流れは塵と共にースピンオフ2
『葵』
今頃桔梗はどうしているのだろう。
風の便りでは、高貴な方の傍で華麗な舞いを見せていると聞いた。三日月と言われたわたしは、もうすっかり舞うことを忘れたが。
本当にこれで良かったのだろうか。
桔梗の中に横たわる情の色を知ったわたしは、自分の側から離れるようにと諭した。そうでもしなければ、二人とも深く泥の沼に沈んでしまうと思ったからだ。
わたしも村を出て八年。ようやく船頭として食っていくことができるようになった。
物珍しい秘め事を好む、多くはない客の相手と舞人として、半ばおなごのふりをして生きてきた身体では、ひとかどの暮らしができるようになるために、無為な時間も多く過ごしてきた。
卑しい者と蔑む好奇な陰口よりも、呪ったのは血だ。
桔梗が本当の妹であれば、どうだったのだろう…… いや、そんなことは言ってみても始まらない。わたしは気付いてしまった。木の葉で包み、石の重りを付けて川底に沈めても、幾たびも浮かび上がってくる自分の気持ちに。
わたしは生涯、誰をも娶ることはないのだろう。
*流れは塵と共に
流れる
断つ
桔梗(スピンオフ)
葵(スピンオフ)
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