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経営コンサルが実活用する売上向上策の切り口

個人的には生産性向上やコスト削減系の仕事よりも、売上高を向上させる方がワクワクするし、新規事業の立ち上げの方がテンションは上がる。きっと難易度が高いし、前向きな話だから楽しいのだろうと思う。

個人の経験を振返ると、難しかったけど、楽しかったのは、ある自動車ディーラーでの「新車受注台数を増やす」というプロジェクト。しかも数ヵ月で。高級商品で、且つ新車を購入したことがないメンバーだけだったのでチャレンジこの上ない。しかもリコール続きでブランドが棄損しているという逆風の中で。それでも、様々な施策を考案し、施策を打ちまくり、短期間で受注台数も大きく伸ばした(下図参照の太線が対象エリア、黒字が平均値)。しかも、その後も継続して。

販売台数

その時に実施した主な施策は約10個(覚えている範囲で)。これまでの常識を疑った施策やこれまでやってきた施策の徹底も含めて、やれることは全部実施した。

売上向上策

売上5原則と施策の視点

売上向上策を検討する上で参考にしたのが、他業界での取組み。そっくりそのまま使えるものはほぼないけども、着眼点・発想の仕方は極めて参考になった。意外にも他業界で上手くいっている取組みというのは、当該業界では知られていないものである。

この経験をきっかけにして、世の中の事例や着眼点を収集し、纏めてみた。基本的な纏め方としては、”売上5原則”。それを因数分解し、それぞれに対して施策検討の視点を整理している。新規顧客を増やすための施策と、既存顧客の流出を防止する施策、商品単価を上げる施策は異なるので。

・売上高=顧客数×顧客単価

・顧客数=(①新規顧客数ー②既存顧客の流出数)×③購買頻度

・顧客単価=④買上げ点数/回×⑤1商品当たりの単価

この5つの要素に対して、施策の視点を整理している。多くのベースになっているのは佐藤義典さんの書籍やメルマガだけども、そこに私なりの表現や事例などを加えている(下図参照)。

売上向上施策

売上向上策を考えるときに、この視点や事例を眺めながら、「あ、こういう施策もあるな」とか、「そのまま使えないけど、この発想は使えるな」というのをひたすら考えて実践してきたモノなので、きっと一つや二つは参考になる視点があると思う。

新規顧客を増やす視点

①ターゲットを拡大する:新しい商品や魅せ方をすることで、新たなターゲットを発見する(例:ワークマンの作業着から、アウトドアやスポーツ、レインウェアへの拡大)

②用途を拡大する:新しい使い方を提案することで、新しい顧客に訴求する(例:3Mのシルエットノート。オフィスでのメモから冷蔵庫やパソコンに貼る使い方を提案)

③付加価値をつける:”新しい嬉しさ(=付加価値)”を新しい技術や商品で実現する(例:西川農園のお手紙メロン。3Dプリンターを活用して、メロンにメッセージを入れる)

④インフルエンサーを活用する:インフルエンサーが持つコミュニティに、インフルエンサーの共感を得てアプローチする(例:ブログ、Youtube、オンラインサロン等)。美容系や健康系はその領域のインフルエンサーがいて、そのフォロワー(特に熱狂的なファン・信者)がいるので、インフルエンサーから発せられるメッセージで売れ行きは大きく異なる。

⑤アンバサダーを活用する:熱狂的なファンを大使(アンバサダー)にすることで需要を喚起する(例:ネスレのネスカフェアンバサダー)。要するに、熱狂的なファンによる営業・口コミ活動を体系的に支援する仕掛け。

⑥購入障壁を低下させる:購入を妨げる要因を取り除くことで、新たな顧客を誘導する(例:エアウェーブの寝具。高額な寝具をレンタルで試してもらうことで、良さを体感してもらい、新たな顧客を獲得)。要するに、買わない理由を潰すことで、買いやすくするアプローチ。

⑦ベネフィットを訴求する:商品やサービスによる便益(ベネフィット)を明文化して、ターゲット顧客に訴求する(例:本絞りチューハイ、B2C向け商品をB2B向けにアレンジし、導入することで飲食店のチューハイ提供スピード・コストの改善を訴求)。ちなみに、ベネフィットは機能的便益・感情的便益・自己表現的便益の3種類に分かれる。

⑧インサイト/ユーザーイン:消費者のキーインサイト(深層心理)を捉えて、商品・サービスを開発する(例:パナソニックのポケットドルツ、アイリスオーヤマのなるほど家電等)。キーインサイトは消費者自身も気づいてないことが多いので、消費者を観察するエスノグラフィー手法を活用するのがおススメ。

⑨買い手と利用者を分ける:ユーザーとバイヤーが異なることに目をつけて、ギフト需要を創出する(例:ランドセル、ヘアカラーギフト、絵本「エントツ町のプペル」等)。特に富裕層や高齢者は自分への消費よりも、誰かに貢献したいという欲求が強いので、この層に支えるギフトは有効。

既存顧客の流出防止の視点

⑩機器を設置する:お客さんの活動をする場所に機器等を置いて、接触・補充をする。あの「富山の置き薬」的なやり方(例:グリコのオフィスグリコ)。いわゆる、家庭やオフィスの”お座敷”に上がり、そこから使った分だけ支払ってもらうという手法。一度”お座敷”に上がると定期的にコンタクトできるメリットがある。

⑪顧客を交流させる:ユーザー同士の交流の場を設けることで、顧客の流出を防止する(例:ヤッホーブルーイング・ビールインベント「超宴」)。顧客同士が仲良くなると、その商品・サービスを使う理由が一つ増えますね。

⑫人質を取る:ボトルキープなどの人質(表現はあまりよくないですが)をとることで、顧客の再来店を促す仕掛け(例:吉野家のデジタルボトルキープ、コストコの会費、ディーラーのタイヤ預かり等)。会費を払っていたり、ボトルを置いていると他の選択肢よりも優先度が上がりますね。

⑬コミットメントを促す:相手のコミットメントを引き出し、顧客流出を防止する(例:ハウステンボスやUSJやディズニーランドなどの年間パスポート)。先払いをしてもらうことで利用せざるを得ない状況を作り出す方法。

⑭記念日を考える:〇〇の日と位置づけて、話題性を喚起したり、お客さんの誕生日を祝うことで、流出を防止する(例:江崎グリコのポッキーの日、肉屋の29<にく>の日等)。

⑮ライフステージを考慮する:ライフステージに応じたサービスを提供することで、顧客の囲い込みを行う(例:ベネッセのこどもちゃれんじ)。子供やペット等の成長に合わせて、異なるサービスラインナップを用意しておくアプローチ。

⑯セミカスタマイズ化をする:お客さんの自分好みの商品を選択できるようにすることで、顧客流出を防止する(例:サブウェイの好きなパン・野菜・トッピングを選べるようにする)。オーダースーツもこれに近いところはありますね。

購買頻度を増やす視点

⑰盲点を突く:思い込みを払拭し、新たな需要を発掘する(例:セブンイレブン・夏におかゆ、ハーゲンダッツ・冬アイス)。この盲点をついた企画でバズるとブームの仕掛け人になれますね。

⑱計画的に陳腐化させる:定期的にフルモデルチェンジやマイナーチェンジをすることで、お客さんが所有している商品を陳腐化させて、買い替え需要を促進する(例:自動車やスマートフォン)。

⑲イベントを企画する:イベントを集客の核としつつ、売り場にお客さんを誘導させる(例:コジマのミニ四駆チャレンジカップ)。いわゆる、”客寄せパンダ手法”です。無料のセミナーなんかもこれですよね。

⑳残量を通知する:所有商品の残量が減ってきていることを通知することで、需要を喚起する(例:乾電池やプリンターのインク)。

㉑定期的に注文してもらう:定期注文をしてもらうことで、利便性を上げるとともに注文忘れを防止する(例:アマゾンの定期おトク便、noshの定期便、生協の定期便等)。

㉒期間限定を訴求する:期間限定を謳うことで、希少価値を高めて、購買頻度を高める(例:ハーゲンダッツの期間限定品、マクドナルドの期間限定品)。うちの妻はこれにめっぽう弱いです。

買上げ点数を増やす視点

㉓クロスセル:関連商品を合わせて提案することで、買上げ点数を増加させる(例:アマゾンのレコメンド)。マクドナルドの店員が”ご一緒に〇〇も如何ですか?”もクロスセルの一つですね。

㉔後工程を考える:サービス後のお客さんの行動・ニーズに着目して、新たなサービスを考えるアプローチ(例:ハッピークリーニングの保管サービス、冬物などはクリーニングをした後、保管されることが多いことに着目)。

㉕機会を組み合わせる:同時に使うものをセットにして、価値を高めて、価格を高める(例:節分の豆+鬼のお面、焼き肉+BBQセット、鍋の具材+お鍋セット)。

㉖売れる商品と売りたい商品:売れる商品(低価格品等)を販売することで、売りたい商品を販売する(例:アルパイン、売りたい商品:後席モニター、売れる商品:スペースクリエイター<車内用のカラオケ機器>)。

㉗ゲーミフィケーション:ゲーム性を高めて、買上げ点数を伸ばす(例:くら寿司のビッくらポン)。うちでも、子供達がこのゲームをやるために追加で注文させられてます😿。

1商品当たりの単価アップの視点

㉘言い訳を作ってあげる:買い手の言い訳をつくってあげて、購買することを正当化してあげる。特に高額商品は”誰かのために”という言い訳が効果的に(例:低カロリービール、カロリーを消費するビール)。”頑張った自分へのご褒美”というのもこれに当てはまりすね。

㉙価値ギャップを活用する:顧客にとっての価値と原価のギャップに着目し、高利益商品を開発・提供する(例:居酒屋の冷ややっこ、原価50円⇒販売価格300円)。原価を考えたら、高い値段を払っているケースは結構ありますよね。空港で売っている商品なんかもこれ。

㉚希少価値を訴求する:希少価値を高めることで単価を上げる(例:Spotify、招待制によるユーザー登録)。

㉛高付加価値化を試みる:商品に付加価値をつけて、価値を高めることで商品単価を高める(例:ライザップ、ファクトリエの商品)。下請け的な業界でも、高付加価値化ができると突破口が開けたりしますね。ファクトリエはまさに好事例。

㉜後工程を考える:顧客が購入した後にすることを考えて、新たなサービス・商品を提供することで単価を高める(例:ヤマト運輸・往復宅急便、オーダースーツSADA・しわになりにくい加工)。

㉝見えないものを有形化する:目に見えないサービスを有形化することで有料化や単価アップを図る(例:コンサル・分厚いレポート、機械のメンテナンス・機器の使用料)

総括

売上向上策の検討の視点を共有してきたけども、これに最新事例を加えたり、抽象化して新たな視点を加えていけば、時が経っても使えるものになる。そうしていけば、自分だけの最新の視点・事例集になると思う。

さらに、テーマを変えて、新しいビジネスモデルや新しい働き方の視点なども同様で、「事例」⇒「抽象化」⇒「発想」⇒「具体的な施策」というサイクルを回すことで様々なテーマに応じた成果創出の施策検討に役立つと思っている。

また、機会をみつけて、新しいビジネスモデルや新しい働き方やコスト削減の切り口や事例についてnoteに纏めて共有していきたいと思う。

なお、今回のような資料はオンラインサロン「右腕倶楽部」でフルパッケージで共有してます。ご興味がある方は覗いてみてください。



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