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バスケ界の歴史的統合を機に設立「日本バスケの進化」を目指す Next Big Pivot ~「スポーツの力で社会を変える」事業・活動紹介後編その2~

「スポーツの力で社会を変える」事業・非営利活動の全体像をご紹介するシリーズ、非営利活動後編は、日本バスケットボール界の歴史的統合を機に設立した一般社団法人 Next Big Pivot です。

私が代表を務める3つめの組織の活動は、バスケットボール分野に特化したもので、これまでご紹介した株式会社 Cheer Blossom を設立し Sport For Smile の活動を開始した2010年から5年後に設立したもので、実は若干設立の背景や趣旨が異なります。

というのは、もともと計画していたわけではなく、日本バスケットボール界の歴史的統合という動きに対応して設立したものだったからです。正直なところ、前述の通り、Sport For Smile の活動だけでもそれなりの活動量がありましたので、時間的に余裕もそれほどなく、どこまでのことができるかはわかりませんでした。でも、日本人女性として初めてNBAのビジネス部門に採用頂いた者として、またグローバルバスケットボール界で様々な貴重な経験をさせて頂いた者として、日本バスケットボール界の発展に貢献するために何か行動しなくては、という想いで、活動を開始しました。

少し込み入った話になりますが、日本バスケットボール界の歴史的統合のきっかけとなったFIBAタスクフォースをリードした当時のFIBA事務総長パトリック・バウマン氏は、私の10年来のメンターでした。大学院時代のリサーチ等では大変お世話になり、NBAコミッショナーのアダム・シルバー氏(当時コミッショナー代理)にも「She is voice from Japan!(彼女は日本からの声です!)」と言ってご紹介くださった方です。大学院時代から、日本バスケ界の現状を伝えながら、彼に統合支援を何度かお願いしていた私としては、内政干渉はしないという当時のFIBA憲章を修正してまで日本バスケ界の統合に尽力してくれた恩師の行動への謝意を示すためにも、自分にできるベストを尽くす必要があると考えたことが、大きな動機です。

そんな背景と想いから誕生した団体なので、Next Big Pivotは、すべてのスポーツを対象とし社会的弱者の支援を支柱とする Sport For Smile とは少し趣向が違い、社会貢献も視野には入れていますが、とくにバスケ界に特化して、多くの方々の多大な尽力により統合された日本バスケ界を守っていくこと、そして「日本バスケ界の進化と発展」をビジョンとして掲げています。

当初は「日本バスケ界に新しい風を~日本にまだない、あったらいいな~」というタグラインで展開していた活動を2020年にリ・ブランディングし、現在は「バスケを愛するひとりひとりがリーダーに」というタグラインで活動を実施しています。”日本バスケ界に進化を”という理念は変わらず、活動の柱も一貫して以下の3つです。ただ、カテゴリーを分けるというよりは、 様々なプロジェクトラインでこの3つを重視するというフォーマットになっています。

1)Women ~スポーツビジネス界の女性活躍推進~

設立当初から重視しているのが、スポーツビジネス界の女性活躍推進活動で、最初の企画は、2016年9月に実施した、NBA本部やNBAストア、選手会、コロンビア大等を訪問した女子学生スポーツビジネスNYC研修(FutureFrontwomen)です。2018年2月には、NBAオールスターやMLSクラブを訪問したLA研修も実施され、女子学生にスポーツビジネスの本場で活躍する女性リーダー達から直接学ぶ機会を提供しました。

また、2017年2月にはFutureFrontwomen 2016の報告会として、東京アメリカンクラブでチャリティディナーを開催し、JBA(日本バスケットボール協会)の三屋会長に基調講演を頂き、FIBAの委員会等でアドバイザーも務められている諸橋寛子氏にモデレーターを務めて頂いた研修参加者パネルの他、スポーツ庁や Lean In Japan, Women in Technology等の女性活躍支援活動を実施している団体にもご登壇頂きました。ACCJ(在日米国商工会議所)オリンピック・スポーツビジネス委員会の後援イベントとして、運営には、NBAチームのチアリーダーにもご協力頂き、当時のBリーグチェアマンや事務局長、NBAジャパンの代表等、日米のスポーツビジネスリーダー約60名が参加してくださいました。

FutureFrontwomen は最上の機会は提供できるものの少人数に対する短期間のプログラムであったため、その後、より多くの女性たちにスポーツビジネスについて学ぶ機会を提供できるよう「スポビズ女性DAYセミナーシリーズ」を展開しました。普段のスポーツビジネスセミナーでは、女性は参加者の1割にも満たないことが常ですが(登壇者はほぼゼロ)、スポーツビジネス界のリーダーとして活躍する講師陣を迎え、座席の半分を女性専用席、参加費も女性は半額として、5割以上の参加者が女性という日本一の女性比率を達成しました。

そして、今年度から始動したのが、スポーツビジネス界で働く女性に講演スキルと登壇機会を提供する "Her Pivot プロジェクト" です。

きっかけは、米国初の女性副大統領が誕生し「私は最初ですが最後ではありません」のフレーズが世界から注目された2020年に、NBA傘下のWNBAのクラブに採用されたある日本人女性からご連絡を頂いたことで、日本人女性2人目の採用を祝福する意味で企画したものでした。翌年NCAAが史上初めて実施した FInal Four Talks に登壇させて頂いた際の講演内容でも発表し、オバマ元大統領の義兄にもあたる全米バスケットボールコーチ協会EDともパネルをご一緒させて頂いた際にも、女性活躍推進の重要性について触れて頂きました。

Next Big Pivot の活動としては初めて、年度を通したプロジェクトで、RSA(英国王立技芸協会)から助成を受けて実施しており、FIBA事務総長、Bリーグチェアマン、またウーマノミクス提唱者のキャシー松井さんからも応援メッセージを頂いてローンチしたものです。

Her Pivot プロジェクトは、四半期ごとにQ1~Q4までフォーマットを変えてステップアップできるような設計にしています。各クオーターの詳細は Her Pivot プロジェクトのマガジンでご説明していますので、そちらをご参照ください。

Q3のnote マガジン展開では、ジェンダー平等に関するコラムやこれまでの女子学生スポーツビジネス海外研修参加者によるレポート、グローバルバスケ界でのキャリアを目指す女子学生とのメンタリング報告等も公開していますので、是非こちらからフォロー頂けたら嬉しいです。Q4ではグローバルバスケットボール界とも連携して「Her Pivot フォーラム」も実施予定です。

2)Social ~バスケットボールを活用した社会貢献活動の推進~

バスケットボールは、社会善のために活用しやすいスポーツのひとつだと思いますが、この切り口に関しては、とくにプロジェクトラインとして継続的に実施しているというよりは、例えば FutureFrontwomen 等のプログラムやプロジェクトの中で自然に社会貢献・社会的責任の要素が入ってくることが多いです。

ひとつ、ユースエンパワメントとして実施した「スポビズVIPランチ」は、SSR(スポーツの社会的責任)に関する記事を読んでレポートを提出し選出された若者がスポーツビジネス界のリーダーとランチできる、というもので、メインのコンテンツがソーシャル分野の活動だったかと思います。

他に、海外のバスケットボールを活用した社会貢献活動などを取材して記事化していく予定も以前からあり、いくつか取材は済ませているのですが、新しいメディアサイトの構築が大幅に遅れているため、まだ公開できていません。今しばらくお待ちください。

3)Global ~日本バスケ界のグローバル化~

  バスケットボールは、世界で最も競技人口が多いスポーツのひとつで、FIBA(国際バスケットボール連盟)には213か国が加盟するグローバルスポーツです。その特性を最大限に活用するため、日本バスケ界の国際化を後押しすることも、Next Big Pivot の活動で重視している点です。

実は、設立して最初に実施したのは、2016年6月にセルビア大使館で実施したセミナーでした。2017年2月にはフィリピン大使館でも実施しており、大使館というステイタスのある会場で、その国の分野にも触れながらバスケットボールの育成システムやプロリーグの現状について学ぶ機会を提供するものです。セルビア大使館イベントでは、若い頃バスケ選手だったという(当時の)大使もご登壇くださり、またバスケが宗教というフィリピンの大使館にも積極的に全面協力を頂き、代表チームのHCまで招聘されてしまいそうな勢いでした(笑)。日本にいると、バスケが世界で相当な人気スポーツであることをあまり認識できないので、そういった機会を提供することも目的のひとつです。

オーストラリアのプロリーグNBLのビジネス戦略について学ぶセミナーも実施しており、海外のビジネスニュースについてもできる限りツイッター等で発信に務めています。

そして、Bリーグの父とも言われるパトリック・バウマン氏が2018年10月に急逝された際には、"Our Pivots Campaign"を実施し、自分が日本バスケ界にどう貢献できるかについて、選手やコーチ、ビジネスリーダーからファンまで、様々な立場でバスケと関わる方々がSNS発信した声を集めてFIBAに提出しました。これは、バウマン氏がFIBAタスクフォースとして最初に来日された記者会見で、「バスケ界のひとりひとりに責任がある」とおっしゃったことに対応したもので、天国のバウマン氏に、日本バスケ界からの御礼と未来へのコミットが伝わっていればと思います。

2019年に八村塁選手がNBAドラフトで指名された際には、前日夜に「ドラフト前夜祭」として、NBA選手のドラフトと報酬のしくみについて元UCLAバスケットボール部マネージャーや弁護士の方々からご説明頂くセッションを実施しました。バスケットボールライターによるNYからの現地レポートや、NBAチームのチアリーダーからもメッセージを頂き、記念すべきイベントとなりました。

また、異色なプロジェクトとして、私がグローバルバスケ界のリーダーの方々に書いたお礼状をご紹介しながら、英文レターの書き方とともに、海外での交渉術について伝授するセミナーシリーズ「夢を叶え"た" Thank You Letter」も一度だけ実施しました。初回はマイケルジョーダンキャンプのディレクターに宛てたお礼状のお話で名古屋で開催しましたが、今後また時間ができた時に実施したいと思っています。

4)リ・ブランディングから誕生した「コミュニティ・リーダーズ・ミートアップ(CLM)」

Women - Social - Global とは少し違った切り口で、2020年のリ・ブランディング時に誕生したのが、CLM(Community Leaders' MeetUp)です。CLMは、新しいタグライン「バスケを愛するひとりひとりがリーダーに」を体現するもので、地域で活躍する同じ目的をもって活動するリーダーをつなぐプロジェクトです。

初年度は、バスケゴールが少ないからたくさんつくりたいという目標を持つ若者との出会いから、「日本にもっとバスケできる場所を増やしたい! More Hoops, More Smiles!」と題し、Molten B+様にも特別協力を頂き、4回セミナーを実施しました。想像以上に反響が大きくて、バスケゴールをもっと欲しい!と思っている人が日本にたくさんいることがわかりました。

現在は、"More Hoops, More Smiles"については、弊団体のプロジェクトからスピンオフし、若者がリードして進めていますが、Her Pivot プロジェクトはCLMの第2弾として実施しているという背景もあります。

以上、簡単ながら長文になってしまいましたが、Next Big Pivot のこれまでの活動の全容をご紹介してみました。また個別プロジェクトについては、機会があれば詳細ご説明できればと思います。


最後までお読みいただきありがとうございます。サポートいただけましたら、DV経験のある子どもたちのためのスポーツ活動に大切に使わせていただきます。