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ちょっとした一言を見逃さないシリーズ#004 仕事ができる人の他者への陰口

ちょっとした一言を見逃さないシリーズ、第4弾は「仕事ができる人の他者への陰口」です。仕事の処理能力が高い人がいると、チームとしても心強いですよね。ただ自分が出来るけれども、他人に対して厳しい人だったらどうでしょうか。悩ましい話を書きました。

あるスタッフがいました。あるスタッフは鈴木さん(仮)とします。鈴木さんはよく「周りが仕事が出来ない、本当に困る」「私でないとできない」と言う人でした。鈴木さんはその職種では長年の経験を持った人でした。その方が小さな診療所に転職してきました。今日はこの方が主人公のお話です。


知識が豊富な仕事が出来る人が入職

前職では長らくリーダー職に就いていたことから、人をまとめる力があるだろうと判断して、中途で入職してもらった人でした。リーダー職を求めていたので、こちらも大変期待を持っていました。知識が豊富なので、医師とのコミュニケーションも長けていて、信頼が持てるようなそんな雰囲気でした。ただ一つ気になることが出てきました。

「周りが出来ない人ばかりで困る」

次第にわたしにも気持ちを吐露するようになりました。「わたしはずっと他のクリニックで課長をしていました。能力が高いと評価も受けてきました」私はそれを聞いて、確かに仕事ぶりは素晴らしいし、コミュニケーション能力も高い。医師とも難解な症例のケースを話し合い、きちんとした見解を述べることも出来る。こういう人がいると助かると、わたしも思いました。それだけ信頼されているんだと信じていました。しかし、続けてこうも言うのです。「しかしわたし以外がダメですね・・・周りができない人ばかりで困ります」


「あの子にはできない」

しばらく日にちが経ち、あるスタッフがミスをしましたが、特に大きなトラブルにはなりませんでした。事前に気づいた鈴木さんが、「私がカバーしておいたから。こんなこともできないなんて呆れる」と発言しました。このミスが患者さんに影響を及ぼす可能性の高いものでしたので、最小限に抑えられて本当に良かったと、わたしからも感謝を伝えました。その後も言葉が続きます。「人としてどうかと思うんですよね。正直、こうすればいいんだけど、あの人には出来ない。普通はこうするべきだと思うんですが」

苦言のその後

わたしはその言葉を聞いて、以下のように返事しました。「あなたのようにできるようになるために、あの子にも教えてあげてね」そう言いましたら、得意げな顔をして、「いやいや、あの子に教えてもできませんよ。わたしは意識して気をつけていますからできます。あの子はできないので、きっと教えてもダメです」。そして、できない理由をたくさん並べてきました。その後も、別の方に対しても、同じ様な態度が続きました。


単独で動く能力は高い。チームとしては難しい。


自分よりも仕事が出来ない人への思いやりには、明らかに欠けていました。そのため、チームとして動くことはせずに、1人で何でもやってしまいました。そのため、訪問診療という現場での死活問題となる「情報共有」がうまく機能していませんでした。そのため「鈴木さんに聞かないとわからない」という状況が増えてきました。たとえ個人としての能力が高くても、自分がいなくてはチームとして何も出来ない状況を自ら作り上げていたのです。


このような人は、他人の能力を低く見積もる


「あの子にはできない、わたしならできる」という言葉を発する人の特徴として、これに付随して、自分で情報を全ては把握したい気持ちがあるため、自分から情報を他人にシェアする(例えばSNSや電子カルテに情報を残す)作業を疎ましく思ったり、その作業自体を忘れてしまう傾向があります。わたしはできるけど他の人はできないという発言からわかるとおり、わたし以外のヒトは仕事の技術やスキルを低く見積もる傾向が強いです。(確かにこういうことを言う人は、仕事自体はできる傾向があります。そして相対的な評価の中でしか、自分を評価出来ないという傾向もあると思います)そのため、周りも仕事が出来ると評価しているため、他の誰もが、その発言を受け入れざるを得ない状況が生まれます。


共同作業の多い職場では難しい

その後、同じ様な状況が重なってその方は退職しました。理由は自分は能力が高いが、ここではその能力が活かせないというものでした。確かにそうだったと思います。ただ一方では、鈴木さん以外の人たちは、鈴木さんの仕事による恩恵を受けていても、情報の囲い込みがあったり、自分自身が悪口を言われてしまうこともあり、鈴木さんに対する評価は下がる一方でした。鈴木さんは「自分はできる」ということを証明するために、ずっと職位の高い人たちに、自らの功績を伝え、スタッフの評価を下げることを言い続けていたのです。事実に基づく内容よりも、いわゆる「陰口」でした。このようなタイプが、診療所のような小さな組織にいると大きな影響を及ぼします。そして精神的なストレスを生じさせてしまいます。


能力が高いが、人の悪口を言う人への対応


もしもこの職場の事務長(または人事担当)として、またはリーダーとしてこのような人にどう対応したらよいでしょうか。

人手不足の職場で、かつ診療所のような小さな職場であれば、他人と協力する業務が多いため、悪口を言う雰囲気が常態化してしまうと、精神的なストレスをお互いに抱えてしまい、業務に支障をきたすでしょう。その結果、退職のドミノ式が生じる可能性もあります。そうならないためにも、仕事が出来る人には、その仕事に集中出来るように、職場内での役割を明確にした上で、その役割を果たしてもらいましょう。その範囲でもスタッフと協力できないということであれば、職場に居続けるのは難しいでしょう。人間関係が働きやすい職場の必須要件であるというアンケート結果が多いことからも、人間関係が良好な環境にしたいと思うのがリーダーの共通の願いだと思います。

どの様に係わればいいか。3つの案。


個人を排除することで職場環境が良くなるかと思いますが、意外とそうでもありません。実は1人いなくなっても、何も対応しなければ、また同じ状況が生まれます。(これは本当に不思議です)何も手を打たなければ何も変化しない。これは経験知としてあります。では、この場合どこに着手すれば良かったのでしょうか。

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①組織全体の方向性を明らかにする
組織全体が目指す事を明確にして、互いに理解していく時間をとることが一つあげられるでしょう。組織全体が目標実現のために動くことを優先する雰囲気を作っていくことが先決と考えます。

②採用の段階でともに働くメンバーのイメージを決めておく
そうはいっても、共に働くメンバーには、誰かの文句を言うよりも、協力してチームとして動くことを優先できるメンバーに入ってもらいたいものです。そのためには、対策として入職前にそのような傾向を把握するために、面接のチェック項目に入れることも一つです。また組織の人事考課の中で、他人との協力体制をとることが優先順位が高い組織であればなおさら、その項目を評価項目に挙げる必要があるでしょう。

③張本人をプロジェクトのリーダーに据える
お互いに助け合うことが当たり前の文化を作るのであれば、その方にキーパーソンになってもらい、プロジェクトをひっぱってもらうのも良いでしょう。チームで動くときに巻き込みます。間接的にでも協力体制をとってもらうことが、巡り巡って自身の業務を円滑に進められることを実感してもらえればと思います。

もしも、ここまできて協力的で無ければ、また別の対策を。あるいはきっとその方に相応しい別の職場がきっとあるということと思います。


結論「放置せず組織作りに巻き込む。それでも難しいなら別の職場へ」


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