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【季節のおすすめ絵本】2月:音楽のエネルギー

この季節だからこそ、味わいたい絵本、というものがあります。
もちろん、子どもたちが、真冬に水遊びの絵本が読みたくなったり、雪だるまの絵本が好きすぎて1年中楽しんだりする姿も、それはそれで微笑ましいので、あんまり厳密に「絵本を使って季節を教えよう!」とは思わないのですが。
もっと緩やかな感覚で、〈今年も、この季節だなぁ〉とか思いながら、手に取りたい絵本があってもいいよね、という想いで、月ごとの絵本をご紹介していこうと思います。

音楽は1年中楽しめるものなので、季節がある訳ではありませんが、寒い冬、ずっと家の中にいる季節には、音楽の有難さを感じる場面が多々あるように思います。心を安らげてくれたり、楽しませてくれたり、気持ちを強くしてくれたり。

今月は、「音楽」の持つ魅力というか威力というか、そんなエネルギーを感じる絵本を紹介しますね。

ところで、「音楽」というと、楽譜通りに正しく演奏することをイメージするかもしれませんが、それは、少し先の段階です。

小さな子どもたちは、演奏の前に、音楽を構成する要素に、遊びとして出会ってもらいたいと思うのです。

そのうちの1つが「音あそび」。身の回りにある「音」に興味を持ち、耳を傾ける。叩いたり、振ったり、こすったりして、自分でも音を作ってみる。好きな音、美しい音を見つけて、繰り返し聞いたり、奏でたりする。

それから「リズムあそび」。歩いたり、走ったり。わざと左右のテンポを変えて歩いてみたり、階段を下りたり、スキップしたり。手をたたいたり。物と物を打ち合わせたり。身体を動かす時、意識せずとも何かのリズムを刻んでいます。

そんな風に、音やリズムを楽しむことが音楽であり、その音楽をもっと楽しむために、楽器があったり、他の人と合わせたりして、演奏になっていくんだと思うのです。

そんなことを思いながら、「音楽」のエネルギーを感じる絵本、紹介していきます。

まずは、音楽の持つチカラを強く感じる絵本。

わっしょいわっしょいぶんぶんぶん』かこさとし:作 偕成社
1850もの人や動物や道具が登場するそうです。その1850の全てが、「その他大勢」という描き方ではなく、全てに表情があり、命が宿っている、そういう、かこさとしさんらしさが溢れる絵本です。
楽器を使った演奏、道具を活用した音、そして、究極の楽器は人の声であるという気づき。絵本なのに、力強い声が聞こえてくるような気がします。

「音」が、「音楽」になり、人の心に届き、人と人を結ぶ絵本。

ちいさなたいこ』松岡享子:文 秋野不矩:絵 福音館書店
かぼちゃの中から、祭り囃子が聞こえるなんて、どれだけわくわくすることでしょう。言葉を交わさないのに、太鼓があるだけで、気持ちが伝わる様子が、無理なく描かれています。
確かに、太鼓の音って、鼓動と響きあい、そこにいる人たちとの一体感を得られますよね。

グリム童話の中にある音楽と言えば、やはりこの本ですよね。

ブレーメンのおんがくたい』グリム:作 ハンス・フィッシャー:絵 せたていじ:訳
楽隊に入ろうとブレーメンの町を目指すロバ・イヌ・ネコ・オンドリたちの物語。泥棒を追い出す場面があまりにも有名だけれど、この凸凹な仲間たちが集まったきっかけも「音楽」でした。音楽そのものが出てくる訳ではないけれど、音楽がある、ということが、彼らの最後の頼みの綱であり、心の支えだったんだなぁと思うんです。

そして、これまでにも何度も紹介してきた私の大好きな本。

ルラルさんのバイオリン』いとうひろし:作 ポプラ社
ルラルさん、という、ちょっとぼんやりした雰囲気漂うおじさんと、バイオリンのお話。ルラルさんのお父さんは、元バイオリニスト。一方のルラルさんが引くバイオリンの音色は「おしりがむずむずする音」。
ルラルさんのお父さんが「それでいい」って言ってくれる場面がとてもいいんです。「おしりがむずむずする音」であってもいい。音楽には、何か1つの答えがあるのではなく、楽しむ気持ちと仲間があればいい、という気持ちになります。

そして、とっておきの1冊。
たくさん音を楽しんだら、演奏も楽しみたいものです。

はじめてのオーケストラ』佐渡裕:原案 はたこうしろう:作 小学館
世界的な指揮者である佐渡裕さん原案の絵本です。
オーケストラの場面が圧巻です。音が聞こえてくるというよりも、音を聞いた時の心の動きが、鮮明に目の前に広がるのです。
個人的には、主人公の女の子が、きっちりおしゃれをして出かける描写も好きです。オーケストラという特別な場所に、特別な気持ちで出かける、そういう風に、大切に大切に演奏と出会い、敬意を持つという経験も、とてもすてきなことだと思うのです。

いかがでしたか。
音やリズム、そして、音楽や演奏を、ぜひ楽しんでみてくださいね。


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