるのです。つまり、「仕事」を頼んでいきたい。「業務」と「仕事」は明確に別物であると考えています。そうなったときに、やはり正社員を増やして会社としてのミッションやビジョンを共有した上でやっていくべきであろうと思いました。ですので、現在のELEMENTでは、正社員を増やしたり、新しい人事制度を構築しています。

トレーナーが「セッションだけできる人」にならないために

澤田:現在のパーソナルジム業界の教育・人事システムは、雇用されているトレーナーにとってどんな課題があると考えますか?

森:現在の業務委託を中心とした雇用を行っているパーソナルジム業界では、セッションを中心に行うメンバーに対して、ビジネススキルの教育機会を設けている企業は多くないと思います。そうなると、彼らは「セッションだけができる人」になってしまうのです。

この業界って他の業界と比べると平均年齢が非常に若いです。18歳からこの業界に入る方もいるので、平均年齢が25歳前後とかになるのではないでしょうか。そんな若い方が、パーソナルジム業界から他の業界に転職を考えたとき、彼らはセッションの知識しかないため、結果として、パーソナルジム業界以外の選択肢を選ぶことができなくなってしまうのではないでしょうか。

現在パーソナルトレーナー業界に従事している人の中には、他の業界で活躍してみたいと思う方も多くいると思いますし、そういう気持ちが湧き上がってくることも当然であると思います。そうなったときに、きちんと社会人としての思考やスキルを育ててあげることが会社の使命だと思っています。ですので、ELEMENTでは、他業界に転職したとしても、第一線で活躍できる人材を育成しよう、というところが現在の人事制度の根幹にありますね。

COO 森太一

澤田:セッション以外の業務とは、どんなことがあげられますか?

鈴木:社内向けの資料の作成や、店舗の業績などの数値を見る業務、適切に報連相が行えるか、ミスやインシデントが起こった際にどういうレポートラインをもって上長にあげていくかなど、多岐にわたります。他の業界では当たり前に行われていることだと思いますが、この業界では、できる方があまり多くないと感じました。

ですので、そういった点が出来るようになると、他の業界を志望したとしても社会人として一人前に働いていけるんじゃないかと思います。ここまでは、ELEMENTとして、責任をもって育てていこうと考えています。

従来のスタンスを崩さないことで、フィットネス業界を待ち受ける未来

澤田:従来の業界の当たり前を脱却しないと、フィットネス業界はどうなってしまうと思いますか?

森:今後ますますフィットネスの重要性が高まり、フィットネス業界はさらに成長していくと考えています。そのため、トレーナーを大切に扱い、育てていく仕組みを作っていかないと、圧倒的にフィットネス業界で従事する人材が足りなくなってしまうのではないでしょうか。

ただでさえ日本の労働人口が減り続ける中で、フィットネス業界全体として、優秀な人材を育てる基盤が整っていないと、この業界を志す人が少なくなってしまい、フィットネス業界が廃れてしまうと感じています。そのため、まずELEMENTでは積極的に人に投資して会社を成長させて、そのメソッドを業界に伝播させていきたいですね。お客様が求める価値を提供できるようになりますし、結果的にフィットネス業界もさらに盛り上がっていくのではないでしょうか。

澤田:人材に投資し始めたELEMENTでは、何か変化がありましたか?

森:ELEMENTでも人材に投資し始め、評価制度を入れることでメンバーの意識はかなり変わりました。メンバーは、行動指針やバリューをもとに議論が展開されるようになりましたし、自分の主観で話をするのではなく組織として議論ができるようになりました。例えば、ELEMENTでは「批判と提案は必ずセットでもってこよう」ということを文化として大事にしており、メンバーにも言い続けていますが、これについてはメンバーの努力がかなりみられています。

全社会の様子

鈴木:私も変化をとても感じています。まず、数年前のELEMENTに比べ、現在のELEMENTは、組織として本当に大きく、強くなりました。業務委託中心だった組織から、正社員に雇用形態を切り替えて活動してくれるメンバーが多くなっていますが、モチベーションが高くて、店舗のために「どうしたら売り上げが上げられるのか」「どうしたらビハインド分を補えるか」という議論が、我々経営陣がいなくてもメンバー間で行われています。まだ、20代前半のメンバーからもそのような発言が生まれていますので、人材に投資し続けた結果を感じられています。

人材への投資をすることでフィットネス業界がどう進化するか

澤田:人材制度が整えられていくことで、フィットネス業界はどう変わると思いますか?

鈴木:1つの企業に定着する人が増えると思います。フィットネス業界に属する企業には大小ありますが、店舗数が多くてもお伝えしたような人事制度がない企業はまだまだ多いと聞きます。その結果、トレーナーだけでなく顧客離れが起こってしまい成長速度が上がらないと思いますので、それを解決するためにも、企業で働く納得感や満足感を得るための働く制度を作る必要があると思います。

森:経営者の役割として従業員の成長を喜んでできるかというところは大切だと思います。それができるのが企業だと思いますし、メンバーとともに成長することは楽しく喜びを感じるものですので、売上をあげることとは違ったやりがいを感じられるようになるのではないでしょうか。

経営は、とても大変ですが、そういった点に経営の面白さを感じてもらえるようになることで、売上や利益を上げていくこと以外の、モチベーションの1つとなることで良い循環が生まれると思います。ELEMENTでは、メンバーの成長を強く感じていますので、ぜひ皆さんにも実践していただきたいですね!

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