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晩酌としあわせ。

「おつかれ〜🍺」

「おつかれさま〜^^🍺」


夜11時。声高らかに、ふたり乾杯をかわす。
夫の晩ごはんに妻も少々つきあう。

今日の出来事や、明日の予定、ニュースの話などざっくばらんに話をする。冷えたビールが喉を潤して、これまた会話がどんどん弾む。


“酒飲み夫婦”、と思われそうだが、実際のところまったくそんなことはなくて。

ひとつの缶ビールをふたりで分け合うくらいのお手軽なもの。時間も遅いし、明日に持ち越したくはない。一種のクールダウンのような、夫婦の儀式のような時間。


しあわせの一時。




大袈裟に表現するのには、少々わけがある。

自慢でもなんでもない話。かつてお酒を飲んではいけない宗教の方、ふたりとお付き合いをしたことがあって。

日本は令和の時代。世界は日々進化を遂げている。宗教のあり方も変わってきてるに違いない、と都合よく思い込んでいた、青いわたし。


「今日は暑かったね。何をして過ごした?」

「友達と飲みに行ってきたよ。夏はやっぱりビールだね!」

テンション高めに返す。陽気な夏をちょっとアピールしたかったのかもしれない。

「君はいつもお酒を飲むの?」

「いつもじゃないよ。たまにね。あなたは?」

「僕はお酒を飲まないよ。」

飲み盛りの若い男性が、お酒を”飲めない”ではなく、”飲まない”と表現した。ここでようやく、先ほどの自分のテンションを恥じることになる。


のちに、彼は飲まない自分を誇りに思っている、のだと知った。

それからは、極力お酒の話をしないし、彼の前で飲まない。ましてやふたりで乾杯する未来なんて訪れるわけがない。

それぞれの私生活に干渉しない。
見たくものは見ない。
そうしてなんとかやり過ごしてきた。


だが、付き合いが長くなるとそうもいかなくなる。

隠れて飲んでいる私に、気づきはじめた彼。
それに気づいてないフリをする私。

ついに指摘された日。
何かがポキっと折れた。


私は決して、呑兵衛ではない。なんならビール小グラス一杯で思考が停止する、小皿程度の受け皿しか持ち合わせていない。

それでも、暑い日はキンキンに冷えたビールをぐびぐび飲みたいし、寒い日はホットワインにシナモンを入れて、ちょびちょびといただきたい。

夏にはビールで体を冷やして、冬にはホットワインで体を温めて。季節を愉しみたい、じゃない。

それをお預けされるなんて!と思ってしまった。


異文化を理解する、ことはできる。

異文化と共存する、これもできる。

異文化に溶け込む、これはあまりにも難しい。


自分の中に確立された習慣や概念を一旦傍に置いて、そこから相手の世界に溶け込んでいく。数日、数ヶ月ならいい。非日常を感じられてワクワクするかもしれない。

けれど、ずっと、続くとしたら…?

暑い暑いの夏の日に、じわじわと体の中から冷たい汗が出ていくのを感じた。



「ビールは沸いて出てくるものだから。」

昨夜、夫が言った。

せっせとビールを冷蔵庫に補充しながら。


我が家の水道をひねれば、水の代わりにビールが出てくる、とかそういう話ではない。

お酒をコンビニの懸賞で当ててきたり、ふるさと納税で定期的に箱ごと届くとか、そういう現実的な話。

なので、もったいぶらずにどんどん飲んだらいいのよ、という夫の理論。


「このままでいいの。」

ひとりでガブガブ飲みたい、わけじゃない。夫とこうして晩酌する時間だから、美味しいのだ。


寝る数時間前。

ほてった身体をちょうどよく冷やすビール。

そのままふわふわと眠りにつく。

あわみたいに、消えてしまいそうなしあわせを大切に抱きしめながら。



・・・

今週も、珈琲次郎さんの企画に参加させていただきました☕️
お題は、「パートナーと特別な暑さ対策」です。

珈琲次郎さん、いつもありがとうございます✨

今年はとにかく暑い。良い子も発狂する暑さ。
特別な対策をお持ちの方がおられましたら、情報求ム!です。

みなさまもぜひ、ご参加ください〜^^🎐



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